二話
私は着替えをすませると部屋にある手鏡で髪を整えた。
ブラシはあるのでささっと済ませてから一階のリビングに向かう。母は既に朝食の準備はすませたのかキッチンでの物音は聞こえない。今日は日曜だったと思い出した。
それにもうすぐでゴールデンウィークだ。友人と一緒にショッピングでもしようか。それともと考えながらキッチンに行く。
「……おはよう。風子」
「おはよう。母さん」
普通に挨拶をしてテーブルに並んだ朝食を見た。ほかほかと湯気を立てるご飯にお味噌汁、小松菜のおひたしに納豆、鮭の塩焼きがある。それと沢庵に卵焼きと旅館も顔負けのメニューだ。はっきり言ってコーヒーにトーストですませる友人達が多い中、和食の朝ごはんを食べている女子高生って私くらいだろう。別に母に頼み込んだ訳ではないが。小さい頃からこれが当たり前になっていた。
「風子。もう八時よ。早く食べて」
「わかった。もうそんな時間だったんだね」
「そうよ。今日は母さんも出かけるからね。明日も風子は学校が休みだけど。父さんや母さん達はそうもいかないから」
そう言われて私は椅子に座ると早速、お箸を持つ。
「いただきます」
両手を合わせてそう言ってからご飯やお味噌汁などをかきこむ。お行儀は良くないけど母さんが出かけるのでそうも言ってられない。急いでおひたしや塩焼きを食べる。十五分もかからない内に納豆を残して食べてしまう。最後に納豆をよく混ぜて食べた。腹が減ったら戦にならぬとはよく言ったものだ。
そんな事を考えながら納豆も完食する。
「ごちそうさま」
両手を合わせて終わりを告げた。母さんは苦笑している。
「……風子はいつも気持ちいい食べっぷりねえ」
「だって母さんのご飯はどれも美味しいもの。完食しないともったいないよ」
「ふふ。嬉しい事を言ってくれるわね」
料理の作りがいがあるわと母は笑う。今度は苦笑ではない。
「じゃあ、風子。母さんはちょっと買い物と後で友達と喫茶店に行ってくるね。夕方には戻ってくるから。留守番を頼むわ」
「はい。行ってらっしゃい」
「行ってきます」
母はひらひらと手を振って玄関に向かう。そしてバッグを持って出かけていく。本当に一人になった。どうしようか。そう考えながらスマホのスイッチを入れる。液晶画面が光って時刻が表示された。今、午前の八時半になっていた。試しに友人にメールを送ってみる。
<蓉子へ
今、私暇なんだよね。
蓉子はどうなの?もし良かったら遊びに来てくれるかな。>
短く書いておいたが。友人の蓉子からは十分して返事が来た。
<R:蓉子へ
風子ん家に今から行ってもいいかな。
あたしも暇でね。お菓子持って行くから待ってて。>
オーケーの内容だったので私はすぐに「いいよ。待ってるね」と返事をする。
そうして蓉子が我が家に来たのだった。