愛してる、ずっとお前だけを。
「え・・・?」
「だから、もう別れよう。」
俺は突き放した態度で言った。
「やだ・・・拓海と別れるなんてやだよっ・・・」
歩は泣きながら言った。
「俺はもう歩とは付き合えない。ごめんな。」
「やだよぉ・・・うっ・・・」
泣きじゃくりながら手で目をこすっている。
「もう・・・無理なんだよ。」
「なんで無理なの・・・?そんなの誰も決めてないよっ・・・」
「それに俺、元々歩のこと好きじゃなかったのかもしれない。」
「・・・・・。」
「ごめんな、情けなくて。」
「ひどいよっ・・・あたし、拓海のこと大好きだったのに・・・」
「・・・・ごめん。」
俺は立ち上がり、歩き出した。
「拓海、あたしをおいてかないでよぉ・・・」
歩は立ち上がり、泣きじゃくった声で言った。
俺は一瞬立ち止まった。
でも、また歩き出した。
俺は最低だ。
あんな冷たい態度をとって別れなくてもよかったはずなのに。
でも、これしか方法がなかった。
歩から離れるにはこれしかなかったんだ・・・。
.............................
俺は半年前、とある暴力団に入った。
といっても半強制で。
それは親が入っていたからだ。
正直、俺は嫌だった。
でも抵抗することはできなかった。
最近、その暴力団は勢力が急激に広まっている。
テレビのニュースでもたまに見かける時がある。
俺はその一員だと思うと怖くなる。
なにかしでかしたらどうなるのか、想像すらできない。
その半年前に出会ったのが 加藤歩だった。
同級生なのは知っていたが、夏祭りで偶然会って
話したのがきっかけだった。
歩と出会ってから、俺は救われたと思う。
暴力団に入って何もかも嫌になっていた。
そんな中で、歩は俺に笑ってくれた。
いつも笑顔でいてくれた。
でも、幸せは長く続かない。
このままいけば付き合っている人物など、簡単にわかってしまう。
そしたら、歩は狙われるかもしれない・・・。
歩が危険な目に合うのは絶対にダメだ。
だからもう、別れるしかなかった。
俺はこれから誰も好きになれないと思う。
高校生が何言ってんだって誰もが笑うと思う。
歩と付き合う前も何人か付き合ってる人がいた。
でも、遊びで終わったり、本気で付き合うことはなかった。
そのたびに彼女を泣かせてきた。
罪悪感なんてなかった。
でも今、初めて分かった気がする。
俺には歩しかいなかった。
本気で好きになれたんだ。
「大好きだよ、歩・・・。」
目から涙がこぼれていた。
「愛してた・・・本気で愛してたのに・・・。」
涙は止まることなく流れていった。
「・・・情けねぇよっ・・・。」
初めてこんなに泣いたかもしれない。
初めてこんなに自分が情けないと思った。
初めて自分は弱いと思った。
初めて自分の境遇を恨んだ。
初めてこんなに人を好きになれた。
初めて 愛してる って言った。
「辛いな・・・歩ともう会えないのか・・・。」
会えないのではない、会ってはいけないのだ。
こんな自分とは会ってはいけない。
そう、もう決めた。
俺は空を眺めた。
「こんなに空って広かったっけ・・・。」
改めて見る空は一段と広く感じた。
俺は流れてくる涙を必死に手でこすった。
「歩、愛してるよ・・・。」
俺は空に向かって言った。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました^^
この話しは実話を少しはさんでいます。
私自身のことを書くことで気持ちが吹っ切れた気がします。
切なく、悲しい気持ちを表現できていたら幸いですっ^^