返事。
さて、どうしようか。
教室の前までは来たものの、勇気が出なくて入れずにずっと扉の前に立っている。もう30分くらい経っちゃってんじゃねえかよ。もう帰っちゃったんじゃね、などおもいながらもまだ扉は開けずにいる。
そう考えると秋空さんってすごいことしたんだよな。教室入るだけじゃなくて告白までして行ったんだし。あれは真似しようと思ってもできないな…多分しないけど。
それじゃあそろそろ決心して入らないと不審者に思われてもおかしくないよな。来てからずっと扉の前で立ってるからか通る人どころか立ち止まって見てく人まで出てきたし。
「あれかな?告白の返事かな?どっちだと思う?」
「そりゃオッケーするんじゃない。朱音ちゃん可愛いし。」
「だよねー。振るとかどう考えてもあり得ないでしょ。」
とかひそひそ聞こえるし。聞こえてる時点でもうひそひそ話じゃないか。もうちょいひそひそしろよ。まぁでも気になるのは分かるし、いいけどさ。
それじゃあそろそろ、と取っ手に手をかけたと同時に扉が開き、目の前には悲しそうな顔をした秋空さんが立っていた。
「…やっぱり来てくれなかった。仕方ない、か…。」
「あの、あき…ぞら、さん?」
そのあと顔を上げて目が合ったと思うと徐々に頬を赤くして口をパクパク開けては閉めてを繰り返している。正直、可愛い。
「えっ、き、来てくれたんですか?あのっ、も、もう帰ってしまったとばかり思ってしまって。すいません!」
「なんで秋空さんが謝ってるの?謝るのは遅れたこっちなのに。」
「で、でも呼んでおいて帰ろうとしたので…。」
「そんなの気にしなくて良いよ。俺も同じようにしたと思うし。」
「そうですか…。でも…。」
「優しいね。秋空さんは。」
「そう、ですか?」
「うん、秋空さんは優しいよ、誰よりもってうわっ!」
「え、ちょ、ち、近いです…。」
「ご、ごめん。」
…スゴイ近くに秋空さんの顔がある。なんかいい匂いするし…。でも、この体制って、
「壁ドン、ですね。」
「だよね。ゴメンすぐにどくから。」
「あの、もう少し、このままでいてくれませんか?」
女子の上目遣いって本当にダメだな。抱きしめそうになる。袖をちょっと摘むとか、可愛い過ぎるだろ…。
「いや、それは…。」
「もしくは、だ、抱き締め、て、欲しい、です…。」
「…、あ、いや、それは…。」
ほんとにするとこだった。あぶねーよ。危険だよ。反則だよ。
「それは、恋人になった人とするもので、えーっと。」
「じゃあ、離れてもいいので返事聞かせてくださいね」
「う、うん。」
そう言って離れようとするとすごい残念そうな、それでいて期待に満ち溢れたような顔をして手を腕から離した。
「じゃあ…返事、だけど。」
「は、はい…。」
ギャラリーよ、突然静かになるんじゃねぇよ。緊張するだろ。まぁ返事を伸ばした時からわかってた事だけどいざこうなると緊張感ってスゴイな。これを乗り越えなきゃ恋人ってできないのか。それなら秋空さんってどんな気持ちで言ったんだろう。あ、純粋に俺が好きって気持ちか。…自分で言うと聞かれてなくても恥ずかしいな。
「えっと、告白は素直にすごい嬉しかった。ありがとう。でも、君とは付き合えない。ごめん。」
「そう、ですか。あの、理由を聞いても良いですか?」
「理由は単純にまだ君の事をよく知らないっていうのが一番大きいかな。やっぱり。」
「じゃあ、これから知ってもらいます。なのでまた告白、させて貰えますか?」
「あ、あぁ。それなら良いよ。」
「絶対私の事好きになってみせますからね。夏海さんとは比べられなくなるくらいに。そして優さんから告白をして貰えるくらいに!」
「そ、そっか。分かった。がんばって?かな。」
「はい!覚悟していてください!」
そう告げると秋空さんは笑顔で友達のところへ駆け寄っていった。あ、あの二人、さっき聞こえる声でひそひそ話してた、てかぶつかったのもあの人じゃん。友達だったんだ。秋空さん、すごい好かれてるんだなぁ。見てると分かる。
そんな事を考えていると「えー」とか「ウソっ、マジで!?」と言う声がして二人が鬼の様な顔をしてこっちを睨んできた。
「あいつまじで後悔するね。」
と今度は聞こえる様に二人が言うと、それを秋空さんがなだめながら、廊下で棒立ちのまま動けていなかった俺の横をすり抜け下駄箱に向かって歩き出す。
三人が隣を通る時、
「朱音を泣かしたら許さないから。」
と言う声が二つ
「また明日ね。」
という声が一つ、交互に聞こえたのは多分俺だけだろう。
何度も何度も予定を変更して掲載を延期してしまって、ほんとにすいませんでした。
もし、少なくとも読んでくださる方がいるなら次回からも読んでもらえると嬉しいです。
そして、感想、意見、誤字脱字の報告、ブックマーク、応援など助かりますのでよろしくお願いします。