30/44
29話
殺意の代償は殺意である。
純粋なる殺しの意識は新たなる復讐心殺意を生む。
それは終わらぬゲームの始まり。
負の連鎖は途切れることを知らず、その規模は、日に日に増していく。
しかし、それが現実に起こることはない。なぜならそうならないために理性があり、法があるから。負の連鎖はそれらが食い止め、現実にはその負の連鎖は拡大することなく収束していく。
けれどそれは所詮そこにあるものを押しとどめているだけに過ぎない。それらは殺意を、根本を、完全に消し去るには至っていない。
そこに虫は寄生する。
そこに虫は寄りつき、潜む。
人を殺させる奇怪な虫は理性が押しとどめていた鎖を崩壊させる。
そして、連鎖は始まる。
殺しが、始まる。復讐が始まる。
全ての人間が理性を忘れ、己の本能に従い、その獣と化したその理性を振るう。
殺せ、殺せ、殺せ。
虫はささやく。
本能のままに、その殺意を、復讐心を燃やし尽くせ。
虫はなおも語り掛ける。
破滅は免れない。殺意の、復讐の連鎖は止まらない。
これは決められた末路。人間という一つのものに設計図にあらかじめ設定された、刻み込まれた、破滅のプログラム。
虫の出現は偶然ではなく、必然だった。
お前は誰だ? 私は殺意だ。 では、あなたは?




