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勇者ハヤトと役立たず達の冒険譚  作者: 異口 柩
プロローグ
4/5

チュートリアル1

基本的に頭を空っぽにして適当に書いてます。


「この世界の事がまだ俺にはわからん。一体この世界はなんぞや、そしてミネルバさんは一体何歳なんだ?」


「おい、今私の年齢関係あるのか? まぁ異世界に来たばかりのアンタが知りたくなるのも悪くないわね。仕方ない、少しだけお勉強としましょうか」


 ミネルバは急に立ち上がり黒いローブを脱いでそれを丸める。先ほどから何故ローブを脱がないで身を隠したままかの理由がようやく分かった。ミネルバの先ほどから見えていた気の強そうな少女の顔が一変して三十代位の妖艶な魅女のものへと変わる。


 その下は黒いドレス、露出度も高く溢れんばかりの谷間が大きく見える。先ほどのロリッ子が何故か老けた、いやこっちが本当の姿なんだろう、姿を誤魔化すための魔法のローブなのだろうが、そんな変化を今見せられてもと俺は思いながら、さっきの姿には無かった谷間をただガン見していた。


「サン、ちょっと黒板になってちょうだい」


 そう言ってローブを床に落とすと、ローブは意思を持ったかのように動き出してその場で高速回転を始め次の瞬間には一瞬で2メートルの球体に膨張したかと思えば次に瞬きした後には既に3本足の黒板が出来上がっていた。


 段々驚かなくなってきた自分に驚いてきたがもう慣れたというよりかはどちらかというと、理解するという感情が無くなったんだろう。そう結論付けて黒板に書き出される白い文字に着目した。


 全く見慣れない文字だ。なんか記号の羅列が並んでいると思っていたが、俺の脳内は次第にその文字の意味を理解していく。おかしい、こんな文字も見たこともなければ文法も何もかも解らないはずなのに俺は何故か理解していた。-この世界はモノブライト、剣と魔法を武器に魔物と戦う世界である-黒板の序文にはそう書かれていた。


「この世界の認識はこんなもんでいいわ、そういえばアンタもこの世界の言語がわかるのね」


「お、それはどういう意味だ?」


「アンタの前にこの世界に召喚された二人組もこの世界の言語を理解してたわ。片方は文字までは読めなかったみたいだけど」


 習ってもいない言語を理解出来るご都合主義に俺は苦笑いを浮かべた。わざわざ言語解読をしないで済むのはいいんだが、流石に未知の言語を自動で理解できるようになっているなどという仕様からいって俺に何らかの改造を施したと考えてもいいだろう。


 ここまでで、不本意ながらこの状況を受け入れなければならいのだと悟った。今更ながら俺はこの異世界に召喚されてしまったのだ。しかも魔王を倒すという王道パターンに則って俺はチュートリアルでまず世界観説明のシーンに来ているのだ。大事なシーンだ。


 黒板には六種類の種族カテゴリーについて詳しく描かれている。



人類種−−我ら人類種は、かの昔より他種族を圧倒し生き残った種族。生命維持器官とは別に魔導器官と呼ばれる魔法を行使するために必要な器官を備えている。


魔人種−−魔力を素に生まれる種族。全種族の敵対者と考える人間も少なくないが、人類に友好的な魔人種も多く一概に敵とは言い切れない。魔人種は魔物種と違い理性が存在するので本能先行の魔物種と同じように考えられることを嫌っている。人口数は亜人種に次いで多い。


亜人種−−基本的に魔物種の特徴が混じった種族。亜人種にとって亜人種呼びは蔑称となる。


魔物種−−魔人種に近いとされるが本能で動く生物に近いため動物となる。


精霊種−−大気中の魔力が自然界の微生物と結合し生まれる。主に精神体クラスタという状態でブドウのように房状に固まって生きている場合が多い。特にその状態で生存し進化した精霊は自我を持ち人語を話すとされる。


