file5 朝から登場チワワ女子
プロットなしで
ここまで話を続けられたことに驚いてる……
最近は調子がいいなぁ!
「ん、ふわぁぁああぁぁ……ねむ」
朝の半分壊れかけた時計で目を覚ます。
今日も学校にいかなくてはならないが、朝は弱い派なのでベッドから出たくない気持ちが強い。
しかし部屋の外からは既に朝食の匂いが漂ってきて、俺の腹の虫をグゥと鳴らした。
どんなに眠くても食欲には勝てない。
俺は素直にベッドから這い出て、制服に着替えてから下に飯を食いに向かった。
△▼△▼△▼△
「ああ眠い、ひたすら眠い、ただ眠い」
電車の中でおかしな川柳を作りあげながら学校に向かう。学校の最寄り駅までは家から20分、そこからさらに10分ほど歩くと俺が通う学校が見えてくる。
学校から5~6個手前の信号機で青になるのを待つ。
5月とはいえまだ暖かくはないな、とポケットに手を入れていると、
「あ、勇吏くーん!」
後ろの方から聞き慣れた声がした。
遅れて周りの人達から感嘆の声が漏れる。
その声の割合が主に男性であることから………
「あ、おはようございます愛川先輩。昨日はすみませんでした、うちの馬鹿が怖がらせてしまったようで……」
「ううん、全然気にしてないよぉ。今日も頑張ろうね!」
声の主はやはり愛川先輩だった。
満面の笑みを浮かべ、ニカッとピースをする先輩。その笑顔にまた周りの人達から「おおぉ!」「朝から目に優しいなぁ……」「愛川たんハァハァ!」といった感嘆の声が上がった。どう考えても最後のは犯罪の匂いがするが。
愛川先輩と目線が合う。くりくりしたその瞳に見つめられて、昨日のあの一言を思い出してしまった。
先輩と歩きながら考える。
『…………君、ターゲットだから。そのつもりで、ね?』
春風に消え入るようにどこからか放たれたその言葉は、本当に先輩が言ったものだろうか。
「……どうしたの?考え事?私心配だな……」
「あ、いや、大丈夫です。心配しなくて大丈夫ですよ」
「………本当に?」
「はい。本当に……」
『愛川サンカラ離レロ………!!』
「ひい!だ、だだだ誰!?」
確かに今、背後から気配を感じた。殺気とも呼べるくらいのどす黒いオーラのような物が後ろの曲がり角の向こうから漂ってくる。
「ああ、信堂くんとかかなぁ?あの人、なぜか私の背後に張り付いてきて、にやにや見てくるんだよぉ。ちょっと怖いくらいに」
「それはストーカーと言うんじゃ……?」
その信堂先輩とやらも、愛川先輩の『チート』級の可愛さに侵された者の一人だろう。思えばさっきからチラチラとこちらを横目で見る生徒が増えてきている気がする。
そうこうしているうちに、学校に着いてしまった。結局あの言葉については問いかけることができなかった。
いや、むしろ先輩の方からその質問をされないように話し続けながら牽制していた……?
それはないだろうと考えつつ、下駄箱のところまで2人で行く。
1年と3年の下駄箱は以外に近く、その中でも俺と愛川先輩は2つ隣という近さだった。単なる偶然にしては良くできているが、これで少しでも会話するチャンスが増えるのはありがたい。
2人して上履きに履き替えようとすると、「うわぁ!」と先輩がすっとんきょうな声をあげた。
見ると、先輩の下駄箱の中から何枚か手紙のような物がバラバラと落ちている。これは伝説に聞く……!
「今時ラブレターなんてあるんですね……手伝いますよ」
「うわぁ、ありがとう~!嬉しいなぁ……」
せっせと集めて先輩に渡す。まだ下駄箱の中に残っているのと合わせると軽く10通くらいはあるんじゃないだろうか。
「本当に助かったよぉ。何かお礼がしたいんだけどなぁ……?」
「いや、いいですよぉ?」
今日の先輩は、なんか積極的な気がする。昨日は急いでたみたいだからよく知れなかったけど、先輩は結構ガンガンいくタイプなのか……?
「そういうわけにもいかないんだなぁ。私にも良心があるんだし。そうだなぁ…………そうだ!」
「今度、デートに行かない?」
「は、はぁい!?」
△▼△▼△▼△
頭の中の整理がつかず教室へと入ると、紅と目線が合った。
「おはよう勇吏。どうした、今朝は少し来るのが遅いじゃないか。誰かにデートでも誘われたとか?」
「だからお前は人の心を読むな!」
「最近は人心掌握術に凝っていてな」
「使い方が違うんだが……」
「で?だれとなんだ?お姉さんに言ってご覧なさい?」
「お前は婦人警官か!はぁ、先輩だよ、愛川先輩」
「何!?」
ガタッと椅子から勢いよく立ち上がる紅。勢いが良すぎて椅子が音をたてて後ろに倒れてしまっている。
「でかしたぞ!そのまま先輩のプライベートに関することを聞き出してこい!いや、私も影からついて……」
「なんか嫌だからお前は来んな」
「…………………」
いや、そんなに悲しい顔しなくても………
こんなもので皆さんが楽しめたのなら幸いです。