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三話

私が家で留守番していると友人の蓉子がやってきた。


玄関でお出迎えすると蓉子はいきなりごめんと謝ってくる。


「風子。本当にごめん。実はね、風子ん家に行くって言ったら。彼氏も付いてきちゃって」


「えっと。それはいいよ。でもどうして彼氏さんの他にもいるの?」


私が言うと蓉子の隣にいた男の子がごめんと謝ってきた。この男の子は蓉子の彼氏で鳥野君という。ちなみに年齢は蓉子や私と同じ高校二年生だ。


「本当にごめん。藤野さん家行くって聞いて。蓉子に無理言ったんだ。あ、右側にいるのは俺の双子の弟で(しゅう)。付いて行くって聞かなくて」


「……はあ。あ、柊君っていうんだ。初めまして。小野蓉子さんの友人で藤野風子といいます」


私がお辞儀しながら言うと柊さんも同じようにした。頭を上げると柊君はなかなかのイケメンだった。というか、誰かに似てる……?


「……薫の君?」


つい、その名を言ってしまう。それくらい、柊君は薫の君に顔立ちが似ている。切れ長の二重の漆黒の瞳、すっと通った鼻筋。すっきりとした顔の輪郭や薄い唇が薫の君に見えた。よく見ると余計にだ。


「……あの。風子。薫の君って?」


怪訝な表情で蓉子が訊いてくる。私は我に返った。


「何でもない。ただの独り言だよ」


「そう。ならいいんだけど」


慌ててごまかすと蓉子は興味をなくしたらしく鳥野君ーー彼氏の方に向いた。


「……優君。風子に手を出したら殴るよ」


「わかってるって。藤野さんには手を出さねえから」


蓉子は鳥野君をじろりと睨みつけた。それを柊君は呆れたように見ている。


「……お前ら。藤野さんの前で何やってるんだよ。いちゃつくのは外でやれ」


「何だよ。藤野さん家に行きたいって言い出したのは柊だろうが」


「な。バラすなよ。俺はただ、兄貴の彼女の友達っていうから気になっただけで」


鳥野君と柊君が口喧嘩を始めた。蓉子はやれやれと額に手を当てる。


「……優君。柊君も。ここ、よそのお家だってわかってる?」


「あ。そうだった。ごめん。小野さん」


蓉子に言われて先に謝ったのは柊君だった。兄の鳥野君もバツの悪そうな顔をしている。


「……悪かったよ。柊も蓉子も」


「わかったんならいいよ。さ、玄関で立ちっぱなしも何だし。上がろうよ」


「うん。三人とも上がって。今からお茶でも入れるね」


「そうして。あたしはコーヒーがいいな」


「俺もコーヒーがいいな。柊はどうする?」


最後に訊かれた柊君はちょっと考える素振りをした。そしてこう答えた。


「……俺は緑茶でいいよ」


「……柊。お前、相変わらずセレクトする物が渋いな」


「ほっといてくれ」


柊君はぷいとそっぽを向いた。ちょっとぶっきらぼうな所があるらしい。


「……わかった。蓉子と鳥野君がコーヒーで。柊君は緑茶だね」


「うん。お願い」


私は蓉子の言葉を聞いて頷いた。キッチンに向かう。まず、マグカップと湯飲みを取り出す。キッチン台に置くとマグカップにインスタントコーヒーの粉を入れる。次に蓉子の分は砂糖とミルキーの粉を入れた。鳥野君の方はブラックだ。湯飲みにも緑茶のティーバッグを入れる。

マグカップと湯飲みにそれぞれお湯を注ぐ。マグカップの方はスプーンで混ぜて緑茶はしばし待つ。

一分程したらお盆を出してきてマグカップ二つと湯飲み一つをのせた。キッチンに向かう。


「コーヒーと緑茶が入ったよ」


そう声をかけると蓉子がいち早く気づいた。こっちに近寄ってくる。


「あ。入ったんだ。風子。ありがとう」


「どういたしまして。私の分も入れてくるから。その間、待っててくれるかな?」


「いいよ。風子は紅茶が好きだもんね」


蓉子はそう言ってマグカップ二つと湯飲み一つがのったお盆を代わりに持ってくれた。私は配るのを彼女に託すとまたキッチンに行く。紅茶を入れるためにだが。背中に視線を感じたが気にせずに行ったのだった。

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