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勇者ハヤトと役立たず達の冒険譚  作者: 異口 柩
プロローグ
2/5

エルブラム王との邂逅〜そしておち○ちん〜

いきなり下品でごめんね☆

 気がつけば俺は見知らぬ場所にいた。それは絢爛な大理石の王宮か、とても美しい建造物の中に自分がいるのだと改めて思うが、それ以上に俺の周囲をぐるりと一周してローブの集団に三十人という規模で囲まれている。何か魔法使いの儀式に巻き込まれたかのように思うがまず言わせてもらおう。これ誘拐ですよね。


 マーライオンみたいな獣の石像彫刻や、水瓶を肩に担いで近くの噴水に向けて水を発射するおっさんの石像彫刻が石柱の合間合間に見えるが一番の極め付けは5メートルはあるだろうそそり立つ巨大なお○んちんの石像彫刻だろう。正直あれは一体なんだろうと訊きたいが、皆ローブで顔を隠して話もできない。俺が一体何をしたのか聞きたいがどうしようもないだろう。すると急にローブの集団が一箇所に集まり二列になって向かい合う、何かの登場を待つかのように跪いた。この間を誰かが通るのだろう、そう思い、ローブ集団の間を凝視する。


 現れたのは2メートル近い筋肉ダルマのおっさんだ。しかもご丁寧にわかりやすく頭に王冠を乗っけている。しかし、おっさんの召し物はなぜか真っ赤なマントと黒いブーメランパンツのみだ。何て変態だろうと思って凝視すると、おっさんは白い歯を剥き出しにニカッと笑う。


「ようこそ勇者よ! 儂の名はジョセフ・ディルム・エルブラム。このエルブラム王国の王だ」


 おっと理解が追いつかないぞ、どっから突っ込めばいいのかわからんぞ。


「えっと、意味がわからないです」


「そうだろうとも、何せ異世界から召喚した”三人目“の人間であるからな。無理もない」


「なんですと」


 異世界とはまた突飛な話だ。しかもこのおっさんが今いる国の王だと言っているのだ。そもそもエルブラム王国なんて聞いたこともないし、そもそもこのおっさんがなんでブーメランパンツとマントだけしか身につけていないのか。俺は混乱しながらも質問をすることにした。


「あの、あのおち○ちんの彫刻は一体なんです?」


 混乱しすぎていらん質問をしてしまった。しかも彫刻をおちんち○呼ばわりしてしまった。もしかして怒らせてしまったのかとヒヤヒヤしながらエルブラム王の言葉を待った。


「あれは儂のそそり立つ聖剣をモデルに作らせた彫刻だ。先っぽから噴水が出るような仕掛けになっている」


「そうですか(なんつー最低な仕掛けだ)」


 関西圏よろしくのノリツッコミをしたくなるほどのとても大きな分かりやすいボケだが、ここで下手に「なんつー最低な仕掛けだよ」と言ってみろ。王の右斜め後ろの黒いローブが俺の方向にはてなマークみたいな木のワンドをこちらに向けている。もしかしたらなんか魔法的な何かが飛んできて俺が死ぬかもしれない。ここは穏便に、波風立てないで情報を引き出そう。


「ここはエルブラムという国なんですよね」


「そうだ、そして儂がこの国の王である」


 ここまではわかっている。だが一応確認しておこう。


「失礼ですけど王よ、本当に貴方は王ですか?」


「そうだな、異世界から召喚されていきなり王と宣言しても伝わらぬな。ならば儂が王たる証拠を見せてやろう。見せてやろう、儂が王たる証であるこの」


 その証拠とは何か、証拠を挙げるなら王冠や聖剣だろうか、国宝なら様々だ。一体どんな証拠を持っているのだろうと王の次の言葉を待つ。


「この王たる儂の聖剣と呼ばれたそそり立つ肉棒を」


「見せなくていいです。てか聖剣に謝れ」


 そうツッコミを入れた瞬間、黒ローブ集団は一斉にワンドを構え銃口の如く俺に向ける。客観的に見たら何のギャグと言いたくなるほど滑稽だが、集団でごっこ遊びをしているように見えた俺としては違う意味で悪寒が走った。そんな時、何かが俺の足元近くの大理石の床に突き刺さる。


