スマレースト大陸編 中世と現代の齟齬 軍事問題
師走になりました
早すぎるぞ
立派な鎧を着て剣や槍を持ち、隊列を組んで戦友と共に一糸乱れず進み、正々堂々敵と戦う。
中でも優れた者は、竜騎兵として飛竜を操り空を駆ける。
これが、スマレースト大陸の戦争観である。
海戦は常に試行錯誤が繰り返されている事から、それぞれの戦術毎に確立されたものがありながら確固たるイメージが存在しないが、陸戦と空戦は童話にすら通用するお約束展開と言う名の強固なイメージが存在している。
そしてそれこそが、良く言えば保守的、悪く言えば害悪となって新たな形態の導入を妨害する要因となってしまった。
彼等の言う所の<先進的な退化>は、彼等の言う所の<誇り高き懐古>によって何度でも駆逐され、やがては廃れて歴史のほんの一部で語られるだけの存在でしか無く、その一方で誇り高き懐古は人類が存続する限り未来永劫に渡って引き継がれる。
感情論にもならない物語らしきその理論は、暁帝国を発祥とする変革に対する反発として誕生した。
経済活動に端を発する革命とも言える急激な改革はとうとう軍事分野にも及び、これまでとは比較にならない大きな反発を引き起こした。
軍隊と言う組織は、直接的な命のやり取りを行うのみならず、国家の存亡を背負っている。
その性格上、保守に凝り固まる傾向が非常に強く、実績ある戦術から中々抜け出せない。
そしてそのまま時間が経過すると、名誉や誇りと言った一般受けし易い要素も加わり、更にはプロパガンダ的役割が加わる事で大勢が憧れを抱く存在となり、遂には伝統と言う名の引き継がなければならない義務までもが発生する。
それがいつしか軍人すらも呑み込み、自己陶酔とも言える現象まで引き起こす。
挙げ句の果てには、目的と手段を履き違えた無能が蔓延る事もある。
戦争に於ける勝利とは、戦争目的を達成したかどうかで決まる。
だが、戦争に対する評価は二度に渡って行われる。
一度目は、その目的に於いて
二度目は、その手段に於いて
・・・ ・・・ ・・・
ジンマニー王国 北東部
人里から離れ、小規模な街道が通るのみの海岸線。
背の低い草がポツポツと見えるものの、大半は土や岩が露出している荒れ地となっている。
農耕にも適さず、交易にも使えない最果てとも言えるこの地は、長年に渡って放置同然の状態であった。
だが、その様な過酷な環境が評価され、軍の演習場として活用されている。
そしてその広大さから、全く新しい軍勢を動かすのに不自由しない事が、大陸同盟関係者をこの場所へ集める最大の要因となった。
バゴォォォォォォォォォ・・・・
雷鳴にも似た凄まじい音が響き渡る。
『続きまして、戦闘ヘリ部隊による機銃掃射並びにロケット弾の発射を御覧戴きます。』
バタタタタタタタタタタ
アナウンスが流れると同時に、空気を叩く音が聞こえて来る。
待機している群衆の上空を通過し、三機の編隊が空中で止まる。
シュボッ シュボッ シュボッ シュボッ
ロケット弾が連続して撃ち出され、遠方の標的を粉砕する。
爆煙が上がるとどよめきが巻き起こり、そのどよめきを爆音が掻き消す。
ドガガガガガガガガ
続けて機関砲の射撃が行われ、もうもうと土煙が上がる。
一目で盾や鎧が意味を成さないと理解するしか無かった。
何をしているのかと言えば、暁帝国陸軍の公開演習が軍人を中心とした各国の関係者を招待してこの地で開催されているのである。
同盟国として連携して行く以上、互いの理解を深める必要がある。
その後も様々な演目が披露されて行くが、披露される側は終始圧倒されっ放しであった。
ただし、要職に就いている者達は戦術的考察耽ると同時に、その見た目の異質さに疑問を抱いた。
『最後に、歩兵部隊による実演を行います』
アナウンスが流れ、装甲車と輸送トラックが入場する。
