36話
あの事件から一週間が経った。僕は螺旋の番人にある資料室にいた。
資料室にあるパソコンで一週間前の事件の資料を確認していると僕の後ろで声がした。
「それで、なにかわかったのか?」
アレックスだ。あの事件以来、僕がこの資料室に通っていることはお見通しのようだ。
「いいや、結局何もわからないままだよ」
「結局そのクリスって男に会ってみないとわからないってわけだな」
「そう言うことになるな」
アレックスは簡単に言うがそれは極めて難し。なにせあの事件の後クリスなる占い師が現れることは無くなってしまったからだ。そこかに隠れているのか、
幸いなことは奴が口封じに動かなかったことだ。奴の目的がなんにせよ、自らの情報を少なからず持っている綾音と治樹の二人は早々に消されてもおかしくはなかったはずだ。
彼女らに手を出さないのは必要がないからなのか。それともまだ利用する価値があるのか……ダメだ。やっぱり手掛かりがなさすぎる。
「お前がお手上げってのもなかなか珍しいな」
アレックスがニヤニヤしながら言う。僕が困っているのを面白がているのだろう。
「笑い事じゃなぞ。あんな特異な現象を起こす奴だ」
「そんな奴が本当に存在するならな」
確かに、そう考えてもおかしくはない。彼女らの証言が正しいのかでさえ確実なものではない。
「それより、こいつを見てくれ」
そう言ってアレックスはコートの内ポケットから封筒を差し出す。
「なんだ、これ?」
「見てみればわかる。正直、俺がここに来たのはこっちが本命だ」
そう言われて僕は言われ通りに中を開ける。
中には写真が三枚入っていた。どれもピンボケしていて見ずらいが、それ以外に共通していることが一つあった。
[例の研究所が襲われた時に撮られた写真だそうだ。で、問題は……]
「こいつか……」
写真には血のように赤いコートをまとう男が映っていた。
「そうだ、俺の記憶が正しければ、こいつは5年前に現れた血の王によく似ている。
血の王。その存在は僕らの中でも異質な存在だ、奇怪虫に
こいつには当時僕達も手を焼いた。犠牲者もたくさん出した。
「だが、こいつは5年前に二班が討伐したはずだ」
5年前。まだ鬼島が第一班の班長をしていた頃の話だ。
当時の二班のメンバーはすでに全員殉職していて、当時のことは記録にしか残っていない。それでも討伐されたという事実は変わらない。現にこの5年間こいつが現れることはなかった。
「俺だって信じたくはないさ。だが、現に奴は現れた」
「これ、お前はどこで手に入れた?」
こんな写真、いくらアレックスとは言え簡単に手に入れれはしないはずだ。
「赤羽からだ。最もどういった経緯でこいつが撮れたのかは知らねぇが、当時のいたメンバーに見せて確認させてるんだとよ」
なる程、それなら合点がつく。
「で、これについても僕達が引き受けることになりそうなのか?」
「お察しの通りだよ」
アレックスがため息交じりに言う。
「本当に面倒だ……」
僕は天井を見上げると、そう呟いた。




