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10^-35  作者: 小三橋 尚
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10^-35 その4

登場人物

マルツェラ:艦の調理士。ジネッタ、リームナの友人。さばさばとした女。ギュントに襲われる。

リームナ:中年女性。ジネッタ、マルツェラの友人。ゆったりとした話し方。

ヴィクティン:勅命機関勤務の男。ジネッタとは学生時代の友人。失礼な発言が多い。倉庫区画内の事件の後、自殺。

イェル:傭兵。戦闘種族エンデ。小柄と尖った耳が特徴。常にニコニコとしている男。

ギュント:傭兵。戦闘種族フレン星人。身体は本体ではなく、人形と呼ばれる遠隔操作可能な端末。実は宇宙賊と兼業。

ジネッタ:艦の通信士。ヴィクティンとは学生時代の友人。リームナ、マルツェラはこの航行で仲良くなった友人。コンテナに隠れる。






「調理士と先生」




家族の笑顔以上に価値があるものがこの世にあるのかい?







マルツェラ・マルノーが産まれたのは辺境の星だった。

農業で栄えているような田舎の星で、今でも話し方にその特徴が表れている。

四人家族の長女で、一歳違いの妹がいる。これがまたマルツェラ本人に負けず劣らず元気が良い。

その妹も今では家を出て、立派にどこぞの会社の事務員をしており、生活の方はまぁまぁに送れているらしい。

たまに行う通信では会社の不満ばかりだが、それも笑って話せているうちは上手くいっているということだろう。

マルツェラ本人はというと、幼い頃に道楽で母星に観光にきた貴族が抱えていたシェフに密かに憧れを抱いていた。

元々食べることも食べるものも大好きなマルツェラである。自分の天職はこれだ、と直感で察した。

母星を飛び出し、引退した貴族お抱えのシェフであった人間に無理矢理、弟子入りを志願し修行に励む。

しかし、それだけでは生活は送れない。

少しでも食物に関わりたいと思い、調理機のメンテナンスを学び始め、それで生計を立てるようになる。

調理機とはある意味自分のライバルであり、そのメンテナンスの知識を得るということはライバルを知るということにつながった。

幾つかの客を取り、機械の調整をする傍ら手料理の修行に励む。

そしてマルツェラは客先で恋に落ちることになる。

そしてそのままレストランを経営する年下の男と結婚し、五年後に離縁することになった。

離縁の原因はマルツェラ自身にある。

貴族お抱えのシェフなど夢のまた夢で、手料理に励むその姿は他の人間から見ればひどく滑稽なものに見えたためだ。

しかし、彼女は夢を諦めることを選ばない。

いつかはその夢が叶うと信じている。

少々頑固で変わり者の彼女だが、その人生自体は突飛なものではない。

将来への夢をもてあましながら日々を過ごす、普通の人生だ。

しかし、そんな彼女の人生にも実は特筆すべきものが一つだけあった。

普通の人間である彼女がその特徴一つで、異質な存在へと変質するくらいに。

つまりは。

彼女の人生は全てが嘘、という特徴だ。



「そんなに浮かない顔をしないで。

 大切なお仕事、なんでしょう?」

ロッキングチェアに揺られながら、優しい声音が優しく告げる。

高級な金糸で作られたような、細く輝く髪は鎖骨にかかるほど伸びており、彼女の腕の中にいる幼子がその髪に触れようと手を宙に泳がしていた。

その彼女の一番の特徴は背中から生えた白色の翼だった。その翼の先は足元まで伸びており、彼女の背を守るように生えている。

その美しい彼女が現支配種族と争いを起こした旧支配種族であるとは信じがたいし、かつてはぼくの種族と敵同士だったとは更に信じがたい事実だ。

「そうだけどね…。

 あー、もう。ぼくは転職する。絶対転職する。今度は本気だ。

 妻帯者に突然三ヶ月の出張だなんて、マトモな判断じゃないよ全く。

 あの上司は絶対に良い死に方をしない。賭けても良い」

ぼくの言葉に彼女はくすくすと小さく笑った。

ぼくとしては笑いごとではないのだけれど、彼女にしてみれば可笑しいことらしい。

「駄目ですよ。この子の前でそんな怖いことを言っては」

子供を盾に取られると、ぼくは何とも言えなくなってしまう。当の盾になっている本人は手を宙に伸ばしてちょろちょろと動かしている。

その姿が愛おしくて、ぼくは反射的に彼女に抱きかかえられた子供の頭を撫でた。

「あなたがそれだけ必要とされている、ということなんでしょう?

 私はあなたのお仕事のことはよく分からないけれど、貿易の交渉をしにいくのですよね?

