4章 平穏~高橋の復讐~
*** 4
今日は水曜日。つまり今日を入れて後3日しか猶予がない。
授業中に俺は考えていた。
これまでの勧誘の失敗理由。
今やるべきこと。
そしてこれからのこと・・・・・・・・・・・・。
「おーい、ア~サ~ヒ~ク~ン。そんなに俺の数学が嫌いですか~。」
伸びた声なのに、かわいらしくない声が耳に入ってきた。
「今日もカウントが欲しいのか~い。」
「5・4・・・・・・」
この調子なら後3秒は寝れるはずだ。
「1・・・0。ハイ終了。」
・・・・・・え?
「ちょ、ちょっと、2と3はどうしたんですか!」
「俺は前回カウント3にするぞって言ったはずだよな?」
高橋の満面な笑み。俺を嵌めたことがそんなに嬉しいか。
「それなら、3・2・1でしょ。何なんですか5・4・1って。」
「誰も3からなんて決めてないだろ。そもそもお前が授業中に船漕いでいるのが悪いだろ、そうだろ?」
昨日もだが今日もあまり眠れなかったからか、また寝ていたらしい。
これは言い訳じゃないぞ。
「ってことでお前は部活前に職員室行決定な。それでは授業に戻るぞ!」
そう言って高橋はステップしながら黒板の方へ戻る。どこまで嬉しいんだよ。
「失礼します。」
俺は職員室に入った。早く終わって欲しいので、ごもっとも作戦で進める。
「おお来たな。」
「・・・・・・」
ごもっとも作戦はコツがある。
それはタイミングだ。いかに相手の怒りが収まった直後に間髪入れずすみませんが言えるかが勝負だ。
「____。____。___!」
高橋の話が俺の頭上を飛び交う。頭を低くし、ごもっとも作戦を進める。
「_____。」
高橋の話が止まった。勝負は今だ!
「すみませんでした!」
高橋もこれには驚いたのか、目を丸くしている。
「ふぅ。」
俺は勝負に勝ったからか、自然に安堵の音を出していた。
しかし、そこが間違いだったようだ。
「・・・・・・ん?“ふぅ”って何だ? お前反省してなかったのか。」
とばっちりだー。第二ラウンドのゴングが脳内再生された。
「まぁまぁ。旭君も部活があるし、高橋先生も言いたいことは言ったのでしょ。そろそろ解放してあげませんか。」
俺にメシアがやってきた。
「久保先生。」
高橋が職員室で困ったように話す。
「旭君も。助けたのだから、明後日の化学の授業は居眠り厳禁であることをお忘れなく。」
「はい、ありがとうございました。そして失礼します。」
俺は足早に職員室を去った。