01話 開幕
海に囲まれた小さな離島。
森が大きな炎と黒い煙を上げて燃えていた。
ぱちぱちと木の枝達が破裂をしていき次々と大きな音を立てながら木の幹が折れ倒れていく。
天は晴天で燃ゆる炎を消化する恵の雨が降る事は期待できそうにはない。
屋敷の中も森と同じように至る所に火がついて燃えていたいた。
屋敷を支える柱からミシミシと悲鳴を上げ、ひび割れた隙間から火が吹きはじめた。
ここまで燃えているとなれば、恐らくあと数分もせずにこの屋敷は倒壊してゆくだろう。
壁や襖、柱、掛け軸と様々なものが燃え、火の粉が舞い散る業火の炎に囲まれたその屋敷の廊下を、彼は臆す事無く進み、その先にある焼け消えて開かれた襖の部屋へ入る。
目に映ったのは、まだ燃えていない畳の上に横に並び着物を纏い、その状況に恐怖や恐れは無く、荘厳華麗に正座をして座る二人の姿があった。
それはまるで、入ってきたその者の帰りを待っていたようにこちらを見て微笑み、座る一人が何かを伝えるように口を開く。
二○二七年 二月二十八日
…いけない、またボーとしてた…。やっぱりここで作業してると、あの景色が思い浮かんでしまうな。
鉄と鉄がぶつかり合う重機械の音とやかんの沸騰音のような高い音が室内中に鳴り響く。
機械から発せられる熱の陽炎と隙間から溢れる水蒸気と環境に悪そうな灰色の煙が混ざり、低い天井を煙が覆い隠している。
鉄骨の柱にかけられた昔ながらの棒状の温度計は七十度を超えており、その空間はサウナ状態である。
ここにはいくつかの換気口があるのだがそれも十分に仕事が追い付かないほどに大量の煙がずっと出続けているのだ。もしかすると長年使われているために排気口の奥に何か塊のようなものができていて通気性を悪くして機能していないのかもしれない。
そんな蒸し地獄のような空間で一人、何か作業をしている人影があった。
その姿は煙から体を守る為のとても分厚い、スス汚れた防護服に顔全体を覆うガスマスクで完全防護している。
左に懐中電灯、右にスパナを持ち機械のいくつもあるボルトを何度も締めてはスパナであちこちを叩き音を聞いて異常が無いかの確認をしていく。
「…よし」
指差呼称をして一連の作業を終え、左腕の防護服に取り付けられた時計を見ると時計の針は二十一時半を刺していた。
「もうそろそろかな…」そう後ろを振り向くと奥の方から分厚い煙の層を眩しい光が抜け差し込み、こちらへと向かって近づいてくる。すると煙の中から同じような防護服を身にまとった二人が左に持っている懐中電灯を横に揺らしながら右手を軽く上げて近付いてきていた。周囲の騒音のせいで声などが聞こえにくいがために、これが彼らの交代の合図である。一応交代を確認をするために一秒程度の顔合せを行い持っていた懐中電灯以外の道具を渡して二人が来た先へと歩いて行く。
煙が溜め込み軽く覆い隠れた扉を開き両端で規則的に点滅する電灯の通路を進んで行く。
ドーム状の通路で壁に幾つもの配線と配管が通路を覆っており点々と並ぶ光るメーターが緑色の蛍光色を放ち、機械が正常に稼働してある事を教える。
そうしてニ、三分歩いて辿り着く。薄い橙色の光を透かした扉を開き小さな空間の先にまた一つ扉があるその中へと入っていく。
ここでやっと彼は暑く分厚い防護服とガスマスクを脱いでいく。
防護服から現れた姿は、まるで大雨にさらされずぶ濡れになったように汗だくだった。ずぶ濡れのシャツから伸びる腕や、張り付いて透け見えるその身は細身ではあるものの、それなりに引き締まった体躯の青年だった。
汗をタオルで拭いカゴへ放り込む。仕舞っていた作業ズボンを着て、脱いだ防護服とガスマスクを整えてロッカーに仕舞い、別の新しいタオルを首に掛け、もう一つの扉を開き休憩室へと入っていく。
