第1章
―――――――――命が消える瞬間が永遠に続いた―――――――――
悲しい事件だったと記憶しているが、あまりにノイズ掛かった音、そして混濁する情報(力)により記憶は曖昧で不確かな記録だった。
覚えている光景は真っ赤な地平線まで滴る赤と、酷く歪な空。そして地面の赤とは対局色な惚れ惚れする青い月。
幻想的なコントラスト題材の地と天は、それだけでこの光景の異常さを表していた。
錆び付いた木々はまるで生物みたいで、死にかけていたと思う。
――――――遠くの方で何かの声、遠くの方で何かの音。声は荒く、音は断末魔。
――――――霞かかった記憶に今夜、新たな発見。それは地面の色とは同色のようで、全く違った色だ。
錆び付いた記憶の木々は赤い灼熱の炎に身を包みながら死んでいってる。そんな光景・・・・・・普通は鮮明に形どられて記憶しているべきなのだが、俺にはどうやら地面の方が強烈だった。
「う、う。もう朝か」
昨日の鍛錬がよほど体に響いたのか、筋肉は悲鳴を上げているけど、無視だ。これは体の筋肉が破れて、修正する所謂、筋肉痛だ。自分の成長をじわじわ感じるこの感覚は非常に嬉しい。
「眩しい」
道場の雨戸から差し込む真冬の日差しは起床促進に効果的だ。
とりあえず、両手を使って立ち上がる。
体はキシリと錆び付いた剣みたいな音を立てて上体が起き上がる。
少し、体は寒さを覚えるが、これは夜の鍛錬を終了する際、服を着替えずに寝てしまって、汗が乾いたせいだろう。
体が丈夫である事が“戦場心”の長所であるので、俺は一度も風邪を起こしたことは無い。しかし、最近は友人の幹也とその姉が怒るので、最近は無かったが、昨日の夜はやり過ぎた。
「反省、反省。とりあえず、日課のジョギングでも始めようか」
道場の横開き扉を開けて、道場から母家まで通じる廊下を歩く。
2月1日午前6時、冬の気温は例年よりも二度程低く、皮膚を刺す外気は冬をイヤでも感じさせる風物の一つだ。
俺が住む町、久遠院町は他の地方よりも土地か風土か、どちらかが要因となって寒いらしい。最も、気温の高低に鈍い俺にはそんな事関係ないが。
「はぁ、はぁ」
この町は結構広大な土地面積を持ち、それもこの町の一種の特徴だ。
北側は都市化を進めて西洋風の建物が数多く建設されており、南側は民衆の所帯が密集しており、此方は平民が、北側はお金に余裕のある富豪が暮らしている。
俺はモチロン南側の住人だが、土地だけはあり、親父が買い取った私有地には二階建てのアパートと小規模な食堂、そしてアパートの母家に繋がる廊下に、先程の道場が建設されていて、旅館風の建造状態だ。
用途としては旅館で正解で、昔はそれが本来の目的だが、今は親父が買い取って戦場家の家だ。
「く、ハッハァ」
久遠院町には巨大な森があり、其処は久遠院の森と皆には知られて町の名物だが、同時に町の汚点でもあった。
曰わく、森に入れば殺されると噂されており、誰も侵入しようと試みる者は居ない。
鬱蒼と林立した深く高い木々はどこか怪物じみていて、また天然の広葉樹林が散らばっており、それ縦横無尽に枝分かれしており、枝に日光は遮られて昼でも結構、闇に包まれている。今は冬で、枝のみとなった森たが、それでも行方不明が多発している空間に進んで進入しようとは考えない。
「ハッハァ、ふぅー。ようやく脱出した」
だから、その森をジョギングの為に使用している俺は普通な神経を持っていない。
これは修行兼パトロールとなった俺の日課。
体を鍛えられて、道に迷った人を助けられるので非常に嬉しいんだ。だって、人を助ける正義の味方は誰だって憧れるモノだろうし、助けられる事は嬉しいことだからな。窮地に颯爽と現れて、助けてくれる人。
俺はそんな――親父みたいな正義の味方になりたいんだ。
今日は平日だから、高校二年である俺は公立の久遠寺高校と呼ばれる場所に通学している。
自宅から徒歩二十分に建てられたらその校舎は創立30年。
多少古びてこべりついた黴が有るが、キレイに保たれているのは生徒たちが乱暴に扱っていないためだろう。和気あいあいと活気がある久遠寺高校の生徒は、かなり心が大らかだと思う。
世界では色々な学校問題が挙げられるけど我が校ではそれが全くない。
「幹也、今日はヤケに早めに校門前に立つんだな」
「うん? ああ、なに、虫の知らせて。と言うものだ。今朝、目覚めた際にな、何やら胸を刺す何かが有ったんだ」
「ああ、幹也のカンは結構信頼できるからな。なら今日はなにか起きるな」
「そうなんだか――毎回、悪いな。委員でもないのに風紀委員紛いな仕事を頼んでしまって」
幹也は深々と朝、8時前の校門でお辞儀する。その動作には幹也の家柄がありありと感じられて、まさに鮮麗された動きだった。
「何でだ? 幹也は仕事じゃないのに、無償でこれやっているんだろ? なら幹也が謝ることじゃないし、
俺は好きでやっているんだ」
日課のジョギングを終え、朝食を直ぐに済ませ、俺は友人のボランティア活動の手助けしている。
