僕たちの夏休みはこれからだ!~大木先生の次回作にご期待ください~
「これから約40日の間、学校は休みとなる。君たちにとっても大事な期間になる。遊びにばかり呆けず来年の受験に備えた行動をとるように。」
面倒くさい担任、笹隠の夏休み前のスピーチは俺たちが遊び呆けることを解っているのか、勉強もしろと釘をさす内容であった。
そんなことをいわれても俺は聞く耳を持たなかった。それよりもこのホームルームが終われば晴れて、夏休みが始まると思うと、頭に浮かぶ夏の妄想が膨らむばかりだった。
「俊介、学校終わったら何人か誘ってカラオケにいかね?」
横の席に座る、小林武が小声で夏休み最初のイベントに俺を誘ってきた。断る理由も無く俺は武の誘いを一つ返事で受けた。
担任の笹隠のスピーチが終わると同時に学校終了のチャイムがなる。一斉に生徒が席から立ち上がり教室を後にする。クラスの生徒も早く夏を満喫したいのか、いつもより帰り足が早いように思えた。
カラオケのメンバー集めは武に任せ、俺は所持金を確かめるために財布を取り出そうとポケットをあさった。
しかし、ポケットをあされど財布は出てこない。朝、家を出るまでに記憶を遡る。うつらに蘇る光景、玄関の下駄箱に財布を置いて靴を履いて、そのまま、行ってきます。
「あ、財布、家に忘れてきたわ。」
俺は思わず財布を忘れたことを口に出してしまった。
「おい、それはないだろお。お前家近いから早く財布とってこいよ。」
武が俺の財布忘れた発言を聞くなり不機嫌そうに反応してきた。学校の近くのカラオケ屋に集まるらしく、幸いにも俺の家は学校から近くの場所にあった。
「とりあえず、財布取ってきたらサンガリスに集合な。」
近所のカラオケ屋に集合と念を押す武に、俺は申し訳ないと思いつつ、自転車に乗り急いで家に財布を取りに行くことにした。
「これはまずいなぁ。ちょっと狭いけど、近道を通るか。」
武たちを待たすわけにもいけないので、俺は近道の人通りの少ない通りを使い家まで向かうことにした。
この道は人が通らず、草木が茂り太陽の光も入らないため暗く薄気味が悪いから、いつもは避けている道だ。
今はそんなことを考えず進むしかない、進むしかない。そう思いながら自転車を走らせていたが、急に悪寒が背中を走った。
その矢先俺の視界に入ったのは、血まみれで倒れている40半ばの年齢だろう男性が地面に倒れていた。自転車を急いで走らせていた俺でも、衝撃と恐怖が同時に頭を駆け巡り、反射的に自転車のブレーキを最大にかけた。
その反動を受け止める力も入らず、自転車から放り投げられた。体の節々に痛みを感じながらも、倒れた体を起こし、今一度目の前に現れた光景が本当だったのか確かめるため顔を上げた。
視界に入ってきたのは、血まみれの男性ではなく、おそらく倒れている男性の血であろう赤い液体が付着したナイフを、片手に持ったワンピースの少女だった。
少女の片手に持たれたナイフはうずうずしくも、男性の血液であろう赤い液体を滴り落とす。
そして狂気の少女が身に纏うかわいらしいワンピースは赤い液体を浴び、真紅に染め上がっていた。
「あら・・・人がいたの。」
俺の存在に気づいた少女は、驚きもせず、淡々と俺に近寄ってきた。
「う・・・うわぁ」
少女の服に染みた赤い液体は紛れも無く、血液だ。俺は、恐怖のあまり腰が砕け、地面に尻から崩れ落ち、その場から逃げることも出来ず、ただ少女が俺に近寄るのを待つことしか出来なかった。
「あなた、過去に戻りたい?」
このまま、あの男性と同じように容赦なくあのナイフで切りつけられるとしか考えれなかった俺は、その問いに拍子抜けた返事をしてしまった。
「えっ?」




