17話
再び目を開くと僕は薄暗い地下牢のような場所にいた。
僕の精神世界。ここには黒人に同調することで入ることができる。
ここに来る理由は一つ。この心の中の檻に閉じ込められたものに会うため。
檻の中に目を向ける。広い檻の中、暗闇の奥そこに尋ね人はいる。
そして見つけた僕と同じ背丈、同じ顔のそれを
それは僕であって僕ではないもの。僕の中の奇怪化細胞。それを具現化した存在。
「やぁ、君から来るなんて珍しいじゃないか」
檻の中のそれが言う。僕は黙ったまま僕と同じ顔の彼を睨む。鏡の中の自分とにらめっこでもしているような気分で正直気味が悪い。
「そんなに睨むことはないだろう? 僕は君自身だ。君が力を貸して欲しいというのなら喜んで貸すさ」
檻の中のそれ薄気味悪い笑顔で笑っている。気色悪い。
「もっとも君が僕を求めれば求めるほど、君を支配できるチャンスがあるわけだけど。その事は忘れたわけじゃないだろう?」
「それぐらい、僕が理解もせずにここに来たと思うのか?」
僕がそう聞き返すと檻の中のそれは「それはないだろうねぇ……」と呟く。
「だったらわかってんだろ。お前は僕に力を貸すが、僕はお前に支配はされない。そうなるようにするだけだ」
「ふぅーん。まぁいいさ。僕も今すぐ君の身体を乗っ取れるなんて思っちゃいないしね」
そう言って檻の中の僕は両手を広げる。
「さぁ、僕の力を使うと言い」
調子の良い奴だ。僕はそれを無視する。
「出てこい、黒人」
僕がそう言うと僕の隣に黒い影が生まる。
影は変化し、人の形をとる。現れたのは髪の長い幼い少年。
彼こそが黒人。僕の刀であり、力。
「呼んだ?」
黒人が笑う。無邪気に、楽しそうに。
「こいつの力を奪う。力を貸してくれ」
「いいの? あれに喰われちゃうかもしれないのよ?」
黒人が聞いてくる。
「そうなればお前も俺も道連れだな」
「あぁ、だからいいのかって聞いてるんですけど?」
「もういい。さっさと始めろ。時間が無い」
もう覚悟は決まっている。今更無駄な議論をする必要はない。
「じゃあ始めるか……どうせ決めたら聞く耳もたないしね」
そう言って黒人は檻の前に立つと折に触れて目を閉じる。
それと同時に檻の周囲から鎖が現れそれの四肢に巻きつき、、動きを封じる。
「あぁ、やっぱりそいつは邪魔だなぁ」
檻の中で鎖によって宙ぶらりんなりながら言う。
「どうも、お褒め頂きありがとう」
黒人が笑う。
「じゃぁ開けるよ。あいつ、どうせ何も出来やしないだろうけど気をつけてね」
すると檻の扉が開く。檻の中をもう一度みる。僕が笑っている。僕の顔をした僕じゃない物がが笑っている。
さぁ、おいで。
そう言って僕を誘ってくる。力に溺れろ。僕に身を任せろ。そう言ってくるのが聞えてくる。けれどその全ての声を薙ぎ払う。
「その程度で俺を誘惑したつもりか?」
僕はそれに問う。
「まさか。身動き出来ないからこれくらいしか出来ないだけさ」
「そうか」
正面に立ち、僕は素手でそれの胸を貫く。真っ黒い血が僕に向かって飛び散ってきた。
「ガハッ」
声を上げ、始めて苦しそうな顔をしたそれを見て僕はわずかに笑っていた。




