38話
「遅いぞ、シユウ」
僕が転送室に入ると
「こっちだって色々準備があるんだよ」
「それで状況は?」
「今は大人しいもんだ」
アレックスが画面を指さして言う。
「まるでこっちの到着を待っているみたいだな」
「お前もそう思うか?」
『お前も』ということはアレックスもそう感じているようだ。余計に気味が悪い。
「血の王なんて言っても、所詮はただの奇怪虫なんだろ?」
ジンが話に入ってきて言う。
「お前、報告書を読んでなかったのか?」
「読んだからこそですよ。強い個体ということは納得しますが、それ以上に脅威になりえるとは思えない」
強い個体とわかっていればいくらでも対応できるとでも言いたげな顔だ。
これを頼もしいととるべきか、それとも慢心だととるべきか……
僕個人としては後者と言いたいところだが、現状ジンの言葉を打ち砕くほどの反論材料はない。
僕らの気持ち悪さは得体の知らないものへの恐怖でしかないとい言われれば、その可能性を否定できない。
それでも、そう感じるだけの要因はあるわけだが、考えすぎるのも逆によくないというのもある。特に僕やアレックスは血の王について考えを巡らしすぎていて、感覚が彼らとは離れている。
「でも、現れた以上は、やるしかないでしょ?」
美崎が言う。
実に美崎らしい答えだが、結局それが一番正しいのかもしれない。
相手が現れた以上、考える余地等ない。目の前の敵を殺すことだけに集中すればいい。
「まったく、頼もしい奴らばかりだよ」
僕はそう言ってため息を吐く。
二人の口がニヤリと笑う。
「じゃあ、そういうことで」
ジン達が転送装置に入っていく。それを見て僕も転送装置に向かう。
「悪いほうに転ばないといいがな」
アレックスが僕の耳元で囁く。
「ああ、まったくだ……」
そう言って僕たちも転送装置に入っていく。
果たして鬼が出るか蛇が出るか。