 立派じゃあないですか。この子の前で胸を張ってパパでいて下さい」

零れそうな笑顔で彼女はそんなことを言った。全く出来たお母さんだと、ぼくは内心舌を巻く。

ぼくには勿体無いくらいだ。

ぼくは娘の頬をつつきながら呟く。

「…ぼくが帰って来る頃にはこの子も喋れるようになってるんだろうなぁ…。

 パパって呼んで貰えるかなぁ……」

「呼ばれますよ、きっと。

 だから頑張って」

子供のように拗ねるぼくを、彼女は優しく慰める。

ああ、もう、敵わないな。

「はい、頑張ります」

微笑む彼女はぼくが戦争で金を稼ぐ人間だということは知っている。

しかし、諜報員ということは知らない。

ただの交渉人だと思っているし、そう教えている。だから家を不在にすることが多いのだと彼女は納得している。

お嬢様育ちの彼女にとって、育児や家事の負担はお手伝いがいるとしても、大きいに違いない。

ぼくもなるべく育児や家事に参加したいと思っているが、仕事柄その頻度は絶望的に低い。

しかし、彼女がそれについて不満を言ったことも愚痴を述べたこともない。少なくとも、ぼくの前では。

母は強し。

そう、感じる。だったらぼくも負けてはいられない。

この二人の笑顔に会うために、何度でも死地から戻ってこよう。

この二人を抱きしめるために、何度でも不可能を可能にしよう。

あ。でも、転職はしよう、うん。

稼ぎは悪くてもいいから、もっと家族との時間がとれるように。

「じゃあ、そろそろ行くけど…。

 身体に気をつけてね。くれぐれも無理はしないように。

 何かあったらすぐにお手伝いさんに言って。とにかく相談して。

 変な通販番組にハマっておかしなものを増やさないでね。

 それから体調を崩したなと思ったらすぐに医者に言って、こじらせないこと。

 いざとなればうちの両親も駆けつけるから。

 それから……」

「あなた」

目の前の彼女はくすくすと笑いながらぼくを呼ぶ。それにつられたのか、娘までもがその顔に笑みを浮かべていた。

「心配しなくても大丈夫よ。

 あなたに、『おかえりなさい』という日を楽しみに待ってる。

 だからあなたこそ、ご自愛してください、ね」

妻が上目づかいにこちらを見る。

なんだかそれが、とても愛おしいものに思えて、ぼくは思わず彼女を抱きしめた。

そして彼女に囁くように告げる。

「行ってきます。

 そして必ず帰ってきます」



ギュントの人形が制御を失い、全身が脱力したことを確認する。

宇宙賊に襲われるという面倒ごとはこれで回避出来たらしい。

問題は。

ぼくは倉庫区画の通路に立つリームナを見る。

ギュントはマルツェラを処理するためにこの場所に来て、そこでぼくと戦闘になった。

……結果的にこの場を治めたのはリームナだったけれど。

問題はそのリームナだ。

ぼくの姿を見られたことは非常にまずい。

(ここで一撃入れて、後で口封じの交渉でもするかぁ)

ぼくがぼんやりとそんなことを思っていると、リームナはそんな心を見透かしたようなことを言う。

「大丈夫よぅ。私も面倒ごとはごめんだから。

 心配しなくても貴方のことは誰にも話さないわぁ」

彼女は顔の前で手を合わせて小首をかしげた。

「その代わり、知ってたら教えてくれないかしらぁ?

 人探し、してるのよ。

 金髪で三つ編みの女の子、見なかった?」

「?

 いや、見ていないよ」

ぼくの返答に彼女は残念そうに眉毛を下げる。

「そう…ありがとう。

 じゃあ行きましょう、多分殺されちゃったのね」

「待て」

リームナがぼくに背を向けた時、ぼくでもリームナでもない者が彼女止めた。

そいつはリームナが従えている光球の範囲に足を踏み入れる。

不機嫌そうな顔の男、ヴィクティンだ。

しかし、彼は“今までと違い”眉間に皺を寄せていない。

なんともやる気に満ち溢れた視線でこちらを見る。

「こいつに用がある」

そんな彼に対し、困ったようにリームナは声をかける。

「あんまりそういう奴に関わんない方がいいわよぅ。

 どうせどっかの政府がらみなんでしょうよ。

 それに今はアレの関係者を探す方が先でしょう?

 ……え?まさか……?」

「こいつが関係者だ」

ヴィクティンは一瞬だけリームナを見てから、こちらに視線を戻す。

驚いたのはぼくではなく、リームナの方だった。

「ちょっと……あの場にいた関係者は四人で、最後の一人はマルツェラのはずでしょう?

 え……そういうことなの……?」

「だから」

ヴィクティンはこちらを指差し、そして面倒そうに告げる。

「こいつが、マルツェラだ」

(!)

動揺は内心に隠し、彼を見る。

鎌をかけている?はったり?まさか?