停車すると次々と降車し、迅速に戦闘準備を終える。
「何をしている?」
「隊列も組まずにバラバラに動いて、何がしたいのだ?」
「見ろ、うつ伏せになりおったぞ!」
「そんなみっともない真似を・・・彼等は本当に軍人か?」
それまでとは異なるざわめきが支配する。
それまでの圧倒的な力に対する驚愕から打って変わり、軽蔑を含む物へと変化していた。
「ウーム・・・こうして見ると、あの軍装の醜さが際立つな。」
何より、迷彩服に対する拒否反応が大きい。
つい最近まで暁帝国との関係に反発していた者は元より、それ以外の大多数も侮蔑の視線を向ける。
彼等の常識からすれば、身に付ける色を工夫して風景に溶け込み潜む行為は、深い森林等の自然の中で原始的な生活を続けている狩猟民俗のやる事と言う認識がある。
その認識から、戦闘と狩猟を一緒くたにしている様に映ったのである。
迷彩柄なのは各種戦闘車輌も同様であるが、理解出来ない物体であるが為にその様な細かな所まで意識が及ばず、逆に理解の範疇に留まっている歩兵を見て急に気になり出していた。
タタタタタタタタタタタタタ
銃撃が始まり、標的として置かれている鎧がバラバラになる。
更に、無反動砲も実演される。
歩兵個人が持てるとは思えない火力を披露されるも、それまでよりも地味であり、真剣に旧来の装備と比較している者を除いて受けた衝撃は限定的であった。
暫く後、
演習が終了し、一つに纏まっていた群衆は分裂を始めた。
「これは捨て置けんぞ!我が軍が取り残される前に手を打たねば!」
「貴軍は、どの様な経緯でこの様な形態に至ったので?」
「何とか購入出来ないものでしょうか!?」
「アレは邪道だ。あんなモノを軍とは呼べん!」
改革を志す者 現代軍の成立の背景に興味を抱く者 武器の売却を打診する者 目撃した物に大きく反発する者
様々な反応が寄せては返す。
いずれにせよ、それまでの常識とはかけ離れた光景を立て続けに見せ付けられた事で情報過多となり、各国政府中枢へ伝わるには暫くの時間を要した。
・・・ ・・・ ・・・
各国軍が揺れているのと時を同じく、大陸同盟そのものも揺れに揺れていた。
人司協定を根拠とする貴族階級の捕縛が、旧来の国家制度に対する巨大な動揺を与えていた。
また、暁帝国から派遣された民間人の推挙、爵位の授与等による抜け駆けとも言える強引な行為が目立ち、戦乱に発展しないまでも、険悪な空気が形成されつつあった。
そうなってしまえば、妥協を知らない一部の者が早まった行動を始める。
ハーレンス王国 レンヌ
交通の要衝であるこの街は、城塞都市となっている。
古くより国の南北を繋げる役割を担っており、それ故に特殊な立ち位置となっている。
周辺地域は他の貴族家の領地が広がっている中に於いて何処にも属しておらず、国から任命された人物が市長となって運営を行う直轄地である。
その重要性から必然的に暁帝国による手が早くから入る事となり、将来の発展が約束されている。
尤も、城壁が発展の障害となっており、一部施設の建て直しを除くと、外に建設する形で計画が進んでいる。
しかし、此処で問題が発生した。
中央庁舎
「冗談では無い!そんな無責任極まり無い主張は看過出来ん!」
応接室で、怒鳴り声が響き渡る。
「そう言われましても、これ以上の拡張の余地がありません。」
「ならば、更に外側に城壁を築き直せば良いでは無いか!」
「そんな余裕がありますか?面積を確保しようとすれば、総延長がより長くなってコストも跳ね上がりますよ。」
「街の安全には代えられん!何と言われ」
「第一、発展すればまた行き詰まります!その度に建て直す気ですか!?」
言い合いをしているのは、レンヌの再開発の担当となった 坂本 二郎 と、レンヌ市長 ゴドム である。
