5章 秘密会議
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キーンコーンカーンコーン
4時限目の終了の合図が鳴った。
「それでは、今日の授業はここまでとする。」
教師の合図とともに俺は弁当箱を持ち、廊下に出た。
いつもならば、教室で食べるが、今日だけは違う。
「昨日の話の末がこれになったのか。」
俺の前に小原が来る。もちろん、こいつも手には弁当箱を持っている。
「まぁな。でもこんなんでいいのかな。」
「あいつのことだから、問題ないだろ。」
俺と小原は同じ部屋に向かった。
「おっはよ~。って今はもう昼だっけ。」
「おぅ、柿本早いな。」
「もっちろん! 昨日のメールは少し驚いたし怪しかったけど。」
「お前、何て送ったんだよ。」
小原が俺に小声で話しかけてくる。
「いや、別に。“今日昼、部室で会いたい”って。」
「弁当の話は?」
「あぁ、その後の返信でそのことに触れるの忘れてたからもちろん“小原と3人で昼飯食う”って書いて送った。」
「・・・・・・」
「そこで黙るなよ。」
小原がため息をつく。
「早くしないと、移動時間考えて時間なくなるよ~。」
「・・・・・・ん。そうだった! 旭行くぞ。」
「それで、何で集まったの?」
「あっ、それ俺も聞いてねぇわ。」
「昨日いろいろあってな、作戦会議を開くことにしたんだ。」
「いろいろ?」
「おい!」
小原がまた小声で怒る。
「そのことは置いといて、作戦会議だ、会議。」
「それで、何の議題なの?」
「あぁ、勧誘についてだよ。放課後にやってたら時間がなくなるしな。」
「・・・・・・・・・・・・」
小原が俺にアイコンタクトをする。
“他の部活について言ってみろよ”たぶんそんなもんだろう。
「柿本は何か他にやりたい部活ないのか?」
「私? ないよ。」
あっさり拒否された。
「それに私はここの部活以外で活動することなんて考えてないし・・・・・・。」
「そ、そうか。」
俺は小原に目をやった。小原も同じ感想を抱いたのだろう。
「柿本、仮にだぞ仮。もし部活が廃部になったらどうすんだ?」
小原が柿本に言った。
「アホ原、今それを考えることなの?」
「うっ、そうなんだけど・・・・・・」
「もしかして、昨日2人でそんなこと話してたの?」
今日に限って鋭い。
「私はここが好きだから廃部になんかさせないし、廃部になってもまた3人で遊べばいいじゃん。」
「でも男2の女1だぜ。それでもいいのか?」
小原が口に出した。これは昨日も言ってたな。
「うん♪ 私は構わないよ。」
「だって今もそうじゃん。今更そんなこと気にしないよ。」
俺は柿本を見つめていた。
今は3人仲良くしているが、去年まではお互い相手のことを知らなかった。中学校が全員違うので相手の過去は知らない。それに知る気もない。
前部長の顔が頭に思い浮かんだ。よくもまぁお互い知らない奴3人を勧誘したものだ。
「部長! あまりじっと見つめないで欲しいな。」
「えっ、わ、悪い。」
「別に悪くないよ。でも、少し恥ずかしいかな。」
「お前どうしたんだよ。」
小原が俺に話しかけてくる。
「いや、部長のこと考えててな。」
「部長はお前だろ。」
「保見先輩のことだよ。」
「そっちかよ。」
「あぁ、新入生はたくさんいるのに、あの人が俺ら以外を勧誘してた光景も見てないし、話にも聞いてないし。」
「んなこと言ったらそうだけど、今それ関係なくね?」
「そうだな。」
確かに今このことを考えても部員が増える訳でもない。
俺は部を存続させる方法を考えた。しかし、解決方法が誰にでも思いつく、 いたってシンプルなものだからそれ以外というのはなかなか思いつかない。
「柿本はなんか思いつくことないか?」
俺は柿本に目をやった。
「そんなの簡単だよ! 今日はそれまで以上に、明日は今日以上に頑張るだけだよ。」
「いや、それ解決になってねぇし。っつか流石に根性論を言われてもなぁ。」
小原が律儀にツッコむ。
「それじゃぁ小原は何か方法あるの?」
「いや特に思いつかないけど、それだけはおかしいってのはわかる。」
「何にも思いついてないのに、他人のを反対するなんて、サイテー。」
「おい! これだけで最低扱いかよ!」
一応この会議も小原のが原案なんだから、小原もそれなりには考えているのだが、柿本には伝わらないらしい。俺が言うのも恩着せがましくなるから言わないでおく。
「でも、結局解決方法がシンプルなだけあって、一番堅実なのは根性論になるかもな。」
「でしょ、部長!」
柿本が上機嫌で返す。
「・・・・・・・・・・・・」
そして小原を不機嫌そうに見る。小原よ、お前の頑張りは俺は知っているぞ。お前があんなにこの部を考えてたことに俺も昨日驚いたぐらいだからな。
「な、なんだよ、そんな風に俺を見て。」
「別に。」
柿本も昼食を食べ終わる。何故か俺は泣きそうになった。
そろそろ書き溜めなくなりそう・・・