姿が全く違うぼくをマルツェラと言い切る意味が分からない。

しかし、彼の態度は微塵も自分の言葉を疑っていない。

リームナは一瞬目を見開いて驚いたが、まぁ、と小さく呟いて口元に手をあてた。どうやらヴィクティンの言葉に納得したらしい。

しかしぼくは納得出来ない。

ぼくの反論を制するかのように、彼は口早に告げる。

「反論は時間の無駄だからやめろ。

 いいか?

 倉庫区画の生体反応の数は相変わらず6つだ。マルツェラが死んでいればあんたを含めて数は合う。

 だがもし、マルツェラが死んでいないとすれば、それはマルツェラが誰かと入れ替わったということになるだろ。

 確率が高いのは今挙げた2パターンだ。

 じゃあ私がその後者、マルツェラとあんたが入れ替わったと確信した理由だが…。

 私は見た目はサル型人種だが、実際は違う人種だ。

 私には対峙した人間の記憶の概要が把握可能なんだよ。

 あんたのソレはマルツェラのものと同じだ」

ぼくは両手を軽く挙げて降参のポーズをとる。

全く、ツイてない。

かぶりを振ってから、憂さ晴らしにポケットからカード型の機械を放り出し、踏み抜く。

ぼくは口元を歪めながら答えた。

「その通り。降参だよ。

 ぼくもアレの関係者だ。

 わかってるだろうが『帽子屋』だ。

 そっちは『シドロフ』だね?」



(参ったな)

数十分前。ぼくはうつ伏せで床に倒れたまま、そんなことを考えていた。

ギュントの行動が怪しかったため、足音を消して尾行していたが、まさか発信器を取り出すとは思わなかった。

思わず声をかけたところ、返り討ちにあった次第だ。

諜報員であるぼくには回避可能な攻撃だったが、調理士のマルツェラが回避してはいけない攻撃だった。

ぼく……マルツェラに攻撃を加えた当のギュントはジネッタ嬢と一緒にどこかに行ってしまった。

脅威は去ったが問題はある。

マルツェラの身体にちょっと傷を負ってしまった。

致命傷ではないが、頭に近い場所に傷が出来てしまったため、放置するわけにもいかない。

一旦、自分本来の身体に戻って彼女の回復を促進させてあげる必要がありそうだ。

(あー。交代かぁ……)

気が進まない。それでもやるしかない。

ぼくは、マルツェラの身体のまま奥歯を強く噛む。

それに反応して身体がゴキゴキと蠢きだす。

(麻酔無しだと超痛いからやりたくなかったんだよなぁ……)

手も足も胴体も、そして顔すらゴキゴキと骨が動き、肉が蠢き、やがて一つの肉塊となる。

骨が粉々になる衝撃に痛覚が悲鳴をあげ、肉が原型を失う工程に気分が悪くなる。

骨をハンマーで粉々にされるよりも強い痛みが脳を刺激し続ける。

肉が無理矢理整形される痛みが脳を脅かし続ける。

永遠にも思える痛みにもようやく慣れてきた頃、骨と肉の移動が終わった。

「っ」

ぼくは目の端に涙を溜めて、痛みの悲鳴を腕を噛んで我慢する。

最早この身体はマルツェラではない。ぼく自身の身体へとなっていた。

身体の構成を作り替える術など、容易に行なえればとても便利だ。だれでも行うだろう。

しかし、デメリットが大きすぎる。

身体の構成を組み替えるときの痛みは今までの戦場で体感した痛みにも負けないほどだ。

更にホルモンバランス・体組織の入れ替えなどに著しく影響が出る。

また、最悪なことに、運が悪ければ身体の構成の組み替えに失敗し、唯の肉塊に成り果てる可能性もある。

便利ではあるが、誰もやりたがらない理由はそれだけで十分だった。

とにかく何においてもしなければならないことがある。

ぼくの背格好は変わったとはいえ、衣服はマルツェラのものだ。

いい歳した男のショートパンツ姿など変態以外の何者でもない。

ぼくは急いでポケットから角砂糖大のキューブを取り出すとそれを宙に投げる。

キューブは一気にほぐれ、何倍にも膨らみ、やがてはYシャツやジャケットやコートなど……一式の服に変わった。

いそいそと着替えを終わらせ、マルツェラの服を投げて今度はキューブ大にしてポケットにしまう。

「さて、と」

これからのことに思いを馳せる。

ギュントはきっとここに戻ってくるだろう。マルツェラを殺しに。

相手の行動が分かっているならば好都合といったところだ。

ギュントが戻ってきたところを強襲し、人形を無効化すれば良い。

人形を壊したところで、奴の本体は無事だし、こちらの姿を晒してしまうのは難点だが、発信器を取り付けていたことをネタに揺すれば痛み分けには持ち込める。

上手くすれば『死ぬほどの痛み』を味あわせて殺せるかもしれないし。

そんなことを考えながら、先ほど、ギュントが取り付けていたカードをコンテナからひっぺ返し、コートのポケットに入れた。

「まぁ、なんとかしてみますか」



「しっかし、アレの関係者を集めてどうする気だい?