重要地点故に市長に任命される人物は、防衛上の観点から軍事に明るい人物が選出される傾向にあり、ゴドムも軍人としての経歴を持つ。
そしてそのゴドムが問題としているのが、再開発の方針である。
坂本から提示された案は、
1 城塞内の再開発を最小限に留め、代わりに城壁の外を開発する
2 城壁を撤去し、全面的な再開発を実施する
この二つであった。
対するゴドムは、1については「レンヌに関わる施設は全てを守護する義務がある為、一ブロック程度ならともかく、大々的な開発は同意出来ない」とし、2に至っては「論外!議論する意味も無い!」と吐き捨てた。
代案として提示されたのが、
現在の城壁を撤去する代わりに、より外側に新たな城壁を建て直し、敷地を確保する
である。
これには、坂本の方が難色を示した。
城塞都市としての機能を優先する以上、拡張性が極めて限られる状況は一切変わらず、遠からず同じ問答を繰り返すのは目に見えている。
加えて、より外側へ建設するとなれば城壁の全長そのものが爆発的に延びる事となり、必要な手間も資材も予算も激増する。
更に、拡がった城壁の維持により多くの人手と磐石な連絡体制を要する。
とてもでは無いが、割に合わない。
また、手を加えているのは街一つでは無く、大陸全土なのである。
レンヌのみを特別視する訳にも行かない。
だが、それでもゴドムは引き下がらない。
「貴殿は、防御の難しさを理解出来ない様だ。障害の存在しない拠点を守り抜くなど、無茶と言うものだ!」
(軍事的な話しかしてないじゃないか!よくこれで市長が務まるな・・・)
坂本の懸念は当たっていた。
ゴドムに限らず、歴代の市長には何人も街の運営に関しては素人同然の人物が赴任した事例が存在する。
それでもどうにかなっていたのは、市長を補佐する要因がしっかりしていた事が大きい。
正確には、地元出身の各種部門の責任者と言った形であり、市民に対する影響力の大きさから市長も無視出来ない。
しかし、今回に限ってはそのベテラン達もあまり強く言えずにいる。
防衛上の不安も然る事ながら、何より昨今の改革に過去の知識や経験が役に立っていない事が大きい。
発展は約束されているとは言え、街の在り方を根本的に変える様な真似をしてまでやるべきなのか?
前例の無い事態であるだけに、断言しかねていた。
一方、ゴドムの防衛上の主張が正しいのは間違い無く、反論も説得も思う様に出来ずにいた。
そのまま議論は平行線が続き、準備を進めつつもいつになれば始められるのか分からない。
「ですから、このままでは無理があるのです。」
坂本は、何度目か分からない意見を飛ばす。
「ふむ、そこまで言うのなら仕方が無い。」
「は?」
目を見開いて思わず聞き返す。
「そこまで言うのなら仕方が無いと言ったのだが?」
(いきなりどうしたんだ?)
あまりにも急な態度の変容に戸惑う坂本。
「どう言う心境の変化で?」
「ん、何を言っているのだ?何も変わっておらんぞ。」
意味不明な発言に、混乱の渦中へ落とされる。
「え、では」
「貴様を破壊工作を企む容疑者として即刻拘束する!」
「な・・・!」
指を差してまで自身を指名され、言葉を失う。
「連れて行け!」
傍に控えていた付き人は、若干困惑しつつも上司の命令に従った。
暫く後、
「これで良かったのだろう?」
坂本が連行されたのを見届けた後、ゴドムは別室で待機していた男と向き合う。
「ええ勿論。此方としましても好都合です。」
向き合っている男は、何とも掴み所の無い話し方をする。
「貴様等と一緒にするな、金の亡者が!」
ゴドムは心底軽蔑した視線を投げ、鍛え上げられた体を大きくする。
対する男は、真に受ける事も無く肩を竦める。
「心外ですね。確かに我々は多くの金を求めていますが、それは手段に過ぎません。より良い体制、より良い未来を掴む為には、多額の予算が必要なのです。それは、軍でも同じ事でしょう?」
