友人。
午後の授業は何もできなかった。というより何もせず考えていたかった。
普段は聞いているだけでほとんどの内容は頭に入ってくる。もちろん、テストの点数も取れる。だが今日は違う。授業など気にもならず、前で話している教師の話など全く聞こえてこない。そうして授業が終盤になっても、頭の中はスッキリしないままでいた。
昼休みの直後だからか、お日様に照らされているからだろうか、クラスの3分の1は夢の中にいる。もちろん、後ろの夏海も例外ではなく幸せそうな顔して眠っている。むしろ一番幸せそう。時々
「…ハンバーグ……スープ……サラダ……フフフ。」
とか聞こえてくるし。さっき弁当食べたとこだろ。どんだけ食べるつもりだよ。それにそのメニュー昨日の夕飯じゃねぇか。お前が俺のも食べたせいで俺一つしか食べれてねぇんだぞ。おい。
と、昨日の怒りがまたこみ上げてきて夏海の額にデコピンをきめた後、うぅ~と唸る夏海に背中を向け再びさっきの出来事を振り替えってゆく。
よし、とりあえずは整理だな。まず、校内一と言われる程の美少女、秋空朱音に告白された。で放課後、彼女のクラスに行ってその返事をする。
……あれ?これ相当スゲー事なんじゃね。美少女から告白とかドラマか本の中だけの妄想劇だと思ってた。ホントにあるんだ。
てかなんで俺なんだろ。これまで秋空さんとの接点は無いはずだし……、もしかして罰ゲーム?
でも、秋空さんのあの表情をみてたら冗談を言ってるようには見えなかったんだよなぁ。それに秋空さんがそんな子には見えなかったし。言ってた去年の夏って何かあったかなぁ?あぁ〜、思い出せねぇ。
夏祭りは去年も夏海と行ったし、他はばあちゃん家に帰ったくらいだからなぁ。バイトはしてたけどあんなかわいい子が来たら覚えてるはずだし。んー分からん。
「おい優。何うなりながら考えてたんだよ。」
「別にうなってなんか、ってあぁ。お前か。」
「そ、大親友の椿木和人くんです。」
「大親友なら今はそっとしててくれよ、ほんと。」
「なになに、何か考え事か?まぁ予想どころか答えは分かってるけどね。さっきの告白の事だろ?」
「分かってんなら聞いてくるんじゃねぇよ。まったく。」
ほんと聞くんじゃねぇ。今ので視線が一気に集まった事気付かなかったのかよ。まぁ、気付いてるだろうな、こいつは。分かっててやってんだから余計に腹立つ。
「で、お前授業は?」
「は?終わったぞ、さっき。」
「え……あ、ホントだ。」
前を見ると先程まで計算がびっしり書かれていた所にはもう何も書かれていなかった。
「優がアレコレ考えてる間に終わったよ、王子様。」
「王子様ってなんだよ。お前までからかってくるんじゃねぇよ。」
こいつ女子の間で自分が和人様って呼ばれてるの知らないんだろうな。いや、もしかしてこいつなら知ってて気にしてないだけかもな。
「まぁまぁ、落ち着けよ。ところで知ってるか?秋空さん、ファンクラブまであるらしいぜ。」
「は?突然なんだよ。ファンクラブ?」
「そ。まぁ当然ちゃ当然だよな。だってあんな可愛いんだし。」
また現実に存在しないと思ってた物かよ。なんなの、秋空さん本の中から出てきたの?てかそれって当然なのか?
「で、それがどうしたんだよ。俺には関係ないだろ。入るわけでもないのに。」
「関係ない、か。」
「なんだよ。何かあんならはっきり言えよ。」
「わかった。わかったから怒るなよ。ファンクラブがある。つまり秋空さんが好きな人が近くにも多くいる。ここまで言えば優なら分かるだろ?」
「あぁ。つまりその連中が何かしてくるかもって事か。」
「せいかい。さすが賢い人は物分りが早くて助かるよ。」
お前の方が頭良いだろうが。嫌味にしか聞こえねぇよ。
「まぁ、それなら大丈夫だ。今日行って断ってくるつもりだし。」
「何で?せっかくなのに。もったいないぞ。」
「もったいなくなんて無い!」
「うわっ、起きてすぐに大声出すんじゃねぇよ。ったく、びっくりするだろうが。」
ホントびっくりした。和人が笑ってるってことはこいつ起きてたの分かって言わなかったな。どうやって仕返しをしようかな?まぁすぐいつもみたいに忘れるんだろうけど、俺が。
「何私が聞いてないからって秋空さんの話してんのよ。」
「はぁ?別にいいだろ。夏海には関係ねぇんだし。」
「関係なくない!」
「例えばどこが?」
「えぇ〜っと、えぇ〜っと…。」
「すぐ出てこねぇのかよ。」
「すぐ出てくるよ!ちょっと待ってって。」
すぐ出てくるのに待ってってどうゆうことだよ。矛盾って言葉知ってんのかな。知らんだろうな、こいつは。
「まぁまぁ佐藤さん。優も断るって言ってるんだし。」
「ま、まぁそうだけど…。じゃあちゃんと断ってくるんだよ。分かった?」
「なんでお前に言われなきゃならねーんだよ。」
「だっ、だって…。」
「まぁまぁ。いいじゃんそれくらいは。いつものことだろ?」
「はぁ…もういいや。それじゃ行ってくるわ、秋空さんのとこ。」
「あぁ、行ってらっしゃい。また明日な。」
「あぁ、また明日。」
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