 あの場じゃ、全員で黙ろうって話しになったじゃあないか」

リームナとヴィクティンによってあっさりと正体がバレてしまったため、最早隠す必要もなく、ぼくは気軽に話し始める。

「それに関係者が一人足りないよ。

 『ぺぺ』……多分イェルが、そうなんだろう?」

その言葉に白々しくリームナが頷く。

「あらあら、分かっちゃう?」

誰のせいだと思っているんだろうか。おかげでマルツェラやヴィクティンも関係者だということは共通認識になってしまった。

「この宴会でたまたま居合わせた四人が全員関係者だとは思いもしなかったけどね」

皮肉を込めて彼女に告げると、彼女は笑みを深めて答えた。

「まぁねぇ。

 偶然一人と会うことはあっても、全員が集結するとは考えにくいわよねぇ」

ヴィクティンが彼女を横目で見ながら告げる。

「……あんたの作為だろうが」

「そうよねぇ?偶然がたくさん重なったように見えたら、そこに作為を疑うべきよねぇ?」

そりゃあそうだろう。

一人までは偶然で説明がつく。今回でいえば、ぼくが巻き込まれたのが偶然だ。

しかし、それ以上は作為を疑うべきだ。そしてリームナはヴィクティンやイェルが関係者であると目星をつけてこの場に集めたのだろう。

「それで?

 イェルも探すのかい?」

「探すことは探すが、後回しだな。あんたに事情を説明してからだ。

 あいつは本気で“この宇宙を救う”つもりだ」

ヴィクティンがした突然の発言にぼくは声を失う。

なんだって?

目を丸くしながらぼくは彼に尋ねた。

「“この宇宙を救う”って……まさか?

 宇宙の端を発動させないつもりなのか?」

こちらの理解を悟り、ヴィクティンが口元を歪める。それは笑顔というにはあまりにも皮肉めいていた。

「言葉は正しく使えよ犯罪者。

 宇宙の端はどう足掻いても発動する、しかし人類側が対策を打てるようにするということがイェルの狙いだ」

言葉の意味は分かる。

そしてそのために必要なことも察しがついた。

思わず、拳を握りしめていた。冷や汗がじんわりとにじむ。

ぼくの思考を肯定するように、リームナはピンと指を立てて笑顔で告げた。

「つまりこういうことよねぇ?

 宇宙の端に関する事実を全宇宙に公開する。

 宇宙の端の関係者を全員殺す。

 これがイェルの狙いよ」

それは……それは、それはつまり!

ぼくはイェルのおぞましい思考に恐怖する。

「ぼくたちを殺す気だということ……だね……」

「正確にはここで一人でも殺せればいいんでしょうよぉ。そしてイェル自身が生き残れば。

 事件が起きて、犯人がイェルであれば事情徴収を受けるのはイェルよねぇ?

