43話
「なんで、鬼島がここに?」
「本部の指示だ。この状況一斑だけでは荷が重い。そういう判断だ」
なるほど、本部の増援。悪くないタイミングだ。
奇怪虫と戦うアレックス達のところにも二班のメンバーが駆けつけているのが見える。
「助かったよ」
「バカか。そういうのは生き残ってから言え」
そう言って鬼島は胸ポケットから煙草を取り出し、火をつける。
「で、あれは何だ? 私の見間違いでなければ死んだ知り合いが目の前にいるんだが、何の冗談だ?」
煙草の煙を吐き出しながら言う。
鬼島もクリスとは面識があるらしい。余裕そうに煙草を吹かしているが、内心動揺しているのかもしれない。
「冗談ではないですよ、私はクリス・ミラー」
「そんなバカなことがあってたまるか。いつからこの世界は死人が生き返るようになったんだ?」
鬼島の意見はまったくもって正しい。
「奴は奇怪虫だ。クリスに寄生した個体があの時死んでいなかったらしい」
僕が説明する。
「成程。それならまぁ、合点はつく。納得はできんがな」
鬼島が銃を放つ。だが炎の壁が銃弾からクリスを守る。
「酷いじゃないか」
クリスが笑う。
「知り合いならもう少し撃つのを躊躇ってもいいだろう?」
「お前にクリスの記憶があるならわかっているだろう?」
「私とお前が関わったのはほんの数か月のことだ。情なんてもの、持ち合わせちゃいないさ」
鬼島がもう一度銃を構えなおす。
「相変わらず、ふざけた形の銃だな、それ」
鬼島が手にしている銃は銃身が短く、口径は大きい。砲口は先に向かって広がっていくような形状をしている。
ブランダー・バス。所謂ラッパ銃と呼ばれる銃だ。
「いいだろう?」
鬼島は自慢げに言う。ふざけた形と言っているのだから誉めているわけがないのだが……まぁいいか。
「おしゃべりは終わりだ。この胸糞悪い戦いをさっさと片付けるぞ」
鬼島がそう言った瞬間、炎が僕らに向かってくる。僕たちはそれを躱す。
僕はそこから加速し、クリスとの距離を詰めていく。
炎はそれをさえまいと僕に迫りくるが、それを鬼島が弾丸で吹き飛ばす。
一人で戦うよりも圧倒的に戦いやすい。
あれだけ苦戦していたのが噓のように戦いやすい。
距離を詰める。
クリスの体に刀を振るう。
「死ね!」
「甘いよ。」
クリスの足元から炎が噴き出し、クリスを守るように覆う。
「そのまま突っ込め、シュウ!」
鬼島が叫び銃を放つ。
炎の柱が吹き飛ばされる。
「なにっ!」
一閃。クリスの右肩から左の脇腹までを切り裂く。
クリスが膝をついて倒れる。
「終わりだ」
クリスに刀を突きつけて言う。
再生が終わる前にこいつを殺す。
「ハッハッハ。素晴らしい。完璧だ。まったく、君たちは計画通りに動いてくれる」
クリスが笑いながら言う。
「何?」
この期に及んで、何を言っている。二班が合流してきた時点で、こちらが有利だ。
クリスが出現させた奇怪虫も続々とアレックス達によって倒されている。
「ハッタリだな。とどめをさせ、シュウ」
ピリピリピリ、と電子音が鳴る。ジンとサクヤの通信デバイスだ。
それを見て二人は突然戦闘をやめ走り出す。
あの方角は……
僕は考える。この状況。クリスの計画通りという言葉。二人の行動が奴の計画とやらによるものなら、狙いは何だ? 二人はなぜ戦いを辞めた? 思考を巡らせる。
「おい! 持ち場を離れるな!」
鬼島が叫ぶ。
だが二人ともその言葉を聞こうとはしない。
「何を考えているんだ。あいつらは!?」
つながった。
僕は思考を辞める。
「これでいい」
僕は鬼島を制止させる。
「なに?」
僕の言葉に鬼島は納得がいかないようだ。
たしかにそうだろう。この状況で戦力がいなくなるのは痛手だ。しかも命令違反。到底納得できるはずがない。
だが、二人の行動に別の理由があれば話は変わってくる。
「僕の予想が正しいなら、おそらくクリスは……」
僕はまとまった思考の解を告げる。
「陽動だ」