神霊種−−実態は判明されない未知の生物。特に神霊種は全く人類種の前に表さないためその実態は定かではないが、亜人種や魔人種の前には現れるようでその存在が伝えられている。



 ここまで見てかなりざっくりした説明だが、なんとなく異世界人の俺に合わせて特殊な言語を避けて説明してくれているのであろう。簡単には理解できたが一つ疑問がある。


「ミネルバさん、この中の人類種が俺に当てはまるんだよな。じゃあ俺も魔法が使えるのか?」


「一応アンタにも魔導器官があるとは思うけど、使えるかどうかはわからないわ」


「なんで?」

 

 魔法を行使するために必要となる魔導器官が俺に備わっている。ならば俺も魔法が使えると思った。しかしそういうことではないらしい。


「魔法は努力して研鑽し、その形に出来るのが普通。そんな簡単に出来るようになるんなら、そこら辺にいる子供も上級魔法を使えるようになってしまうわよ。いくら異世界人のアンタでも簡単に使い熟されたらエルブラム魔法兵団団長の私の自信が粉々になるわよ」


「そんなもんか」


 ここまで言うと、ミネルバはパンパンと手を鳴らす。


「とりあえず話を戻すけど、この世界は種族同士の不可侵領域を決めて成り立っている世界なの。主に魔人種は前述の通り人口も多くそれぞれの能力も高いからある意味この世界の覇権を握っていると言っても過言ではないわ。亜人種の場合は個体の繁殖力が高いから人口数は一番高いわ、特に人間には無い高い身体能力を持っているから魔人族に次ぐ。その中でも人類種は亜人種と同列に扱われている」


「魔法が使えるからか」


「えぇ、特に人類種の持つ魔法は亜人種の種族の一つであるエルフ族に並ぶとされているわ。そんな私達人類種の持つ魔法を悪用しようとする魔人族も少なくないわ。特に血の気の多い魔人種は何十年も昔から他の種族への侵攻、略奪行為がとても多かったわ。今も同じく戦争が各地で続いている」


「その戦争は魔王ミュステリアを討ってもその争いは収まらないんだろう?」


「当然、魔王は一体じゃないから終わりはないのだけれど、大元の二対である東と西の魔王さえ潰せば多少は楽になるわ。こいつらがいるだけで魔族対人類の戦争は約五百年近く長引いているんだから」


 ここまで聞いて俺は前任の勇者、つまりは俺の前に現れたであろう異世界人が何故東の魔王『ヴァルドルム』とやらを殺し、自身が魔王になったのかの理由がとてもよく分かる。これではキリがないからだ。


 例えば、俺が西の魔王『ミュステリア』を殺して凱旋したとしよう。先ほど言っていた他の魔王が侵略しに来ればどうだろう。また俺が戦場に駆り出されるのだろう。そして他種族間に不可侵領域というものがあるとミネルバが言っていた。つまりは種族間の外交がなされていない。こんな巫山戯た世界があってたまるか。


 もしも種族同士が対立し戦争でも起きてみろ、また俺が戦場に駆り出されるのだろう。そりゃあ前回の異世界人も勇者を捨てて魔王になるわな。それは一種の防衛、この国、いや人類種のコマであったことを見事に逃げ出し、なおかつ魔王という不可侵の存在となることで誰にも干渉されにくい状況を得たというわけだ。


 それはとても賢い判断だ。俺なら思いつかなかった判断だろうが今からこの国エルブラムの手先にされてしまうのならばその先のことも考えておこう。いざ魔王を倒してもその後の身の振り方も考えなければならない。むしろ考えておかなければ人類種の駒として永遠に使われる可能性が高い。


 そうなれば俺の行動は西の魔王『ミュステリア』の討伐に収まらない。もっと面倒臭くややこしいものになるだろう。諸々のことは後で考えることにして、まだ続いているミネルバの話に耳を傾けた。



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