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Black box  作者: 幕板嶋屋
2/2

二箱目 シラギマシロ

 

 一週間と一日前。変わらない日常が変わろうとした日に、僕等は出会った。


 綺麗な顔立ちだった。スタイルも気品も。そんな学年のアイドルの卵が隣の席に座って来たのだから、男としては勘違いせざるを得ない。はずだが、僕には興味が無かった。といっても断じて男色ではない。


「白城真白です」


「えっ…」


 突然の自己紹介に驚いた。自己紹介と同時に突きつけられたのは一通の手紙。まさか。


「放課後待ってます…」


 ありがとう。僕に春が来ました。それから放課後のことを考えると、僕は浮き足立っていて、入校式初日だというのに、人前でニヤニヤと気色悪い笑みを浮かべていたのかもしれない。だが、その笑みが消えたのは、手紙を開いた時だった。


 本日、あなたの寿命が尽きます。

 ただの紙切れに一文、そうとだけ書かれていた。


「ええっ!?」


 あまりにも唐突な内容に思わず声が漏れてしまう。


 しかし、隣にいる白城は平然とした顔でいる。


「これは新しい脅迫文か?」


「いえ、忠告よ。一般人最後の日を楽しんでね」


「どういうことだ…?」


 白城との会話を続けたいが、やはり美少女。周りの男子の視線がひどく熱い。


「放課後って…どこに?」


「決まっているわ。屋上よ」


「殺されるのか?」


「そうだとしても、犯人は私ではないわ」


「行かなかったら…」


「犯人が私になるわ」


 わからない。意味がわからない。この女は何が言いたいんだ。


「お前…」


「ちょっと君。真白にベタつき過ぎなんだけど」


 僕が真相を問う前に、横槍が入る。


「神奈、べつにいいの。彼は…」


「いいわけない。真白はすぐにそうやって誰でも話すから誤解されんの!」


 大きな声だった。元々あった注目がさらに強まる。だが、彼女のもの凄い剣幕が、周囲の視線を逸らしていった。


「君…誰?」


 突然現れた彼女へ僕は問う。


「はぁ?私は幕上神奈さん。いえ、様よ」


 お嬢様、いえ、女王様かお前は。


「幕上さんには悪いけど、僕達大事な話してるんだ。邪魔しないで…」


「大事な?あぁ…」


 女王様は僕の耳元で囁いた。


「君が死ぬ話か」


 僕の表情を読み取ってだろうか、白城は幕上の肩を掴んで自分に引き寄せる。


「神奈、それ以上は…」


 簡単に出てきてしまった「死」という言葉。彼女達はその意味を理解しているのだろうか。


「……」


 彼女達は何かが違う。空気というか、存在というか、何かが違う。


「助けてくれないのか?」


 こんな意味不明な状況を、僕は本気で受け止めていた。受け止めようと必死だった。


「やーっと理解したわけね。いいわ、君、見込みあるね」


 そう言って幕上は僕の方を見てニヤリと笑みを浮かべた。


「ははっ…」


 笑えない冗談だ。それでも、必死に笑ってみせる。


「御伽君、そう落胆しないで。私が助けてあげる」


「えっ…」


 白城真白は僕を見た。平然としていたさっきとは違う、強い瞳で。


「真白は優しいね~。わたしはパース」


 僕に微笑んでそう言った幕上神奈は、ひらひらと手を振り去って行った。



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