41話
赤い光の明滅。それと同時に、巨大な虫の形をした奇怪虫が現れた。
数は十二体。
「おい、何だこれは!?」
現れた奇怪虫の攻撃を躱しながらジンが叫ぶ。
「これもお前の能力か?」
僕は以前にもこれと同じ現象を見たことがある。
あの河川敷だ。
ならばやはり、あの時の奇怪虫の出現も奴に仕組まれていたこと。
「あぁ、僕本来の能力ではないけどね
「本来の能力ではない?」
なら奴の本当の能力とはなんだ? 奇怪虫としての力がまだ隠されているのか?
「アレックスも知っているだろう? 僕の武器」
クリスが先ほどコハクを取り出したのとは別のポケットから何かを取り出す。
古いジッポライターだ。
クリスはそれを取り出すとキャップを開けフリントホイールを回す。
ライターに灯がともる。
「燃やせ、火炎王」
「避けろ、シュウ!」
アレックスの言葉で直ぐにその場から離れる。その直後、僕のすぐ横を炎が通過する。
「今のはなんだ?」
「火炎王。螺旋の番人時代の奴の武器だ。炎を自在に操ることができる」
ライターをもう一度見直す。確かにフリントホイールの部分に小さなコハクが埋め込まれているのが見えた。
「これもこないだの襲撃の時に拝借しておいたんだ。どうだい? 僕本来の能力は」
クリスが自慢げに言う。
「言ったはずだ。それはお前の力じゃない」
「いいや、僕の力だ。何度も言わないでくれよ、アレックス」
「だから、それが気に食わねぇんだよ!」
アレックスがクリスに向かって銃を放つ。しかし、弾は全て炎にかき消されてしまう。
「その程度では、僕には届かないよ。君も知っているだろう?」
クリスの周囲で炎が舞う。
「さぁ、勝負といこう。こちらは十三体、君たちは五人。数の上では君たちが不利だが、卑怯とは言わないだろう? 戦場ではそんな泣き言通じない」
ダメだ。クリスと現れた奇怪虫、同時に相手をするのはこちらが不利すぎる。
奇怪虫自体は数が多いだけで雑魚の群れだ。だが、クリスの炎を躱しながらの戦いとなれば話は別だ。
ならばどうするのが正解か。
「アレックス指揮をとれ」
「お前まさか……」
そのまさかだ。この状況。打てる手は一つ。
「クリスは僕がやる。僕以外の全員で奇怪虫を倒せ」
「いくらお前でも一人は無茶だ」
わかっている。手の内が読めないクリスを一人で相手するのは無謀な賭けかもしれない。
「そう思うなら、さっさと全部倒して加勢しろ」
僕は仲間を信じている。だからこれは賭けだが、無謀な賭けではない。そう信じている。
「はぁ、仕方ねぇやつだな……」
アレックスが頭を掻く。
「死ぬなよ」
「お前こそ、僕を死なせるなよ」
僕らはそう言葉を交わし、戦場を駆けた。




