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2、ペット

2、ペット



でも、待って?これ、どうやって帰るの?兄を見つけても、帰れなきゃ意味無くない?まさか、兄も帰れなくなってるとか!?


と、とにかく、早く兄を見つけなきゃ!


ゲームオーバーってどうなるんだろう?死んだら帰れるとか?いや、でももし帰れなかったら?そのまま死ぬ?それは困る!!


そんな不安を抱いて陸地に着くと、小動物が木の穴にはまって動けずにいた。


「莉奈~!あれ、助けてあげよう!」

「待って?敵かもしれない!もう少し様子を見よう」


智樹を制してしばらく様子を見ると、その小動物はジタバタしながら「うーん!抜けない」と言っていた。


「うわっ!この小動物喋る!」


何となく、私の中の五感が働いた。


喋るものは警戒すべし!!


「この動物、青くはないね~」


木の穴から頭を出して、何とも可愛らしくもがくその小動物に智樹は釘付けだった。その小動物は真っ白でふわふわな毛に長いしっぽ。しっぽの先にポンポンがついていた。


「でも、可哀想だよ?」

「だって、ここで手を出してドいきなりゲームオーバーって事もあり得るでしょ?」

「そんな意地悪なゲームある?」


すると、喋る小動物が言った。


「いきなり出鼻挫くとかそんなのあり得えねぇだろ!早く助けろ!ストーリーが進まねーだろうが!!」


おーおー、とうとう本性を現して来やがったな!!


「よし、無視しよう!智樹、あっちの方へ行ってみよう!!」


私は智樹を連れて、他の道を進んだ。すると、また木の穴にはまった小動物のいる場所に辿り着いた。


「なんで!?」


もう一度!!


「今度はこっち!」

「えー!!やだよ~!」


嫌がる智樹を連れて、何度も何度も別の道を選んで移動した。


「なんで?もう一丁!!」


「なんで?ワンモア!!」


「なんで?再度、再び!!」


それでも、何度も何度も同じ場所に出た。何度道を変えても、スタートの位置に戻って来る。


「なんでーーーーーー!?」


トト◯か!!


小動物が私達を見て叫んだ。


「いい加減にしろーーーーーー!!」


疲れた智樹はぐったりしながら言った。


「もういいよ、莉奈、いい加減にあれ助けようよ」


あれがプログラムされた筋書きか…………でもシステムに屈服したくない!!


………………と、思っていたら、智樹が少し、ほんの少し小動物に近づいた瞬間、小動物が穴から抜け出し私達の前に飛び出して来た。


「ふう~助かりました!助けてくれてありがとうございます!」

「いや、何もしてないから」


もはやゴリ押しで話を進めて来た。


「お礼にお供としてあなたの旅について行きます!」


小動物はその長い耳を整えながら無駄にくるっとまわって見せた。ネズミ?ウサギ?なんかわからないけど、やたらと愛くるしいキャラだった。


くそっ可愛いなっ!!でもここは我慢だ!!