「だから一緒にするな。貴様等の低俗な活動と、我等の崇高な任務とでは得られる名誉に天と地程の差があるのだ!今回は利害が一致したに過ぎん!」
「では貴方は、その名誉を守る為に動けば宜しいでしょう。此方としましても此処での用は済みましたので、これにて失礼します。」
もう興味が失せたとでも言う様に、男は一瞥もせずに立ち去った。
「あんな輩が徘徊しているのも腹立たしいが、まずは目の前の問題からだ。我々は、誇り高き武人なのだ!」
・・・ ・・・ ・・・
暁帝国 情報省
此処数日、職員が駆け回る状態が続いている情報省。
「ハーレンス王国にて、邦人の不自然な動きを確認。」
「対外情報局へ通達、事実関係の確認を急げ。」
その原因はスマレースト大陸にあった。
「これで7件目だ・・・」
立て続けに発生する邦人を巻き込んだ騒動。
それは、一部の現地貴族が早まって起こした監禁事件である。
IDを利用した監視網により、不審な動きは直ちに把握され、対外情報局によって詳細を調査し、裏付けが取れ次第外務省へ働き掛け、同時に国防省へ情報提供を行う。
そうして判明した事実を元に、軍事行動を視野に入れた判断を行う。
事態が判明してから待機している近藤の元に、次々と報告が入る。
「7件中3件は、懐柔を狙っての軟禁状態である事が判明しました。手荒な扱いは受けていませんが、首を縦に振るまで逃がさない構えです。」
「2件は投獄状態にある事が判りました。残りは依然調査中です。」
恐れていた事態が現実となり、背筋が寒くなる。
「投獄に至った理由は?」
「直接聞き出すのが早いかと。」
「そうですねぇ。」
実行犯の思惑などに興味は無い。
重要なのは、邦人が危険に晒されていると言う事実のみ。
「外務省と国防省の方は?」
「既に動いています。」
「万が一にも情報の出し惜しみなどが無い様にしなさい。」
慌ただしさを増す情報省だが、それは大陸同盟内も同様であった。
・・・ ・・・ ・・・
スマレースト各国首脳部は大騒ぎであった。
いくつもの都市、領地との連絡が途絶えたかと思うと、次に暁帝国から邦人の扱いに関する抗議が寄せられたのである。
その詳細を聞くと、連絡の途絶えた場所と一致している事が判明し、尚且つ暁帝国へあまり良い感情を持たない有力者がいる場所が多い事も併せて確認された。
証拠となる情報も提示され、担当者は顔を真っ青にした。
直ちに各国は首脳クラスを派遣し、今後の対策を検討する事となった。
ビンルギー公国
大臣であるレノンの活動もあり、逸早く大部分の不審な動きを察知出来たビンルギー公国であるが、問題が発生していた。
それは、一連の動きの首謀者と見られるゲイル侯爵の拘束に関してである。
暁帝国大使館
「拘束は、夜間に行うべきでしょう。」
「当然だ」
話し合っているのは、駐在している暁帝軍の一人と、公国側の騎士である。
リスクを避ける為、一人ずつの出席となっている。
「察知されない為にも、少数精鋭によって行う必要があります。」
「心得ている」
特に異存も無い為、軽い相槌だけで次へ移る。
「後の調査で判明した事ですが、ルージュにはゲイル侯爵と手を結んでいる犯罪組織が存在します。」
「何と!」
物盗り 横流し 人拐い
判明しているだけでも、外道と評すべき凶悪な組織である。
「此処で問題となるのが、侯爵の拘束を察知されて脱出を許す可能性と、アジトに捕らえられている民間人です。」
「同時に拘束に動いてはどうか?」
「そのつもりです。」
問題は此処からであった。
「逃亡のリスクを最小限に抑える為には、遅くとも10分以内に全てを終わらせる必要があるでしょう。」
「なにィ!?」
「勿論、侯爵と犯罪組織の両方を同時に押さえます。」
「そんな無茶な!貴族の屋敷は10分で制圧出来る規模では無い!犯罪組織に至っては、拠点の内部構造が一切不明なのだぞ!」
