13話
僕が作戦ルームについた頃にはすでに全員が揃っていた。先日アレックスと話した作戦ルームよりも広い部屋に二~四班の班長、そして三柴長官と湊補佐官。それに赤羽まで席に座っていた。
部屋に入って直ぐに指定された席に座る。部屋の中の雰囲気を見ればこの任務の緊急性と重要性が直ぐに解った。
「全員揃ったな。それでは今回の任務と作戦について説明する」
三柴が立ち上がり話始める。
「湊君、映像を」
三柴がそう言うとスクリーンに映像が映し出される。
巨大な翼に鋭い爪。竜にも似たその姿はをした化け物がスクリーンに映し出されていた。
ここまでの巨体となれば、最早並の奇怪虫などかすむレベルだ。
「君たちならばこれがなにか解るはずだ。寄生を五回以上行ったとされる奇怪虫。所謂、老成体と呼ばれる個体だ」
「しかし、いかに老成体とはいえ四班合同で行うのは過剰だと思いますが、となるとこの老成体には特別な能力ないし何かがあると考えてよろしいのでしょうかな?」
そう質問したのは四班の班長だ。
漆葉慎。この螺旋の番人でアレックスに次ぐ年長者だ。漆葉は伸びた髭を触りながら興味深そうな顔で長官を見る。
たしかに四班合同でというのはやり過ぎだ。老成体には二班合同で行うのが通例だ。ならば漆葉指摘する通り、何か理由があると考えるのが妥当だ。
「いいや、この個体に特筆すべきことは無い。そもそも老成体自体が特別ではあるのだが、この個体自体は今までの老成体とそう変わりはしない。通例通り、二班合同で行えば問題ないだろう。しかし残念ながらそうもいかないのだよ」
「なぜです?」
「この個体とは別に他にもう三体の奇怪虫が同時に出現した。それもそれぞれ別の場所に。個体としてもさほど強い個体ではないものの今は状況が悪い。我々はこの四匹を同時に排除しなればならない」
「どこか一班が単独で老成体を倒さなければいけないということですかな?」
三柴は否定することなく、首を縦に振る。
そこで、会議室がざわつき始める。これは極めてレアケースだ。過去、複数の奇怪虫が現れた例はあるが老成体まで同時に出現した例と言えばその例は。僕が知る限り初めてだ。
しかも、本来二班で討伐するはずの老生体をたった一班で行わなければならないという。
「そうだ。そしてそれは第一班にお願いする」
やはりか。僕は心の中で思う。
単独での老生体の討伐。こんなふざけた任務を与えれれるのは第一班だということは容易に想像できた。
もっとも正確には一班に任せるのではなく僕に任せるのだが……
「気に入らないな」
そう小さく悪態をついたのは第二班班長、鬼島沙也加だ。長官の視線が鬼島に向けられる。その鋭い眼光を浴びても鬼島はびくともしない。流石だと思う。
「なにか言いたい事があるならはっきり言いたまえ、鬼島班長」
「気に入らないと言ったんだよ。お前のやり口は癇に障る。そもそもこの任務一人にかかる負担がデカすぎる」
その一人と言うのが僕だということはこの会議に参加しているもの全員がわかっていた。
「僕なら問題ないですよ」
僕は笑ってそういう。鬼島は螺旋の番人に入ってからの僕の教育係で僕は彼女からこの世界を生きる術を教わった。それ以外にもたくさん。だからこそ僕には彼女の心情もよくわかっている。
「あの……私も鬼島さんに同意見です。危険です。ただでさえ一班は先日一名失っている状態なんです。そんな状態で老成体と戦うなんて」
第三班の班長、天童結衣。僕と同い年のメガネをかけたかわいらしい少女だ。
内気な性格の彼女は小さく手を上げて言う。
その姿はとてもじゃないが螺旋の番人で班長を任せられている人間には見えない。
だが、その実力は折り紙付きだ。班長を任せられるだけの力は十分に持っている。
「それに関しても問題は無い。シユウ班長にはあれを使ってもらう」
「ほら見たことか。結局思った通りじゃないか」
鬼島がいらついたように言う。彼女は僕の力について一番よく知っている。だからこそその力を使わせることを嫌っているのだ。
「それ以外に、この自体を乗り切る方法があるというかね?」
三柴と鬼島が鋭い眼光でにらみ合う。
「もういいよ。僕は構わない」
そんな態度をいくらとったところで三柴が作戦を変えることはない。どうせ、逃げる道は残っちゃいない。ならやることは決まっている。
「それでいいのか?」
鬼島は僕の顔を真っ直ぐに見つめる。僕はそれに黙って頷く。
「まったく、お前は……」
鬼島はやれやれと頭を掻く。
「決定だな。各自、作戦は追って説明する。全班長は班員全員を招集後、任務にあたれ」
三柴の言葉で会議が終わる。各自、解散していく。すると鬼島が僕に近づいてくる。
「お前はもう少しリスクがあることを理解しろ。あれは今日みたいに簡単に承諾していいしろものじゃない」
「だってしょうがないだろ?」
僕はそう言って見せる。それを見てまた鬼島は呆れたような顔をするとズイッと顔を僕に近づける。
「必ず生き残れ。それでなければあの日お前を助けてやった意味がない」
そう僕の耳元にささやいて去っていった。
「わかってるよ……」
一人になった会議室で僕は小さく呟いた。