 そこで宇宙の端の事実をばらすつもりなんでしょうよ。殺人事件とセットに電波な動機なんて、センセーショナルじゃない?すぐ情報は広まるわ。

 それを信じる人は少ないかもしれない。でもこの広い宇宙に一人や二人、もしくは同じチャネリング能力を持つ仲間が信じるかもしれない。

 イェルの目的は同士を増やして、“この宇宙を救う”こと。

 だけど殺されるこちら側はたまったもんじゃないわよねぇ?」

ぼくはイェルの思考が正気とは思えなかった。実現性の低い賭けに自身の命を賭けるような、そんな狂気を感じる。

しかし、一方で彼はどうしようもなく正しい。

この宇宙の全てが死に絶えてしまうよりは、それはいいのかもしれない。

宇宙が滅亡するよりは、救われた方がいい。

その理屈はどうしようもなく正しい。しかし、認めるわけにはいかない。

現実的でない。妄想に近い。宇宙の滅亡はほぼ不可避だ。

ではその正しさに抵抗するぼくらは、一体なんだろうか。

ぼくは溜息をつく。

ぼくらは宇宙を救うことを諦めた。

イェルの正しさの逆に位置する。

つまり。

ぼくらは悪党だ。

「降参だ。

 仰せのままに」



チャネリング能力とは、相手の思考を受け取る能力だ。

知的生物であれば誰でも自身の思考を外に発散している。だからこそ人形などというものの運用が可能になった。

しかし、発散した思考を受信出来る者はごく一部だ。

チャネリング能力者…所謂チャネラーはそのごく一部にあたる。

だからこそチャネリング能力者同士の思考のやりとりは成立する。

チャネラーと一般人との思考のやりとりは、一方通行的に成立するが、チャネラーの思考を一般人が受信出来ないため、会話にはならない。

しかしチャネラー同士の会話は成立する。

よって、チャネラー独自のネットワークが形成されることに時間は掛からなかった。

チャット仲間として、ときには本名で、ときにはあだ名、つまりハンドルネームで思考のやり取りをした。

今、既に二人に対してぼくの現実の姿が割れてしまったため、ハンドルネームでのやり取りには違和感がある。

だからといって。

『おいマルツェラ、こちらは見えているのか』

脳内にヴィクティンの声が響く。

跳躍空間内で無線通信がおぼつかない今、チャネラー同士の思念のやりとりは、とても信頼性のおける通信だった。

しかし、この姿で女性名で呼ばれるのは違和感がある。かといって諜報員であるぼくの本名を教えるわけにもいかないし。

……いっそのことチャットのハンドルネームで『帽子屋』と呼んでくれた方が良い気がするのだけれど。

『見えやしないけど。

 大体気配で把握出来るから気にしないように』

『一応、周辺に式を張ってるから、イェルの接近には気づけるわよぅ。

 回避する時間くらいはあるから、頑張ってかわしなさい』

リームナもこちらのチャットに加わりながら、無茶なことをさらっと言う。

ぼくとリームナは、通路の十字路に立つヴィクティンを見る。

光球を足元に従え、時折周囲を見渡している彼は囮だった。

だからこちらは灯りを消して、ヴィクティンがイェルに襲われる瞬間を待っている。

対イェルの作戦として囮役を買って出たのはヴィクティンだった。

理由はもっともなものだった。

チャネリングを行えることがイェルに伝わっており、三人の中で一番無力だからだ。

だからこそイェルもヴィクティンを狙ってやってくる。

最初の奇襲で死ぬ可能性すらあるのだが、本人は全くそれを気にしていない。

むしろ自信たっぷりに言い放った。

『一撃くらいならかわす算段はある』

とんでもない傲慢だ。仮にも相手は戦闘種族だというのに。

ぼく本人も戦闘種族だが、それとはわけが違う。

ぼくの種族……つまりレベン・スティーナ星は戦争で金銭を得ている星であり、戦争を生業としている。

対してイェルの種族は戦争ではなく、戦闘特化だ。

この違いは明白。

金を稼ぐという点ではレベン・スティーナの方が効率的であるし、賢い。

ボタン一つで戦争が始められる昨今、個々人の戦闘能力などどうでもいい。問題は技術力だ。

その点ではあのいけ好かないフレン星人には一日の長があるけれど、そこはまた別の話として。

しかし、イェルの種族……エンデはそれとは思想を異なる。

時代遅れの白兵戦特化。戦争をする能力に欠けているものの、戦闘能力は他の追随を許さない。

戦闘能力に関してはぼくの上をいく。

そんな相手に囮役を買って出るなど、正気の沙汰ではない。

そんなぼくの心中を察するように彼は言う。

『あいつに殺されるのは、全力でお断りだ。

 だから全力で助けろよ、犯罪者』

肝が座っている。その割に自分の無力を理解している。

全く、横柄なんだか、本当に助けて欲しいのだかよく分からない。

『誘いに乗るかな?イェルは』

ぼくが念話でヴィクティンに尋ねる。

彼は自信満々に告げた。

『乗る。乗らざるをえない。

 監視レベルが高い艦内では殺す前に捕まる可能性が高い。

 監視レベルが低いこの倉庫区画は、奴にとっても都合がいいんだろうよ。ここで決着を付けたいはずだ。

 今、私がイェルの思想に賛成する旨をチャットで奴に伝えているが、返事が無いあたり、罠ということは気づかれているな。

 それでも奴はここで私か、誰かを殺したい。だからこの罠に引っかかりに来るはずだ』

『もしくは、罠と分かっていても突破出来る自信があるか、よねぇ?』

リームナの発言にぼくは心中で頷いた。

戦闘特化のイェルが、ぼくら相手に何を恐れる必要があるというのか。

そう思いながら目の前に浮いたモニタに反応があらわれる。

倉庫区画内の地図と生体反応がそのモニタに表示されていた。

高速でこちらに向かってきている反応がある。

(来るか……)

ぼくは唾を飲み込んだ。

ぼくは単なる諜報員であり、特殊工作員じゃあない。

生き残るために……ああ、あとたまたま原住民に教わったりして、幾つかの体術を身に着けているけれど、戦闘特化の人間を相手取ることが出来るほどではない。

ヴィクティンの心配よりも、自身の心配をすべきかもしれない。

しかし。

(必ず帰るって、言ったからなぁ)

呑気にそんなことを思う。

絶対帰る。

帰って最愛の妻と娘に『ただいま』と告げる。

そのために何があっても無事に帰還しなければならない。

『我々は宇宙滅亡の片棒を担ぐわけか』

宇宙の端とのチャットのとき、ヴィクティンがそう言った。それがノイズのように思い出されてしまう。

……今は忘れよう。

集中。

索敵。

緊張。

そして無音に。

思考はクリアに。

が。

一迅の風が吹いた。

それがイェルの移動によるものだと気づいたときには、イェルはヴィクティンに肉薄していた。

(速いッ!)