さっき幹也も言ったけど、仕事内容は学校の風紀を乱す生徒や、風紀が乱れる格好をした生徒などに指導する仕事だ。
誰もこんな憎まれ役を演じたくないため、生徒会長自らこの業務を行っている。
「有り難いな。心のような正義心に満ち満ちた任侠人は珍しい」
「任侠って、幹也。家柄特有の言葉を使うんだな。しかし、任侠って、もうそれは死語だろう」
「何を言うか―――とは言えないよな。現代国語の漢字テストとかに、この文字が出題しないからな。うむ、一度校長殿に問い合わせでもするべきか?」
「・・・・・・」
俺の家――というか親父の家は幹也の親父さんから安く買い取った家で、おやじ曰く“極道みたいな人だった”らしいが、それは間違い、実際はその通りなのだから。
板東剛《ばんどう ごう》という名前で、地域密着型の本業をヤクザとしてる正真正銘本物の極道だ。で、必然的に隣で悩んでいる生徒会長こそ板東組の時期跡取り息子、板東幹也。
幹也とは残念ながら、高校で初めて出会った友人で、自己紹介した時に、“俺は戦場のような義人を探していたんだ”と愛の告白めいた事を衆人の前で、語られた時は恥ずかしかったな。
「おはようございます」
幹也と会話を楽しんでいたら、登校してきた生徒が挨拶。
「ああ、おはよ」貫禄ある生徒会長だ。
かなり上からの挨拶だが、全然不快に感じないのは偏に幹也の生来の才能だろう。
上に立つものとしての威信が感じられる。
「いよいよ、登校してきた生徒たちがやってきたな。戦場、これからはなるたけ、私語は慎むように」
「了解だよ」
仕事中は絶対私語は慎むのが幹也のルールで、授業中、一度も教師に叱られたことが無い事で有名だ。
妙に凝り固まった生き方をする幹也だが“オレより、戦場の方が凝り固まっているぞ”と以前、指摘された覚えがある。
―――――――俺はただ苦労している人達を堪らなく助けたくて、助けているだけなのに―――――――
「あ、ウワ! か、神上。貴様」
驚いた口調で幹也が珍しく人に指差す。
その先には、神上鮮華がいた。
「あら、生徒会長様。随分な挨拶ですね。オマケに、アウワなんて変なご挨拶ね」
ウェーブかかった腰までの黒髪を、上品にかき上げながら幹也に話し掛けているのは我が校一の才色兼備の絶世才女であり‘高嶺の華,と男女共に人気な女生徒、神上鮮華。
瞳の色が蒼い理由は彼女がドイツ人と日本人のハーフな為だ。
外人特有の高い鼻と外人特有の白墨色の白い肌。
今年、2009年の秋に転校してきた帰国子女は一日で絶大な人気を獲得した。
「ふん、人間は自分が予期せぬ事態に遭遇すると奇っ怪な言葉を発するらしいが、実際そうだったらしい。―――戦場、此方に来るのだ。呪われるぞ!」
「オオイ、幹也」
制服の襟元をグイグイと引っ張っられて、校門から三メートル程離れた。幹也はどうも神上を好まないらしく、初対面からずっとこの調子。犬猿の仲とはこの事だろう。
一部の男子は“小学生のアレか”と噂してるが、全く違う。
幹也は本当に、生理的に神上を受け付けられないらしく、理由は“人外の臭いがするから”だ。
―――――――どんな臭いだよ、幹也。
「ごきげんよう、生徒会長さん」
と言って、校門を離れ神上は下駄箱まで向かっていた。
―――――なんだか、面と向かったのに、挨拶しないのは失礼と思ったので、一応挨拶してみた。
「おはよう、神上」
ふつう通り、誰が聞いても見ても不快に思わない声と態度で挨拶を交わしたが、
「・・・・・・」
神上は無言で俺を一瞬睨み、徒に髪を躍らせて、玄関まで不機嫌そうな表情を浮かべて歩いて行った。通行人は一言も高嶺の華に声を掛けられなかった俺を嘲笑いながら、幹也に挨拶を交わしている。
「本当に、腹が立つ奴だ」
「幹也、それ陰口だぞ。陰口は嫌いじゃなかったか?」
イヤミぽく言ってみた。
「なに? コレが陰口なもんか。俺は奴に聞こえるように言っているんだ! しかし、戦場も懲りない男だな。そんなにアヤツ目当てなのか? あまり他人の趣味思考に口を挟みたくはないが、アレは止しておけ。喰われるぞ」
「な! 違うって」
それは、俺だって神上の美貌には惹かれるけど、それは興味がヒカレルのであって、決して恋愛感情なんか無い。妙に周囲はニヤニヤ笑っているし。
「本当か? まぁ、戦場は嘘をつける人間ではないから信じよう。なら結構。俺の友人が籠絡されるのは堪らんからな――――――――しかし、アヤツも何故に戦場のみを嫌っているのだろうか?」
「それは多分――――」
幹也と同じで生理的に受け付けられないんじゃないか、とは言わなかった。そんな事を言えばまた不毛な争いが起きるのは目に見えている未来だからな。
どうだったでしょうか。
作者は未熟者なので深読みして下さると嬉しい限りです。
次回作でアルト姫の登場を考えて下りますので、次回もお読み頂けたら幸いです。
あと皆様は‘人生,とは何だと思いますか?
この戯言の解を感想板に書いて頂けると嬉しいです