あんなに熱い環境であった為、休憩室は冷房がかかっているかと思われそうだが、今は冬であるためにしっかりと暖房が付けられている。まぁ先程までと比べればマシで涼しくも感じられる…いや、そんなこともないな。
部屋の中には三十から六十位の中年の男三人が先に休憩していた。一人はにやけながらメールのやりとり、一人はイヤホンから溢れる音量でゲームを、一人は真横の棚に置いてあるラジオを付け、顔にタオルを垂らしそのまま眠るかのように椅子にもたれて休憩している。
暑さと疲労もあり、のらりくらりと冷蔵庫からお茶の入った大きなニLペットボトルを取出し飲みながら近くの椅子に座る。
先ほどまでの作業でかなり汗をかいた為、それを補うようにその一度の口付けで七割以上を一気に飲み干した。
口をタオルで拭い休憩に入る。だが彼には休憩中にも一つ仕事があり、机にある帳簿に自身と机に置かれたほか三人の作業メモと休憩に入っている人の名前と時間などを記帳していく。ただ書いてることをまとめるだけの単純な作業なのだが、それでも書くことはそれなりに多くとても退屈である。その為、退屈しのぎに耳に入って聞こえてくるラジオを聞きながら書いていく。
『二月二十八日午後十八時に発表されました。本日十四時頃、ドイツ及びオランダ、ベルギーのケルン戦線、同時刻ロシアと中国のトゥラン戦線にて、ドイツ軍と中国軍が戦闘状態に入り進軍開始直後、現場指揮をとっていたドイツ軍アルノー・ド・フォルヴァルツ氏、中国軍梓宇氏が何者かに狙撃され再び停戦状態に戻り今なお睨み合いをしているとのこと。そのほかでも…』
聞いた通り現在は第三次世界大戦の真っ只中である。
戦争と言っても第一、第二次世界大戦のような大きなものではなく国境に軍を置いての睨み合いという停戦状態がほとんどで、真正面からの大きく激しいぶつかり合いという戦争はそこまで起こっていない。だから第三次世界大戦と言うには少々大袈裟であるのかもしれない。
第三次世界大戦が始まったのは二○二四年のことだ。
冷戦を終え、それまでしばらくはテロや内戦、国同士の多少のいざこざはあったものの軍隊を使った大きなぶつかり合いなどは無く、少しずつそれなりのできる限りの平和な世界になろうとしていた。
…いや、いいか。
戦争の起点とされているのは二○一五年に起こった日本の不可思議の失踪事件をはじめに、二○二二年における七年間の各国で約一万人近くという大きな失踪に各国が互いに遅い不信感を抱き戦争という建前で全世界が鎖国状態となっている。
現状日本はどこの国ともにらみ合ってない状況である為、他の国が戦争している間も国民は、大丈夫だろうという平和ボケしている。「核は持たない日本!」とまだ思い込んでいる国民がたくさんといる。そんな中幾つかの工場が急遽建設された。
考えるに他の国がそんな状態である現状いつ矛先がこちらに向くのか、後ろ盾を失ったと上の人達は焦り建設することにしたのだろう。何を作っているのかは知らされてはいないが、恐らく武器や盾とする為の兵器をつくる工場だろう。そしておれが働くこの工場もその一つなのだろう。
不思議に思っていることが二つある。それはなぜ大戦前から工場を稼働させていたのかという事だ。ここの工場は他とは違い廃工場を再利用しているもので、工場が稼働し始めたのは二○二二年の戦争が正式に始まる前からのことで既に七年間は稼働し続けている。まるで戦争が起こることを知っていたかのように感じ取ることもできる…。
そしてもう一つ、いつまで兵器の材料を蓄えるのだろうということだ。確かに、もしもの為と作っておくのはいいとは思うのだが、どこの国も大きな兵器の使用がなく、この五年他の国と違い日本はどこの国ともにらみ合いすらしていないのだからそこまで多く作らなくていいのではないかと思うのだが…。
まあ、今はただの工場作業員。そんな俺が知る必要もないのだろうけど。