ぼくはすぐに張り付いていたコンテナから手を離すと同時にコンテナを蹴り飛ばし、イェルの元へと跳ぶ。

同時にリームナも文字の効力によって浮かせていた身体をゆっくりと降下しはじめた。…彼女は元から戦闘に加わる予定ではない。どうでもいい。

イェルの初撃にぼくの到着は間に合わない。これはもうヴィクティンに賭けるしかない。

イェルの手には、ヴィクティンの足元にある光球の光を反射するものが、握られていた。

ナイフだ。

単純であるが故に、身体能力がずば抜けているイェルが所持することで、その脅威は一般人が所持するよりも十倍は恐ろしい武器になる。

ふ、と。

光球が消える。ヴィクティンが消したのだ。

その一瞬でこの空間は暗闇が押し寄せる。

突如脳内にリームナの声がする。

『記憶が見えるだなんて言うくらいだから、暗視が効くわよねぇ?

 対するイェルは暗視が効かない。多分眼鏡の効果ですぐに暗視モードに切り替えるでしょうが……その零コンマ数秒が分かれ目ね』

同感だったが、返事をしている余裕はぼくには無い。

風圧を伴って、ナイフが横薙ぎに払われた。

暗闇の中、悲鳴は無い。おそらくヴィクティンは無事だ。

すぐにヴィクティンの光球が光を取り戻した。

彼は床に仰向けに倒れるように、イェルの攻撃をかわしていた。

しかし、イェルは第二撃の準備にナイフを振り上げる。狙いはヴィクティンの頭だ。

咄嗟に彼は顔を庇うように片腕を顔の前に持ってくる。

しかし、イェルがこれから行う攻撃は、その程度でどうにかなる一撃ではない。

当たればヴィクティンは顔を貫かれる。

彼は死ぬ。

だから、させない。

イェルがナイフを振り下ろす前に、床に頭から跳ぶこむような姿勢で突っ込んだぼくは、彼の首を駆るように腕を伸ばす。

背後。しかも獲物を仕留める直前。ぼくの一撃があたる算段は十分にあった。

しかし、イェルは首を垂直に倒し、かわす。

……暗視が効くヴィクティンが光球の明かりを戻したことで、第三者の介入を気づかれたか。

ぼくは床に着地すると、そのまま返す刀でイェルに左の回し蹴りを叩き込む。

が、顔を上げたイェルは左腕でそれをガード。全く効いていない。

予想通りだ。まさか戦闘種族をそれで倒せるとは思わない。

流れるような動きで、ぼくは右足で跳躍。身体を捻る。

そして右の回し蹴りでイェルの頭を捉える!

さすがに頭脳を揺さぶられて平気な生物はいないはずだ。

イェルは驚愕した顔のまま顔を伏せてかわす。

……予想外の攻撃だから驚愕していただろうに、そこからかわせるあたり、彼の身体能力の高さが伺えて辟易する。

反撃、とばかりにイェルはこちらの左足をつかもうとする。

甘い。

左足は次の攻撃に移っている。

即ち、イェルへの踵落としだった。イェルの手をすり抜け、高々と上げられた左踵が彼の後頭部に直撃する。

その勢いに彼は上体を崩した。

ぼくは逆にその勢いを使い、イェルの後頭部を足場にするとバク宙をし、安全に床に着地する。

そして内心舌打ちをした。

(浅いね。

 やっぱりもうちょっと“気”を使わないと駄目だ。

 ただ、ちょっと練ったくらいじゃ効かないよなぁ)

ぼくの予想通りにイェルはすぐに顔を上げると、コキリ、コキリ、と首を鳴らす。

この間にヴィクティンは戦域から離脱して、リームナの近くに移動していた。

これで、ぼくとイェルの一対一だ。

「えーっと」

意外なことにイェルが声をだした。ヴィクティンが作った光球に照らされた彼の表情は、いつもどおりの笑顔だった。

「あなた、どなたです?

