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1話目
目を覚ますといつもの石鹸の匂いが嗅覚を野原へと誘う。微細な縫い方をしており、寝心地としては最適とも言える。それに相反して、地獄のように太陽の光がガラスを屈折し身体を照らす。火照ることにイラつきを覚えた僕は嫌々起きることにした。
まるで誰もいないかのように静かな茶の間に、一枚の広告が山折になって置いてあった。
真っ白な表面に黒のマジックペンでメッセージが書かれてあった。
『裕二へ、台所にカレー置いてあるのであっためて食べて』
御丁寧に書いてあったメッセージに目を配り、溜息をついた。
面倒くさいことが嫌いな裕二は冷たいままカレーを盛り、食べる。ただ、それだけの行為。
美味しいや、不味い、など存在しない。ただ口に運び、数回噛んで、飲み込む。これだけだ。