至極当然の反応だが、更に話を進める。
「また、民間人の犠牲は一切許容出来ません。」
「何を言っているのだ何を!?貴殿は、自分の言っている意味が理解出来ておらんのか!?」
「声を抑えて下さい。こんな所で察知されたら目も当てられませんよ。」
指摘されて無理矢理動きを止めるが、主張は変わらない。
「何にせよ、これは妄想の類だ。こんなモノは作戦とは呼べん。」
「実現可能な範疇でお話しているので、妄想ではありませんよ。」
「・・・・・・は?」
思わず聞き返す。
「これは妄想では無く、実現可能な範疇です。」
一瞬固まるも、すぐに苦笑を浮かべて否定する。
「いやいやいやいや、いくら何でも冗談が過ぎる。ただでさえ狭い屋内を制圧せねばならんのだ。野戦で土地を占領するのとは訳が違うのだぞ?」
「繰り返しになりますが、実現可能な範疇です。」
方眉が吊り上がる。
「ほう・・・では、その実力をお見せして頂こう。我々では、とても実現出来ないのでな。」
出来ないなどと言いたくは無かったが、出来もしない事を大見得を切って請け負う様な馬鹿では無い為、どう考えても不可能な事を出来ると言い張られるのは気分の良い事では無い。
(強大な力を保有していても、所詮は力に溺れた愚か者の集まりか・・・過信は身を滅ぼすだけだと言うに。)
多少の時間を置いて、方々で同様の擦り合わせが行われたが、何処も似た様な展開となった。
無茶苦茶な作戦を実現可能と言い張り、輪を乱す愚か者
暁帝国に対する視線が侮蔑すらも帯び始めていた。
・・・ ・・・ ・・・
サイズ共和国
爵位の授与を拒否した斎藤は、現状に困り果てていた。
「ささ、遠慮は無用だ。」
「は、はぁ」
彼の目の前にいるのは、議事堂で爵位の授与を直接担当した議員のロートである。
ロートは斎藤へ酌をする。
此処数日、同じ事の繰り返しであった。
例の議事堂での顛末での後、何事も無く工事を進めていた斎藤であるが、それから大して経たない内にロートの元から派遣された使者がやって来た。
曰く、食事に誘いたいとの事であった。
あからさまな懐柔であるのは間違い無いが、断る口実も見付からない為に応じる事となった。
その後、何日も宿泊しつつの宴会となっているのである。
「斎藤殿、私はこの窓から見える景色が嬉しくて仕方が無いのだよ。」
酒が回っているのか、若干呂律が怪しい。
「あの塔が、日に日に高さを増して行くのだ。実に頼もしい限りだ。」
ロート邸からは、建設中の大陸同盟本部がハッキリと見える。
「ハハハ、塔ですか。」
「おっと、貴国ではビルと言うのだったな。全く以て素晴らしい!」
「有り難う御座います」
(何回目だよ、この話題)
斎藤は、内心うんざりする。
そして、意を決して立ち上がる。
「しかし、現場の責任者である私がこれ以上開ける訳には行きません。そろそろお暇を」
「いやいや斎藤殿、お待ちを。」
ロートのみならず、周囲に控える使用人も止めに入る。
「もう暫くこの年寄りに付き合ってはくれまいか?我が人生でこれ程に刺激的な経験はした事が無いのだ。今暫く、時間を頂きたい。」
(クッ・・・!)
手荒な扱いを受けている訳では無い。
だが、事実上隔離されている状態にある。
ただの労働者である斎藤にはこの状況を切り抜ける術は無く、無為に時間ばかりが過ぎるのであった。
・・・ ・・・ ・・・
『定時連絡 第一目標の動きを報せ』
『ルージュ、レンヌ、バルノ、いずれも動き無し』
『第二目標の動きを報せ』
『アルフレッド伯領にて、不審な動きあり 領内に残留する一族が動いている模様』
『了解、引き続き監視を続行せよ 間も無く時間だ』
『a小隊、b小隊、c小隊、目標に接近』
『特殊作戦連隊の初陣だ 万が一は許されん』
飛ばして来た話が多すぎて参る今日この頃