 困ったなぁ。僕は彼と彼女に用があるんですよ。

 むしろ、無用な戦いは僕の望むところじゃないわけです」

じゃあどうぞどうぞ、となるわけがない。イェルは分かっていないが、ぼくだって宇宙の端の関係者だ。

イェルは宇宙の端の関係者を全て殺すつもりだ。

つまりはぼくも殺すべき対象になっているということになる。彼がぼくに気づいていないだけで。

ぼくは内心の考えを悟られないように、のんびりと答える。

「いやぁ。ぼくは通りすがりの唯の不審者だよ。

 ぼくはぼくの意思でキミと相対するわけだから、気兼ねなく戦ってくれていいよ。

 しかし、キミ。一体全体、どうして彼らの命を狙うんだい?」

ぼくの答えに反応したのは、リームナだった。念話で不満気な声をだす。

『なぁに?のんびり会話しちゃって。

 お友達にでもなるつもりぃ?』

『今は気を練ってるんだ。だから時間稼ぎしてるんだよ』

『あらそう。

 じゃあ仲良くどうぞ?

 ついでに私やヴィクティンからの暖かい声援を送ってあげるわ』

『気が散るから絶対止めろ』

低い声で、強く止める。そうでも言わなければこの女は本気で声援を送りかねない。

ぼくは呼吸を整えて体内の気を練りながら、イェルの言葉を待つ。

意外なことに、彼は悲しそうな顔をして告げた。

「僕だって……誰かを殺したりするのは気分が悪いです。出来ればしたくありません。

 戦闘種族のくせにね、おかしいですよね?

 彼らにだって家族はいるでしょう。死にたくはないでしょう。生きていたいでしょう。

 その気持ちが分かるから、僕だって本当はこんなことをしたくないんです。

 でも彼らだけは、この宇宙のために生かしてはおけない」

イェルはかぶりを振ってから、表情をぱっと明るくする。

「この全宇宙にある命と、彼らの命と……どちらを守るべきかなんて明白じゃないですか。

 皆さんも!そして僕自身も!この宇宙生存のために捧げられる生贄です!尊い犠牲です!

 それはとてもとても悲しくて辛いことですが、だって皆が生き残るためですからね、仕方ないですよ。

 きっと僕を含め皆さんの犠牲は、忘れられませんよ!皆の心の中に、僕たちは生き続けるんです!

 じゃあ皆さん!一緒に死にましょうよ!

 この宇宙を救うために!」

は…………?

こいつは…!

こいつは!なんだこいつは!

頭がおかしい!寒気がする!

なんと尊い自己犠牲精神。しかし、そんなものは絵本やお為ごかしの中にしか存在しないものだろう!現実に存在するわけがない!

(こいつは本気で……自分も死んで、宇宙を救うつもりだ!)

それはどうしようもなく正しい。しかし、そんなもの認めるわけにはいかない。

「さぁ!リームナさん!ヴィクティンさん!

 僕らで、僕らの宇宙を」

ご高説はもう十分。

ぼくは床を蹴り一瞬で距離を詰めて顔に殴りかかる。体内の気は十分に練った。威力は先程の数倍に膨れ上がっていた。

イェルはそれを紙一重で半身になってかわし、カウンターとして刃を袈裟斬りに振るう。このままではその刃に肩から斬られてしまう。

ぼくは床すれすれまで身を低くして左手をつくと、そこを中心として反時計周りの回し蹴りを刈るように放つ。

この奇行にイェルは驚き、とりあえずの回避行動として跳躍を選択した。

愚策だ!

半回転して身を捩ったぼくは回し蹴りで使った右足の踵で床に踏ん張り、その反動で跳躍して落ちてくるイェルに対してエルボーを叩き込む。

勿論、彼もそれを予想してナイフを逆手に持ち替えてぼくに斬りつけようとする。このまま行けばぼくは斬られるだろう。

しかし、ここで、場の気の流れが物を言う。

ぼくの気を帯びた数々の攻撃に影響されて、場の気の流れが変わってきている。それは丁度ぼくの攻撃を更に支援するように、イェルの攻撃の邪魔をするように流れる。

攻撃の手数を重ねれば重ねるほど、この場の気の流れはぼくに味方する。ぼくが有利になる。

イェルのナイフはその気の流れに阻害されてぼくには届かない!

え。

ぼくは自身の勘を信じ、必殺のエルボーを中止、最大速度で跳躍してイェルとの間を開く。

ナイフを振り切ったイェルを見ながら、ぼくは右手の親指で自身の鼻に触る。生暖かいものがこびりつく。

回避しなければ顔面全体が斬り飛ばされていた。そのことに気づき、ぼくは内心溜息をつく。

確かに気の流れはぼくに味方をしている。イェルの動きを阻害している。

しかし、そんなものを嘲笑するくらいイェルの身体能力は高い。

(……ギュントの人形の動きだって止められたんだぞ?象が踏みつけようが止めれるほどの力場なんだぞ?