そう考えているうちに帳簿を書き終えてしまった。壁に掛けられた時計に目をやると二十一時五十分を針が指していた。
仕事は十二時から二十二時までで、あと十分もすれば今日の仕事も終わりだ。といっても、もう既に引き継ぎを済ませてるからこの十分、問題がなければ時間までここで待機しておくだけ。明日から二日の有休取ってるからしっかりと休ませてもらわないと。
残りの時間をいつも通り読書をしようと鞄に入った本に手を伸ばすと、彼が入ってきた扉とは別の扉が開き一人の男が顔をのぞかせた。
その男は上司でありこの組のリーダーである。顔に墨を入れた少々いかつい中年の男だ。男は部屋を見渡すなりこっちを見て目が合いニッコリと笑みを浮かべる。
ああ…何だか嫌な予感がする。
「おう、儚義お前明日明後日と有休取ってたよな」
「はあ…取ってますけど」
「ならー」
「ああ、この後の見回りですね。大丈夫ですよ」
「おう、分かってるじゃねぇか。じゃ後で頼んだぞ」
そう言って男は扉を閉め再び残りの作業をしに行く。
先の男から多少イラつきのようなものを見て、感じとれた。暫く関わりができた人は些細なことからそういうのが分かるようになってくる。あれは多分仕事のストレスか、それとも毎年この日に有給を使って休もうとする私に対する怒りなのだろうか。有給と言っても一年に一回の二日有給なのだから、それくらいは許して欲しいのだが。まぁその男自身ではない俺には、何に対して怒っているのかは分からないことなのだが。
面倒な事であり損な役回りだが、こうして相手の機嫌を損ねないよう言うことを聞くのが一番だ。この行動が自分の為であり今の自分のすべき生き方なのだと自分の中で納得する。
人は簡単に死ぬ。
例えばそこら辺に転がっている大きな石で何度も殴打する。階段や高所から突き落とす。尖った鉛筆やペンで突き刺す。
人は簡単に何かを殺す。
それが気持ち悪かったから。イライラ、むしゃくしゃしていたから。分からなかったから。不利益な存在だったから。必要がなくなったから。興味があったからと様々な事を言う。
これまでのニュースなどを遡り見れば理解してしまえる。
人は感情に流されやすい。自分でない存在が何をするかなんて分からない。だからこそ、敵を作らないようにする。あまり関わりを作らないようにする。時と場合というのもあるが、基本的にそれが一番自身の身を守れるのだと考えている。それにこの工場のような使い方を間違えれば人を簡単に殺してしまえる道具の多いい場所、それも刑務所作業工場となると尚更だ。
ここで働いている殆どの人間が犯罪者だ。現にそこにいる三人は強姦に強盗、横領などをしており、リーダーのあの男に関しては放火やナイフで人を刺すといった殺人未遂等を結構やっていると聞いた事がある。
先の石による殴打や高所から突き落とす、鉛筆で刺すというのは詳しくは知らせられていないが、去年ここではない別の工場内で実際に起こったことらしい。だから少しでも襲われる可能性を避けなければならない。問題を起こすのも、巻き込まれるのも面倒な事なのだから。
「「…よし」」
夜勤のおじさんと作業場等の確認を行い、最後の項目にチェックをつける。
「じゃ、お疲れさん」
「本当にすみませんでした」
「いいってことよ。気にすることはねぇよ」
「では、後の事よろしくお願いします」
この工場は二十二時に全ての機械を止めて六時になるまで動くことはない。なら夜勤の人たちは何をするかというと見回りだけだ。上手く働くことのできないお金に困った七十以上の高齢者を雇っているのだ。勿論高齢者だけではなく、もしもの時の為にそこそこ若いのが三人、警備員は二十四時間交代で数人はいるので心配はない。
休憩室に戻り時計は二十二時半過ぎを指していた。
