8話.もっともっと作りたい
「マイスター、良かったらこれ食べてなの」
「マイスターも、少し休もう?」
私が夢中で錬金窯と土地の一角を往復していると、二人から声がかかった。
見ると、二人は一枚の平皿の上に団子とクッキーを乗せたものを、二人で私の元まで運んできてくれたようだ。
「二人はおなか一杯?」
「たくさん食べたの。もう入らないの」
「私もお腹がぽんぽんになっちゃった」
二人は両手が塞がっているので、視線を落として自分のお腹を見ている。
「ごめんなの。もっと残しておけば良かったの」
「美味しくて、つい食べすぎちゃったよ……」
「全然! 私は二人がお腹いっぱいになって、幸せを感じてくれていることが一番の幸せだから。これからも遠慮しないでいいからね」
むしろ、こんな風に気遣われるだけでお腹いっぱいになるぐらい幸せだ。ドルチェルに想ってもらえるなんて、有頂天になってしまいそう。
「そうだ。これ見てくれる?」
私は二人からお皿を受け取り、身体の位置を少しずらす。
すると、二人の目の前には突然お家が現れたように見えたようで、お団子君はぽかんとしていた。クッキーちゃんに至っては目を大きく見開いて、両手を下にピンと伸ばしている。
「クッキーのお家よ……」
「これ、これどうしたの?」
「ふっふっふっ。今日最後の私からのプレゼントは、二人のお家でーす!」
私は張り切って紹介した。
しかし、二人は固まったまま、動かない。
「あ、あれ。もしかして、センスなかったかな? あんまりだった?」
本当はドルチェル一人につき一軒ずつ作ってあげたかったんだけど、クッキーちゃんのを作った時点で角砂糖が完全になくなっちゃったんだよね。
というか、これも全然作り切れてないから、正直に言うと満足いってないんだけど、それが二人にも伝わっちゃったかな?
「ううん、そうじゃないよ。凄すぎて、びっくりしちゃっただけだよ」
「僕も、ここに住んでいいの?」
「クッキーちゃん、お団子君のお家が出来るまで、二人一緒でもいいかなあ?」
「もちろん! あの、あれ、お家、入っていい?」
「二人の好きに使っていいからね。もし何か壊しちゃっても、すぐに作り直せるから遠慮しないで教えてね」
ドールハウス風になっている一階建てなため、完全に一面は壁がないし、なんなら屋根もないんだけど……。
これは、仕方がない。そうしないと私が二人のくつろぐ姿を見れないから、苦渋の決断だ。
代わりに、絶対に二人を雨風に晒さないよう、前哨基地そのものの屋根を作った。まあ、今はまだ二人の家がある一区画だけだけど。
ドルチェルたちは完成した家に入り、クッキーソファに座った。
「……幸せなの」
「私も今、生まれて一番幸せ」
自然な笑顔を二人が浮かべた時、パアアッと明るい光がドルチェルたちを包み込む。
私がびっくりしているうちに光は消え、その中にいた二人の姿は変わらずそこにあった。
「なに、どう、どうしたの? 大丈夫?」
「大丈夫なの!」
「私たち、元気になったよ!」
見てみると、お団子君の乾燥しきった頬には艶が戻り、クッキーちゃんの体中に入っていたヒビがきれいさっぱり、なくなっていた。
「よ、良かった……二人とも元気になって、本当に良かった!」
「マイスター。僕たちのために、本当にありがとうなの」
「私たち、こんな風に大事にされたの、本当に初めてよ。ありがとう、マイスター」
うう……涙が出そう。二人が幸せを感じてくれて、本当に嬉しい。
今日一日、頑張って本当によかった。
気づけばもう辺りは真っ暗だ。
まだ私は明かり系の道具は全然用意が出来ていないので、今日はもうお休みしよう。
「二人とも、寒くはない? このベッドで眠れそう?」
「僕たちは全然大丈夫なの。それより……」
「マイスターこそ、ボロボロの寝袋しかないよ。自分のを作る角砂糖はある?」
「私? 私はいいの! どこでも眠れるから!」
角砂糖はもう支給品分しかないし、これは簡易浄化装置を維持するために使うつもりなので、余りはない。
それに、この子たちに作ってあげたいものが山のようにあるから、自分のは余裕が出てきた後で十分だ。
「それじゃあ二人とも、おやすみなさい」
「おやすみなの」
「また明日だよー」
二人に挨拶してもらえるなんて、本当最高。
私は二人がベッドに潜り込むところを確認してから、プレハブ小屋に戻った。中にはクッキーちゃんの言うとおり、ボロボロの寝袋が一つある。
二人に分けてもらったお菓子は最高においしかった。味自体は特に変哲もないけど、それでも人生で一番おいしい。
私はしっかり団子とクッキーをお腹につめて、寝袋の中に潜り込み、ほんの数秒で眠りについた。