 冗談じゃない!このイェルって奴はエンデの中でも更にひどい、化け物だ)

今までの彼の動きは様子見。ただのお遊びだ。そんな中、ぼくは最強のカードを彼に見せてしまった。

最強のカードの威力が知れてしまえば、もう様子見の必要はない。

イェルは瞬時に距離を詰める。勿論気の流れは彼の動きを阻害している。それなのに、だ。

勘だけで即時にぼくは動く。目の前を払う。運良くナイフを握った彼の手を払うことは出来た。

しかし、更にイェルはナイフでの攻撃を重ねてくる。彼の動作を見る前に今までの戦闘の勘だけで相手の動きを予想し、弾いていく。

確率の神様に何度も、何度も、何度も助けられる。死が目の前に迫っており、自分が死なないでいるのは運が良いだけにすぎない。

勘頼りの動き、なんて通用するわけがない。いつかあのナイフは当たる!

攻撃回数が重なっており、気の流れはますますぼくに向いているのに、イェルの動きは全く落ちない。

距離を取りたい。一撃を加えたい。しかし、その暇がぼくには無い!捌くので精一杯だ!

「おい、長耳野郎」

場違いな声がした。

それは。それを、ぼくはイェルの背後に見る。

ヴィクティンだった。必死な顔でイェルに殴りかかっている。

なんで出てきた!!

これじゃあ…これでは!!!

イェルは完全にぼくを無視し、嬉々として反射で振り返りざまにヴィクティンの首を撥ねた。

詰将棋を詰めるように、作業のように、ぼくは背中を向けたイェルに掌底を叩き込む。

十分に練られたこの場の気は鋼鉄に穴を空ける威力でイェルの背中に叩きこまれ、イェルはコンテナに吹っ飛び、叩きつけられた。

着ているパワードスーツのお陰で外傷は無いだろうが、内蔵はただでは済むまい。

イェルはコンテナに叩きつけられてから、ずり落ち、バタンと仰向けに床に倒れる。

白目を剥いており、昏倒していることはすぐに分かった。

ぼくは流れる汗を片手で拭いながら、はずむ息を整えようとする。

イェルは無力化出来た。素晴らしい。万々歳だ。

しかしイェルの目的である、宇宙の端の関係者殺しはヴィクティンを殺すことで達成されてしまった。

光球を発生させてヴィクティンの方に向かわせる。

血だまりの中倒れる、首から上が無い死体がそこにはあった。

イェルは撃退出来た。しかし、ぼくたちはイェルに負けたのだ。

その絶望に、ぼくは膝をついた。



長い、長い航海が終わり、ぼくはようやく家に帰ってくることが出来た。

その足はとてつもなく重い。

お手伝いさんは嫌味を少しだけ混ぜてぼくを出迎えてくれた。

妻と娘は、満面の笑顔でぼくを待っていた。

「お帰りなさい」

周囲の全てを幸福にするような微笑みで妻は言った。

別れたときよりも一回り大きくなった娘は、幼児用の椅子に座ったまま嬉しそうに両腕を伸ばしたり縮めたりしながら言う。

「あー、あーあー」

母親の幸せが伝染しているのかも。娘は笑顔で楽しそうに暴れていた。

楽しそう。幸せそう。ああ、これが一生続けば良い。

しかし、あの言葉がぼくを絶望に叩き落とす。

『我々は宇宙滅亡の片棒を担ぐわけか』

ぼくは目頭を押さえる。

不思議そうに妻はぼくを見る。娘は身体を捩って楽しそうに暴れている。

こんな、こんなろくでもない世界に、キミみたいな存在がよくぞ生まれてきた。

「あなた?」

ぼくは小首を傾げた妻を抱きしめる。その胸に顔を埋める。

妻は何も言わない。

ただ、ぼくの後頭部を撫でた。

このままずっと一緒にいたい。しかし、このままずっといればきっといつか、その時は来る。

ぼくは、ぼくの意志に反して最愛の妻と、娘を手に掛けてしまう。

駄目だ。それだけは絶対に駄目だ。愛おしいからこそ、絶対に避けなければいけない未来だ。

しばらくしてから、ぼくは幼児用の椅子で楽しそうに身をよじっている娘を抱きかかえる。

ああ、思わず頬が緩んでしまうくらい重い。人間の、重さだ。

娘に頬を摺り寄せる。暖かい。人間の暖かさだ。生きてるんだ。ぼくの娘が。

キミは産まれてきて楽しいかい?幸せかい?

全ての気持ちを押し殺し、ぼくは笑顔で二人に告げる。そのために帰ってきたのだから、ぼくは。

あの場で死ねばよかったのに。

「ただいま」

『我々は宇宙滅亡の片棒を担ぐわけか』

ヴィクティンの言葉が思い出される。

何故宇宙に端なんてあるんだ?

何故宇宙が滅亡しなければならないんだ?

何故発狂プログラムなど存在するんだ?

何故ぼくは、こう生まれてきてしまったんだ?

なんて、なんて。

なんてこの世界は狭いんだろう。

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