いつもなら十五分程度で終わる見回りなのだが、道具の放置や中途半端な作業をされており、それらの処理をする為に遅くなった。仕事なのだからちゃんと責任もってやってほしいものだ。
あとはタイムカードを切って帰るだけなのだが。自身のタイムカードを手に取り見ると退出の項目には既に二十二時と刻まれていた。
「今回も、サビ残か…」
ため息をつきながらも帰宅準備をしていく。落ち込んでいても時間を無駄にするだけ。それならさっさと家に帰って休みたい。
荷物を鞄にまとめコートと手袋でしっかりと防寒対策をして外に出る。
「はぁ…寒」
外は作業場とは反対にとても寒く、白い吐息が舞い上り消える。昼ごろ配管から漏れて出来ていた水たまりは凍っており、少し汚れはあるもののそこそこきれいな鏡面に下弦の月を映していた。
駐輪場でポツンと一台だけ残っている黒いバイクにまたがりエンジンをかけて走り出す。
工場の門を出てただひたすらに真っ直ぐと道なりに進んでいく。
この島にあるのは工場を囲う森と工場と隣接している刑務所と船着場のみで他に行ける道などない。あるのはこの工場から島々を繋ぐ高速道路へのインターチェンジまでの一本道のみ。高速道路に入り、直ぐにある別れ道を左に曲がり、ただひたすらに真っ直ぐ進んでいく。どれだけ進んでも一度も他の乗用車とすれ違うことがない。まるでこの世界には自分しかいないのではないかと感じてしまえる。まあそれもそのはずだ。
深夜で人通りが少ないというのもあるが、そもそも戦争の始待った頃に四国に住む国民に国から移住命令が発令していたからだ。
突然の事で皆不安と不満もありつつも国からの最大限の保証があるということで、地に根を張ったような頑固な年寄りの人達も息子娘の説得がもあり、皆渋々受け入れ決断し移住して行った。
きっと上の人間はこの国で武器のようなものを作ってることなど知られたくは無いのだろう。だがそれでも四国という土地を使う程のものかとも思うが。
山を抜けるためのトンネル内の電灯は当然ついておらず、バイクに取り付けた改造した明かりを最大まで強めて、それを頼りに進んでいく。整備されていない為、風に吹かれて来た葉や木の枝などが溜まり散乱としており、それを避けなければタイヤを取られて多分こけてしまうだろう。
そして見えてくるトンネルの出口を知らせる外の明かりの輝きに向かってただ進む。
それを抜けると島々をつなぐ巨大な橋へと出る。そこで誰の迷惑をかけずに、邪魔されず、エンジン音を大きく響かせスピードをあげる。
横目に映る島々に挟まれた巨大な夜の海、そして海と天に輝く月と星々の絶景を独り占めにする。
このひと時がとても心地よく仕事であった嫌なことが風に吹かれ置いていくように本当にどうでもよく感じれてしまう。
これで嫌なことすべてを忘れることが許されるのであれば忘れることができそうなのだが。きっとそれは彼らもだが、それよりも俺自身がそれを忘れることを絶対に許す事などないだろう。
そうやって消えることのない考えを紛らわせるように、より一層スピードを上げ夜を駆ける。
二十三時四十分頃
工場から家まで約四十分程度の距離なのだが、運が悪いことにいつも通っている道を塞ぐように木が倒れていたためにそれの処理をしていて帰るのがいつもより遅くなった。
見つけた時やっておかなければ忘れてしまうからその時にやっておくのが最善であり手間にならない。
山々に囲まれた小さな田舎町。両隣に家はあるが移住命令のことで当然人はいない。つまり両隣どころかこの田舎町にある自分の家以外全てが空き家である。だが当然、ガスに電気、水道は止まっている。その為ガスは放置されていった空き家のプロパンガスを交換して使い、電気もソーラパネルを近くまで運んで繋ぎ、水は近くの(二キロほど離れた)湧き水を水道に繋ぎ何とかやっている。そのため多少の苦労はあるものの家賃もろともタダという超優良物件化としている。
