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Reality Game  作者: 星ノ雫
2/19

Game-01 ゲーム開始 

諸事情で響の解除条件を緩和しました。

このままじゃ、予定開催時間内に回り切るのが不可能に近いので。

 軽快なファンファーレが携帯器機と教室の上部に備え付けられた放送用のスピーカーから鳴り響く。わりとでかい音量に寧々は驚き、響は目を閉じて顔をしかめる。


『はーい!始まりましたぜ《Reality Game》!今回の参加者さんはまだルールを抵触してませんか?抵触しているようなら御愁傷様。抵触していないようならようござんす。まあ、確認しているかぎりではみなさんにルール違反している様子は見受けられませんからいきなり罰則(ペナルティ)説明する必要はなさそうでなによりだ!』


 やたらとテンションの高い、バラエティー番組の司会者のような声が二つの器機から流れ出す。


『…──あー、ダメだ。疲れた。悪い、っていうかすみませんマジでごめん。こっからは俺なりのいつものテンションでいきます。アゲアゲでいった方が面白そうとか思ったけど純粋に俺が面倒くせーわ』


 いきなりテンションが下降した。しかも一息にしゃべり終えると『ふー、やれやれ…』などという緊張感の欠片すら見せずに話す相手に寧々の額に青筋が浮かぶ。


『はい。というわけで《Reality Game》ってのがスタートするわけなんですがいきなりゲームだなんだ言われてもわけわからんよな。俺自身わからんこともあるから質問とかはあとで『目安箱めやすばこ』使って質問してくれ。まあ、とりあえず概要の説明すっから。この《Reality Game》───面倒だから以降は《ゲーム》で略すな?の参加者の目標はそれぞれに設定されたクリア条件を満たした上で指定されたエリアに到達することでクリアされる。はい、面倒と思ったやつ手~上げて~。いない?マジで?俺は面倒くせーわ』

「やる気無さすぎやろ…」

「まあ、とりあえず最後まで聞こうよ」

『《ゲーム》には基本になるルールが6つ。これは各プレイヤーの器機にこのあと転送されるが注意事項が一つ。各器機に転送されるルールはルール1とルール2~6の内の一つで計二つのルールが転送される。他のルールはプレイヤー同士で教え合うとか特定の条件満たすかしたら手に入るからよろしく。あと、ルールの配信と同時に各器機に『クリア条件』ってのが送られる。これがそれぞれに設定されたクリアに必要不可欠な条件な。これ満たした時点でエリアが指定されるから事前に待ち伏せとか無理だから気ぃ付けろよ?』


 『えっと、あとは…説明事項は…』と何やら紙をめくるような雑音がしばらく続き…


『悪い。罰則(ペナルティ)についての説明してなかった。とはいっても罰則が発生するのはルールに違反した時ぐらいでよほどのバカとかでないかぎりは大丈夫だろ。あとは───目安箱だな。これはこの説明後に使えるようになる器機の機能の一つだ。機能としては、俺に《ゲーム》に関する質問を直接できる。そして、その質問の答えは質問したプレイヤーの器機に直接転送される。ようは他のプレイヤーを少しだけ出し抜ける…かもしれない機能だ。うん?俺がそれにちゃんと答えるかわからんよな?だが、そこは安心してくれ。俺は可能な限り目安箱の質問に対しては隠しごとをしてはいけないということになっている。もちろん《ゲーム》の核心的な質問とかは『ぼかせ』ってことらしいからヒントとかになるかもだが…。基本的には必ず答えは返ってくると思って大丈夫だ。…が、目安箱には制限がある。1日中に使えるのは朝に一回、夜に一回だ。ちなみに朝の時間は6時~17時59分で夜は18時~5時59分までな。それぞれに一回だけ、目安箱は使える。だが、使わないって選択肢もあるぜ?この機能はあくまでもプレイヤーの行使できる力の一つ、だからな』


 『あ~、疲れた…』と聞こえないように呟いているようだが使用されているマイクの集音性はかなり高いようで丸聞こえだ。


『と、いうわけで《ゲーム》開始だそうで。プレイヤー皆さんの健闘を祈ってます』


 最後の方は最早やる気が無くなったのかすごく投げやりだった。携帯器機がホーム画面である最初の画面に戻ると、放送機材も静かになった。


「最後までやる気のない…」

「しかし、この《ゲーム》はけっこう単純なようだな」


 響はヒビの入った黒板まで歩いていくと豆粒のようなチョークを取ると先ほどの説明を列記する。


一.基本的なルールは6つ。各プレイヤーは1番と2~6番までの一つが携帯器機に入っている。

二.上記を守りながら同じく携帯器機に入っているクリア条件を達成すると、器機に指定されるエリアへ到達することでゲームはクリアとなる。


「大まかな概要としてはこんな感じなんですが…」

「こうやって書き出してもらうとわっかりやすうていいわ。にしても、このルールが曲者やなぁ…」


 響は携帯器機のホーム画面から起動させると『ルール』・『クリア条件』・『目安箱』と表示されている。『ルール』の項目を選ぶと、器機に保存されている二つのルールが表示される。



