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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

真偽の泉

作者: お伝

ハイファンタジー部門ランキング入りしていて驚きました。読んで頂いた皆様のお陰です。

ありがとうございます。

なろうラジオ大賞6 応募用に1000文字のショート作品に挑戦しました。

超短編です。

神域とされる森の中


両手を縛った縄に引き立てられ、足枷に繋がれた重い球を引きずりながら森の奥深くにある真偽の泉を目指す。

虚ろな目の先には、輿に揺られ辺りを憚ることなく顔を寄せ囁き合う私の婚約者と真の聖女を名乗る伯爵家の女。そしてそれを守るように取り囲む騎乗の護衛達と、付き従う神官たち。


真偽の泉と呼ばれるその小さな泉は、そこに身を投じた者が真であればその体は浮かびあがり、偽であればその体は泉の底深く沈んだままとなる。


私はこれから聖女としての真偽を問われるためにこの泉に沈められる。


聖女を騙る者は女神の怒りにより喉を焼かれて声を失うという言い伝えが実しやかに社交界に広がったとある夜会で、私は毒を盛られ喉を焼かれた。

壮絶な苦しみにもがく私に、婚約者である第三王子とその腕にぶら下がるようにしがみつく真の聖女を名乗る伯爵家の女は、聖女を騙った神罰が下ったと声高に宣言した。

加えて続けられた、真の聖女を害そうとしたというありもしない罪での断罪にも、声を失い苦しみに悶える最中にあった私は身の潔白を宣言することが出来なかったのだ。


到着した泉の畔にある祭壇で、神官たちが女神の怒りを鎮める祈りを捧げ、私は泉の縁に立たされた。


「この罪深き偽聖女の魂が泉の神気によって浄化されますよう、真の聖女として祈りを捧げます」


もっともらしく跪き胸の前で手を組んだ伯爵家の女から出た(罪深き偽聖女)その言葉に体中の血が沸騰するように熱くなり、薬で焼かれた喉から声にならない叫びが迸る。


「真の聖女はこの私」


手縄を外し足枷を取ろうとした神官を婚約者の第三王子が止めた。

重りを付けて沈めては真偽が問えないという神官に彼は言い放った。


「偽聖女が浮かび上がることなどあってはならぬ」


止める神官たちを押しのけ、第三王子は泉を背にして立つ私を突き飛ばした。


足が地面を離れた刹那。


パチリ


指を鳴らす音と共に私と伯爵家の女が入れ替わった。


驚愕に目を見開き互いの顔を確認した二人。


伯爵家の女は足に付いた重たい球に引き摺り込まれるように泉の底へ沈んでいった。


パチリ


指を鳴らす音と共に、叫び声を上げようとした第三王子を業火に焼かれるような凄まじい苦しみが襲った。

助けを請おうとして声を失ったことに気付き愕然とした。


奇跡を目の当たりにした神官たちが私に恭しく傅く。


辛苦を乗り越え真偽の泉の審判により選ばれし真の聖女は、国民の熱狂的な歓迎を受けて凱旋した。


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― 新着の感想 ―
神罰の下った王子はそのまま放置かな。神官も無下にされたし、誰も拾わなそう
ストレートな展開!
まさかの展開でした! しかし、真の聖女である証明はなされたけど、《私》の声って出ないままなんですよね?(記述がないので) 真偽を明らかにする代償も大きかった…… それとも、王子のそれは《私》から移され…
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