最後の余計な重労働でふらふらに疲れた体を揺らしながら玄関の鍵を開き扉を開く。
「ただいま」
バイクをそこそこ広い玄関に押入れ、リビングへと向かう。
「はぁ、さっさと風呂掃除してお湯入れて、飯食って、今日は寝よう。いや、その前に様子を見ないと…」
そう呟きながらリビングの扉を開き明かりをつける。
部屋に入るなり適当な所に荷物を置き、窓際に置いてある小さな鉢植えの元へと行く。
その鉢植えは見るに特にこれといった植物がある訳では無い、ただ土が盛られているようなものにしか見えない。
一応手入れを欠かしていないのか、雑草のようなものは一つも見当たらない。
…今日もまだ芽は出てこないのか。
その鉢には一つの植物の種が入っている。
とても大切な御二方から頂いた花の種であり、その御方達からは「きっと美しい花が咲くから大切に、守って育ててくれないかな」とお願いされた。
花といった植物は育ての親でもある、その御二方が好きだった為にら、よく庭の花畑の手入れ等の手伝いをしていた。その為、大体の花は咲かせることくらいできるのだが。その植物の種は初めて見るものだった。
御二方は先の事以外その種の事は話して下さなかった為によく分からない。自分より色々詳しい知人や花屋の人にその種を見せて花の種類や育て方を聞いたのだが、双方が言うに、「何の種か分からない。新種のものでは無いか?」と言われた。
とりあえず自分の知識で育て始めたのだが、種を植えて七年、芽すら出ていない。
普通に考えれば種が枯れておりきっと咲くことは、もう無い…。そう心の奥隅で思っているが、それでもあの御二方から頂いたもの。諦める訳にはいかなかった。
あの御二方の事だ。恐らく咲いても咲かなくても望み通りなのだろうけど…。でも咲くことが望みであるのであれば咲かせたい。そうすれば満足してくださるだろうし、そうなれば俺も、もう…。
いつまでも芽が出ない花に対して落ち込むような素振りは見せずに閏花はいつも通りの日常を送ろうとする。
いつもはシャワーで済ましているのだが、連休を取ってあるから今日はゆっくりお湯に浸かるとしよう。そう浴槽をさっさと洗い、お湯を入れている間に掃除できる所を軽めにやっておこうと台所付近を綺麗にし、そこそこお湯が溜まってる頃だろうと体を洗い湯船に浸かり眠るように体を浴槽に預けて瞳を閉じる。
目を閉じるといつも燃えるあの景色が映像が流れるように浮かび上がる。まるで忘れないように瞼の裏に焼き付けられたように。
ゆっくりと瞼を開いて湯気が昇る天井を眺める。
いつも通り朝を起き、朝食を食べ家でのことをして工場へ仕事に行き、夜になったら家に帰り体を洗い夜食を食べ眠りにつく。
きっと俺はいつも通り、なんて事ないまま日々を過ごしながら、いつ来るか分からない命の消えるその時を待ち続けるのだろうか…。
「なんて生き地獄だろうな…」
目も体も軽く休まり湯船からでる。体を拭いていると洗面所に置いてある古い時計に目がいく。その時計はあと三十秒程で明日になろうとしていた。
ああ、もう零時を回るのか。また一つ歳をとるな。次は何歳だったけか…。いや、どうでもいいか そんな事など。
服を着てリビングへの扉を開くと明かりを付けているはずなのに薄暗くなっていた。それはまるで洞窟の中にいるような不気味な明るさ。
「…電球が弱くなってきたのか?」
さっきまでかなり明るく電球の交換って感じではなかったと思うが。そもそも、弱くなったにしてもこのようになるものだったか…?
そう考えながらリビングへ向かうと真っ暗な筈の窓の外から明かりがない筈なのに薄らとした明かりがあるように感じ見えた。
気になり窓の外を覗こうとカーテンに手をかけると
ーーーーー
あまり耳にしない音が聞こえた。
例えるなら、空が震えたような、そんな音が背後から聞こえた。