「氷の、矢か」


 俺は淡々とそう述べながらションベンを漏らした。淡々としたポーカーフェイスでそう述べていながら漏らす俺を見て黒ローブ集団は後ろに後ずさる。すると王は一喝した。


「撃方止めいッ! 異世界から召喚されて未だ文句の一つも言わぬ者に対し杖の矛先を向け、あまつさえ魔法を放つなど何事か。我がエルブラム国の誇る魔法兵団として恥ずかしくないのかッ!」


 格好さえまともであれば王として立派だったであろう。ブーメランパンツにマントのおっさんが叱責しても俺はなんとも思わないが、黒ローブの集団は一斉にたじろぐ。どうやら王の言葉だからか効果はあったようだ。その言葉に意見があるのか、黒ローブの集団の一人がおずおずと手を挙げる。


「お言葉ですが王よ、我らがエルブラムの顔たる王の逸物を貶し、あまつさえ聖剣と呼ばれた王の逸物の称号さえも貶したのです。極刑が妥当だと思われます」


 女の声だ、しかし声質がガサガサとしているためそこそこ年のいったババアなんだろうなと思った。すると言葉の後に彼女はそのままローブを脱いで右腕にかけ、王の前に跪いた。なんてこった、めちゃくちゃ可愛いじゃねぇか。異世界この野郎、こんな美少女なのになんで声だけ年取っているんだ。俺はあまりの理不尽さに頭を抱えた。


「ミネルバよ、前回旅立った勇者が魔王を打倒したのは覚えておるな? この者と同じ異世界から召喚された者たちだ」


「えぇ、覚えておりますもの。あの二人組は魔王を見事倒しました。その後に魔王として君臨してしまいましたが」


 俺以外の異世界から召喚された者がいると聞いたが、まさか先に勇者として旅立って魔王を倒して自身が魔王となるとは、最後に関しては意味がわからんがなんで異世界から来た者はとりあえず強いのだろう。いや待てよ。


 魔王を倒しただと?


「ちょっと持ってくれよ王、俺の前に喚ばれた勇者が魔王を倒したんだよな。なら何で俺が召喚されたんだよ」


 いきなり話をぶった切ったせいか会話の流れが止まった。ミネルバは凄まじい殺気で俺にガンを飛ばしている。そりゃあ王の話をぶった切って質問は悪いと思うが大事な話でしょうに。そんな俺に対し、エルブラム王はミネルバとは対照的にしっかりと質問に答える。


「この世界には魔王が多く存在する。特に強大な勢力を誇る東の魔王『ヴァルドルム』、そして西の魔王『ミュステリア』、魔王ヴァルドルムは前回召喚された勇者達により葬られたが、あろうことかその勇者達が新たな魔王になってしまったのだ。本来ならば西の魔王も討伐して欲しかったのだが」


「つまり、そいつらの代わりにその西の魔王とやらを倒して来いと」


「話が早くて助かる」


 ここまで理解しているように見えるだろ? 実は全くついていけていないんだよなぁ。一応状況把握をしながらここまで話を聞いてみたが、おいてけぼりぽかーん状態だ。なんですか魔王とか、前任の勇者が魔王を倒して自分が魔王になったとか意味がわからん。つまりあれだ、なんだ?


「皆の者、この者は悪しき西の魔王打ち倒すであろうお方だ、丁重に扱え。そして先の召喚にて疲れているはずだ。客室に案内して差し上げるのだ」


「はッ! 仰せのままに」


 先ほど王に怒られていたミネルバという女が案内すると言わんばかりに俺の先頭を歩く。俺はそれに続いた。



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