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〇〇の話  作者:
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ベストコンディションの話

 漫画「刃牙」シリーズにとても好きなセリフがある。


「人間生きてりゃ飯も喰えば酒も飲むんだ。ケガもするし病気もするだろうよ。ベストコンディションなんて望むべくもねぇ……それがこっちの世界だぜ」


 これは空手家の愚地独歩という人物のセリフである。なんと怪我人相手に喧嘩を売ってボコボコにするときに使う、それって怪我してるほうが言うべきなんじゃねえか的なセリフなのだが、それはそれとして内容自体には非常に同意できるものがある。


 俺は普段から体調が悪い。寝不足なのだ。というのも布団に入ってからも眠らずにスマホをいじったり何かが気になって起きて調べ物をしたりしてしまうせいなのだが、そのせいでほぼ常に体調が3割ダウンくらいといった感じだ。まあ寝ても眠気がとれるだけでそれほど快調にはならないけれども、普段は加えて微妙な眠気が常につきまとっているので、良いか悪いかで言えば大体悪いのである。


 それなのに小説を書こうというとき、「なんか体調良くねえなあ」と思うとやめてしまう。

「いやおかしいやん」と自分でも思う。ベストコンディションなんて年に1回あるかないかぐらいなのに、体調良い日なんて選んでられねえだろと。悪くても書けよと。頭では理解しているつもりでも、なんだか体が動かない。

 というのも小説を書く行為は基本的にものすごく疲れるのだ。集中力をフル稼働して話を考えセリフを考え描写を考え語彙の限りを尽くして文章にするのだから。当然疲れる。信じられないくらい疲れるのだ。時間なんかいくらあっても足りないしな。だから躊躇してしまうのだ。

 でも書けよ、と。だって体調良い時選んでたら書けないんだから。


 最近、とはいえ2か月ほど前か、ある賞に応募する際、締め切りまでものすごくぎりぎりになった。そのときは確か3日で1万5千字くらい書いた気がする。筆が早ければそんなに厳しい量でもないかもしれないが、筆が遅い俺にはとんでもない量である。

 でも書いた。カフェインを大量に摂取して最後はふらふらになりながら書いた。あんときはマジで疲れたね。その後1週間くらい最悪なコンディションだった。

 その代わり達成感はものすごかった。別に賞取ったわけでもなく、ただ応募しただけなのに、すげえ達成感があった。「ああ、俺ちゃんと完結させたぞ」と。小説ってすごいんだと思った。何も成し遂げたわけじゃないのに、こんなにも俺は充実している。そんな満足があった。


 俺は小説を書く楽しみを知っている。

 小説に限らず、創作系ならなんでもそうだ。自分が思い描いていたことがだんだんと形になり、実態となっていく喜び、それは想像を超えてくる。俺のイメージがこんなに面白かったなんて、と感動する。だから創作をいつまでたってもやめられないし飽きないのだ。これを超える面白い行為はハッキリ言ってさらなる創作以外に存在しないと思っている。


 だが、というか、だからこそ、というべきか、創作は疲れる。全身全霊だからだ。全力でやらねば何にも面白くないのが創作である。想像を下回った瞬間というのが最悪だ。「こんなもんか」と思ってしまったらもうその創作物は作れなくなってしまう。負け試合でいつまでも投げ続けるピッチャーのように、不毛な消耗を続けることになってしまう。それが何よりも苦しい。


 だからこそベストコンディションが望ましい。最高の創作のためには最高の自分が必要だ。どんなものを作るにせよ、最高のものを作りたい。それは何より自分のためだ。面白い創作をするためには面白い自分がいなくてはいけない。それすなわちベストコンディションの自分だ。


 しかし、ベストコンディションの自分など、今いなければどこにも存在しないのだ。いないものを一生懸命探してどーする。意味がないんだ、そんなことは。

 下手くそのくせにいつまでたっても最高の自分を探しているのか。最高の自分は今の自分に比べていったいどれほどの働きをしてくれるんだ。分からない。分からないなら、今ある武器で、今の状態で戦うしかないんじゃないのか。

 俺が戦っていないとき、他の奴らは戦っている。そいつらはきっとベストじゃない。でも戦っているんだ。

 そのとき出せたものが実力なんだ。コンディションが悪かったとか、そんなことは何の言い訳にもならないんだ。


 余計なことを考えるな! 書け! 書くんだー!


 そう思いながら昨日昼寝してめちゃくちゃ気持ちが良かった。

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