40話
「クリス・ミラー……」
聞いたことがある名前だ。それにアレックスと面識がある。
思い出した。
前にアレックスが僕に話してくれた親友。その名前がクリスだった。
「クリス。なぜお前がここにいる?」
アレックスが問う。
「知り合いなんですか?」
美崎がに聞く。アレックスは短く「親友だ」と答える。
やはり、僕の記憶は正しかったようだ。
「生きていてこうやって歩いている。ならどこにいようと僕の勝手だろう?」
質問の答えになっていない。僕たちはクリスがここに存在していること自体が疑問なのだ。
こいつはそれをわかっていて答えていない。
「僕はあんたが死んだって聞いたけど?」
僕が言うと、クリスは少し驚いた顔をする。
「あぁ、もしかして君は僕のことをアレックスから聞いていたのかい?」
「そんなことはどうだっていい。問題は死んだはずのあんたがどうして生きているんだってことだ」
目の前に存在する以上、こいつが幽霊などではない間違いない。
しかし生きていたとして、そんなやつがなぜ五年前の血の王のマネゴトなんてしているのか。
「生きていたら何か不都合でもあるのかい? 少なくともアレックス、君は僕が生きてい方が都合がいいだろう? 過去の十字架が一つ、無かったことになるのだから」
質問に答える気がなくなったのか、クリスはのらりくらりとした返答ばかりを続ける。
「どういうことですか?」
美崎が問う。
「クリスは元、俺たちと同じ螺旋の番人のメンバーで俺が殺した。透の時と同じだ。寄生されて手遅れの状態だった」
「だが生きていた。それだけのことさ」
「そんなはずはない、俺がお前の頭を打ち抜いた。その感触はたしかに覚えている!」
アレックスがそう言うとクリスがため息を吐く。
「ヒントは与えたはずだよ、僕は人間に近い奇怪虫。あの時、君に頭を打ち抜かれたことでクリス・ミラーは確かに死んだ。だがそれは寄生した寄生虫の死とイコールではなかった。それだけさ」
「ならお前はクリスじゃない」
「いいや、僕はクリス・ミラーだ。この体は奴の体の細胞が変化したもの。僕の頭には彼の記憶がある。僕の思考は彼のそれと同じだ」
「奇怪虫ごときがふざけるな!」
アレックスが叫ぶ。
「ふざけていないさ」
クリスが左手でポケットから琥珀色の石を取り出す。数はざっと数えて十個程。
「それは……」
間違いない。コハクだ。それも大量の。
「この間君たちの研究所に行った時の戦利品だよ」
「そいつを使って何をしようってんだ? 虫野郎」
アレックスが聞く。
だがクリスはそれを遮るように右手を前に出す。
「残念、話はここまでだ」
クリスの持つコハクが赤く光る。
「戦いの時間だ」
クリスが楽しそうに笑った。




