表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
〇〇の話  作者:
2/32

文章の話

 なんで小説書いてるんですか、と思うことが多々ある。言われたことは無いけれど、自分に対してそう思うことがあるのだ。たぶん、小説に限らず、創作をしている人間ならそういった類の自問自答くらいしたことがあると思う。


 その質問は剣道をしている人に「なんで剣振ってるんですか」と聞くことに似ている。相手を倒すことが目的なら「銃使えばいいじゃん」と誰もが思うはずだが、剣道をしている人に「なんで剣振ってるんですか」と聞くのはすごく無粋なことだ。でも実際のところ銃使えばいいじゃん。それで勝てるんだったら。目的が相手を倒すことならば、別に剣にこだわる必要ないわけで。

 まあ日本なら普通は銃使えないから、身近にある棒とかが剣の代わりになり得る剣道は護身に役立つ、とかそういう考え方はあるのかもしれないけれども、そんなら空手とか柔道とかやってる人に対する「なんで武器使わないんですか」という質問に変えてもいいかもしれない。いや、それはそれで「咄嗟の時に役立つのはあるかどうか分からない武器でなく自分の身体です」とか言われたらぐうの音も出ないのだが、あれだな、さっそく話がずれてきたな。


 絵を描いてる人に「なんで絵描いてるんですか」と聞くとたぶん「好きだから」とか「得意だから」とか「分からん」とか返ってくると思う。でもそれぞれきっと表現したいものがあって描き始めたわけで、絵っていうものはその手段なわけです。絵を描くこと自体が楽しくてそのために描いてる人は違うかもしれないが、多くの場合は例えば「アニメ映画を作る」のようなゴールがあり、そのアニメ映画ってのは絵でなきゃ表現できないから絵を描いてる、と絵に対して「手段としての絵」という結論が出るはず。


 そうなると「なんで文章書いてるの」という疑問も最後は「表現」に行き着く。

「文章でないとできない表現がしたい」から文章を書いているわけで、どんなジャンルを書くにしても、それは「文章でないとできないこと」であるべきだと俺は思っている。


 文章の特徴として、映像や絵などの他の表現方法に比べると、一秒あたりに得られる情報量が非常に少ないことがあげられる。人は大体一秒で二十字程度しか読むことができないが、絵を一秒見てそこから得た情報を文章にすると二十字などでは済まない場合のほうが多い。映像にしたって、音楽やカメラワーク、俳優の表情やセリフの読み方など、文章と比べると明らかに情報量が多い。


 考えたいのは、情報はあればあるほどいいわけではない、ということだ。要らない情報はただのノイズとなって物語に不要な疑問を作ってしまい、人を没頭から遠ざける。そういう意味では、文章は最も情報量を制限しやすく、無駄を作らない表現方法と言える。あらゆる表現の中で最も無駄を少なくできるのが、文章なのである。


 「無駄がないのが好きだから文章書いているのか」と言われると、それは違う。なぜなら、文章の特徴と俺が文章を書いていることは矛盾するからだ。文章には無駄がなくとも、俺の思考には無駄がある。その無駄は必ず文章に現れてしまう。それが表現である限り、作者の思考や人間性を出さないということは不可能なのだ。無駄を持つ人間は必ず無駄を書く。書かずにはいられない。

 しかし、だからこそ面白いのだ。

 考えてみてほしい。無駄のない人間などいるだろうか。必要最低限の睡眠を取り最低限の栄養を摂取し機械的に仕事をこなし無駄な感情や思考を持たず論理的に無駄無く生きている、そんな人間は存在するだろうか。否、いない。

 無駄に寝たり、無駄に食べたり、無駄に笑ったり怒ったり泣いたりするのが人間だ。無駄こそがその人間の本質である。何の意味もないこだわりや趣味嗜好にこそ、その人間の面白さが詰まっている。


 きっと俺は自分の中の面白い無駄を表現したいんだと思う。それに最も適しているのが文章。俺が文章を書くのは、そういった理由です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