「いや、別にいいから」

「いえいえ、ついて行きます!」

「間に合ってるから」


その小動物と私は「いえいえそうは言わず」「いやいやいいから」という攻防を繰り返した。そのうち、智樹が飽きて木の根元で寝てしまった。


とうとう小動物は泣き始めた。


「どうしてそこまで僕の事を拒否するんですか!?そんなに僕の事が気に入りませんか!?こんなに有能でこんなに愛らしいのに!!」


あ、それ自分で言っちゃうんだ……。


「悪いけど、連れて行けない」

「だからどうして!?」

「あーそれね、小動物は情が移るからダメ。私達はここにゲームをしに来たんじゃないの。兄を探しに来たんだから」


そう、ここには長くはいられない。早く兄を見つけて帰らないと、お母さんが心配する。


「それにだよ?もし、智樹に連れて帰りたいとか言われてみなよ。うちのマンションペット禁止なんだからね?管理人のババアが結構厳しいんだから」

「そうゆうご事情が………………」


すると、小動物は大きな体のドラゴンのような姿になった。


「それならこの姿ならよろしいですか?ご主人様」

「いや、デカイ。デカ過ぎてウザイ」


竜はそのデカい図体で泣き出した。


「うぉおおおお!!じゃあ、僕はどうすればいいんですか?これじゃ全然ストーリー進められないし!!スタートして秒でクビってどうゆう事!?もうやってらんねぇ!」

「まぁまぁ、君には合わない会社だと思ってさ、きれいさっぱり諦めなよ」

「それアンタが言う?」


竜はため息をつくと、小動物の姿に戻って気を取り直した。


「いいえ!人探しなら僕はうってつけです!僕を雇っておいて損はありません!あなた方のお兄様は僕がすぐに見つけてみせましょう!!」


そう言うと、小動物は無理やりストーリーを進めようとした。


「私はここ、水の都『プルス』のガイドをしているエメラルドという者です!」


あ、勝手に名乗りだした。


「智樹~!起きろ~!」

「…………って全然聞いてない!!」

「いや、せっかくだから智樹にも聞かせてやろうかと思って」


智樹は起きると目をこすりながら、小動物の説明を聞いた。


「ここは水の都『プルス』水路が静脈のように張り巡らされている事からついた名だと言われています」


すると、木々が開かれ、少し歩くと、遠くに街が見えて来た。


「何?さっきまで無かったよね?そうゆう設定?」

「まあ、普通はそんなに時間かけないんですけどね。さぁ、まずはそのダサい格好を変えましょう!」


ダサい?Tシャツにスエットだった。そりゃ、部屋着だからね。智樹に至っては体操着。違和感しかない。


「まずは自宅のクローゼットを見て見ましょう!」

「自宅?どこそこ?」

「冒険者に与えられる、拠点となる場所です」


小動物は街の手前にある、森の中の小さな一軒家に入って行った。洋風の小さな家で、土足で入る家にどうも落ち着かなかった。


「ここがあなた達の家です」

「わぁ~!一軒家だ~!」


智樹は嬉しそうに家の中を走り回っていた。


「階段あるよ~!」


うちはマンションだから家の中に階段はない。階段に喜ぶなんてやっぱり智樹ってばお子様。


「それでは、プルスの衣装に着替えてみましよう!」


クローゼットの中には三種類ほどの服が入っていた。どれもダサかった。どれもダサいなら……よりステータスの上がる物をと思って着たら…………


「ねーちゃんエロっ!」


露出度が異様に高かった。


「仕方がないでしょ!?私のレベルでつけられる一番強い装備はこれだったんだもん!


こんなに露出度が高くて、実際は防御力なんか皆無に決まってるのに、そこはファンタジー…………なんつー男ウケでしかない衣装……。


でも、別にいい。別に知り合いもいないし、部屋着よりマシだし、寒くもないし。色々気にしない事にした。


「あ、あんたはこれね!」


智樹にも着替えさせた。


「なんで僕はこんな格好なんだよ!」

「仕方ないでしょ?装備できるのそれだけだったんだから」


智樹、モフモフ可愛い~!


智樹のキャラクターは元々の装備が一種類しか無く、それが、モフモフのウサギの着ぐるみだった。


耳を2本持つと、全身が無理なくぶら下がるスグレ物だった。


「やめろよ~!耳持つなよ~!!」

「因みに、僕の衣装も変えられます!変えてみます?」

「別にいいんじゃない?」


それでも、智樹が変えてみようと言うので、着替えさせた。しかし…………小動物の衣装をを変えても、ステータスは何も変わらない。


「あ、じゃ、名前!名前も変えられます!変えてみますか?」

「名前?何でも良くない?」


実は小動物の名前を覚えてない。その事が小動物にバレていた。


「あの、僕の名前覚えてます?」

「え?あ、うん、まぁ…………あの、あれだよね?ミッ○ィーだっけ?あ、マ○メロ!あ、あれだ!ピーター!!」

「それリアルなやつ!ガチなウサギ!失礼な!僕ウサギじゃないのに!!」


寝ていた智樹はこの小動物の名前を知らない。


「じゃあ、君はなんて名前なの?」


智樹がそう優しく聞くと、小動物は愛らしくくるりと回って見せた。


「改めまして、僕はエメラルドです!」

「僕は智樹。よろしく!」


智樹とエメラルドは握手をしていた。


「貴方はお姉様と違って、礼儀正しき良い子ですね」

「うるさいなぁ」


そんな二人のやり取りを横目に、私は靴やアクセサリーを選ぶのに忙しかった。


案の定、智樹はペットができたと喜んでいた。ペットて……


「あだ名は?エメかな?ルドかな?」

「それ、どこを取るかの話?」


智樹が少し考えて言った。


「じゃあ、ラル!」

「そんな半端な所取るの?」

「それが外国っぽくて良い!」


まぁ、仕方ないか……。むしろゲームの中だからペットが飼える。それも1つのメリットだ。


「ラル~僕が抱っこしてあげるよ」

「ちょっ、小動物扱いしてんじゃねーぞ?」


そう言ってはいても、ラルは素直に智樹に抱かれて毛を撫でられて気持ち良さそうにしていた。なんだかんだ言って甘えてるじゃんこの小動物……。



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