◼️ルール1

 基本ルールは1~6まで存在する。すべてのプレイヤーはルール1と2~6までの1つをランダムに有している。


◼️ルール6

 敷地内に存在する建物外に出られる時間は夜の22時~朝の6時までである。この時間外に出た場合には罰則(ペナルティ)が課せられる。


「ルール1は説明された通り、全プレイヤーが持っているルール。ただ、これはルールの前提のみで本来ゲームに関わる中身はルール2~6の5つだ」

「…なあ、赤上さん。お互いのルール、見せ合ったりせえへん?」

「ん?」

「ウチのルールを見るかぎりは知っといた方がええルールな気はするんや。というか、ルール2~6は全部知っとかんと下手な行動は取れんと思うんやわ」

「なるほど。それで、今ならお互いに見せ合っても大丈夫だと?」

「そういうこと。どうやろか?」


 悪くない提案ではあるが懸念材料が無いわけではない。まず問題なのは確認方法をどうするか、というもの。1番簡単なのは口頭でお互いの判明しているルールを言い合うことだが、これは響としては取りたくない。

 まず会って間もない目の前の相手を信頼できるかと言われると少し難しい。なにせ、出会い頭襲われてもいるのだから『信頼してくれ』と言われたとしても簡単なことではない。


「なんか懸念材料あるか?あるんやったら言うてや?」

「そうだな。確認の方法はどうする?」

「お互いの携帯器機を交換して『ルール』の欄を──」

「悪い。言いたいことはわからんでもないが出会って間もない、しかもついさっき襲われたばかりの相手にこの訳のわからないゲームで必須に近い器機を預けられると思うか?」

「───無いね。ウチがそっちの立場やったら断るわ」


 そうなると確認方法はけっこう少ない。響がその中で提案しやすいものは───


「お互いに自身の携帯器機を操作、画面を相手に確認してもらうと言うのはどうだ?」

「うーん、今の選べる選択肢やったらそれが一番無難か…。口頭やと嘘つかれたくあらへんしなぁ」


 こちらが考えることを相手も考えていたことにひとまず安堵の息を吐く。いちいち説明することは相手に利する行為でもある。あまりやりたくはない行為でもある。


「ほんならそれでいこうやないの。とはいっても言い出しっぺはウチやしね。先に見せるわ。はい、これやで」


◼️ルール4

 敷地内に存在する建物は北館・西館・東館・体育館・飼育小屋が存在している。北館・西館・東館の出入りは自由である。体育館・飼育小屋には特定の時間のみ入室が解禁される。


 画面に映ったルールを確認してこちらからも携帯器機の画面を見せる。ウンウンと頷いてみている。


「これは、お互いに実入りは多いもんやったんちゃうかな?」

「そうだな。少なからず知っておくべきルールだな」


 敷地内にある建物の数とその建物から出ていい時間。これは知っているだけでもかなり有利だろう。他のルールの内容にもよるが…。


「さて、となると今いるこの館は『西館』になるのか」

「んなことなんでわかんの?」

「そこの鉄板の隙間から外覗いてみるとわかる」

「隙間?」


 廊下の窓塞ぎの鉄板は完全には塞ぎ切れていない。小さな覗き窓程度に隙間の空いているところが数ヶ所ある。意図的か偶然かは不明だが。


「ふむふむ。まっすぐ向こう側に建物が見えて右側にも建物がある。右側が『北館』なら正面のが『東館』やからここが『西館』いうことか。ふむふむ…」


 対して響はルールを確認しながらもう一つの確認事項でもある『クリア条件』の欄を開いていた。


◼️10番

 器機に表示されている10ヵ所のポイントの到着。


(10番ってことは他に最低でも9人のプレイヤーがいるということ。まあ、一人は目の前にいるんだがそこはいい。問題はクリア条件になっている10ヶ所のポイント)


 ポイントは地図のような表示ではなく、すべてが文章にて表示されている。


・東館2階の工作室

・東館屋上

・北館地下1階のプール

・北館1階の保健室

・西館1階の家庭科準備室

・西館2階の体育館への渡り廊下

・体育館奥の劇壇

・体育館内の放送室

・飼育小屋裏手

・飼育小屋入口横の池


(すごく面倒な場所があるんだよなぁ。というか、飼育小屋ってことは何か飼われてるってことだよな…。飼育小屋の難易度が高いとするならできるだけ早めに確認に行かないと)

「ふむ。ウチはどう動くのがええかな、と」


 行けるようであれば今夜にでも…と。そこで窓の隙間からようやく顔を外した寧々が伸びをしながらこちらを見ていた。


「なあ、赤上さん。お互いに利益──メリットのある話やったら一口乗る?」

「話の中身次第だな」

「そうやねぇ。とりあえず提案したいのは『ルールの全容がわかるまでは一緒に行動せえへん』?」

「ふむ」

「このゲームはプレイヤー同士である程度は協力することも視野に入れとかんとクリアが難しいように設定されとるように思えてならんのや。むろん、誰彼とも協力できるとはウチも思わん。やけど、少なくとも今のウチと赤上さんやったら協力関係は問題ないんやないかと思うてるよ?」

「なるほど。で、協力関係はいいだろう。とはいえ線引きは必要だ。ナアナアになればそれは協力じゃないしな」

「そうやなぁ…。お互いのクリア条件に関する事例への質問等は無し。またクリア条件を満たすための行動への協力には見返りを用意する。それは情報でも物品でも何でも構わん。こんな感じでどないやろ?」

「そうだな。あとは、2人が同時に何かしらのものを得た場合は折半する。それを要求に入れようか」

「オッケー。契約、成立やね!」


 2人はお互いに手を差し出して固く握手を交わす。たとえ一時的な仮染めの関係になろうとも。2人はゲームをクリアするために手を組むと決めた。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ルール自体がわからずに誰かと協力しなければいけないというのは面白いですね。別々のルールを知ってる上に協力できるある程度は信用できる相手でないといけない。こういうゲーム系はやたらと複雑なのが…
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