朗読するだけの仕事
私の仕事は朗読をすることだ。
私の朗読はただの朗読じゃない。国を左右する朗読だ。
秘書の作ってくれた文章を誰よりも威厳のある通りやすい声で読む。
内容は秘書に一任している。
こうすれば、下手なことを言うことはない。失言をして消えていった同期を私は何人も知っている。
今日も朗読の時間がやってきた。
静かになっている議事堂内に声を響かせる。
「......このような観点から私は野党の価値をもっと高めるべきだと思う」
「与党は調子に乗ってる!!」
「辞任しろー!」
野次が飛び始める。かと思ったら静まり返ってしまった。
というか、私はなんと言った?
私は与党ぞ......
そして、野党は野次失敗したよな......
次の日。
ニュースを見ていると、
「野党、野次の台本を読む」
というタイトルのニュースがあった。
あーあ。