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二度目の人生、呪いも無能も継続中なのに、なぜか毒母が聖母すぎる  作者: 真崎 奈南
四章

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来客たち2

 早速リリンナはテーブルのお菓子の前にたどり着き、どれから食べようか悩んでいる。

 するとミラーナが「私のおすすめはね……」と話しかけ、リリンナはふむふむと熱心に耳を傾けた。

 そこにエルザも加わり、どのようなお菓子かの説明をひとつひとつし始めると、ミラーナとリリンナの笑い声も混ざり出す。


(うるさいのが増えた)


 賑やかさが増したことにネイトは遠い目をしつつ、机へと戻っていく。

 椅子に腰かけたところでドレイクもやってきて、所在なさげに机の上で胡坐をかいた。


「もう来るなって言ったのに。そんなに暇なの?」

「暇だから来ている訳じゃない。……まあ、リリンナはその通りだろうけど」

「じゃあどんな理由が?」


 ネイトが直球の質問を投げつけると、ドレイクは言い難そうに顔を歪めて、口を閉じた。けれどネイトは追及の手を緩めない。


「俺の監視?」


 予想は当たりだったようで、ドレイクが目を丸くさせた。


「なんでわかった」

「別に、なんとなく」


 こそこそとこちらの動向をうかがうドレイクの気配は、追尾者のそれに近い。

 とはいえ、ことごとくネイトが察知してしまっていたため、ドレイクはまったく役目を果たせていなかったと言っていいだろう。


「で、理由は?」


 そこがいまいちわからない部分であるため、ネイトは緊張感を持って問いかけた。


(父さんの監視ならまだわかる。けど、ミルツェーア家の一員であっても子どもで無能の俺まで警戒してなんになる?)


 答えるのをためらっているドレイクへと、黙秘は許さないとばかりにネイトは鋭い眼差しを向ける。

 数秒後、ようやくドレイクが口を開いた。


「理由は俺もわからない」

「えっ……どういうこと?」

「エイモン様のご命令だ。どのようなお考えがあってのことかまでは知らない。でも、エイモン様はゴードン・ミルツェーアよりも、お前を警戒していらっしゃるのは事実だ。だからこれからも、俺はお前を見張り続ける」


 教えられた事実に、ネイトは言葉を失う。


(どうして俺? もしかして、気づけていなかっただけで、一度目もそうだったのか? ……いや、だしとしてもやっぱり、今の俺を警戒する理由が見当たらない)


 大人のネイトならば精霊を誘拐したりルイモールを殺めたりと、警戒すべき明白な理由はあるが、今のネイトなど精霊たちにとって取るに足らない存在だろう。

 左目が発した鈍い痛みを堪えながら、ネイトはぼやいた。


「あの爺さん、いったい何を考えているんだ」

「こら! エイモン様と言いなさい!」


 すぐさまリリンナはネイトの目の前まで飛んできて、腰に手を当てて膨れっ面をする。

 面倒くさいという気持ちを隠すことなく、ネイトは「はいはい」と投げやりに答えた。

 その態度にリリンナが肩を怒らせた時、ミラーナが嬉々として話に割って入ってくる。


「ねえ、今エイモンって言った? もしかして、偉大なる精霊エイモン? 実在していらっしゃるの?」


 すぐさまリリンナは身を翻し、ミラーナに向かって「もちろん!」と誇らしげに胸を張った。


「全知全能の神様のような存在として描かれているから、物語の中の登場人物かと思っていたわ。一度でいいからお会いしてみたい」


 しみじみと発せられたミラーナの言葉を聞いて、ネイトはふと思い出す。


「そういえば、そんな題名の童話があるようなことを聞いたけど、本当? あの爺さん……」


 ネイトは信じられない気持ちのままに「あの爺さん、そこまで偉いの?」と言いかけたが、リリンナの怒りの眼差しが自分に向いたため、慌てて言葉を飲み込んだ。

 その様子に苦笑いしながら、ミラーナがネイトに話しかけた。


「あるわよ。ネイトはまだ読んだことがなかったのね。今度買ってあげるわ」

「いらない……ことはない。お願いします」


 ネイトは即答したが、やはりリリンナから鋭く睨みつけられ、ぎこちなく言葉を追加させた。

 しかし、リリンナの怒りは収まらなかったらしく、ネイトに小言を言い始める。


「あんな素晴らしい本を、どうして読んでいないのよ! ああ、だから敬意が足りないのね。今すぐ買ってきなさい。繰り返し読んで、エイモン様がどれだけ素晴らしい精霊かを理解し、ひれ伏しなさい!」


 ネイトが無の顔で聞き流していると、コンコンとドアがノックされた。


「失礼いたします……おやおや、これは。驚いた」


 入ってきたのはジョセフで、まずはミラーナが部屋にいることに、続けて精霊たちの姿に気づいて、目を大きく見開いた。


「剣術の練習時間になりましたので参りましたが、お客様がいらっしゃいますね。今日はやめておきましょうか」

「いや、もう解散するから問題ない」


 ネイトは早く部屋から出て行けといった顔で、ミラーナと精霊たちをじろりと見たが、三人に動く様子はない。

 思わず「おい!」と声を上げたネイトに、ジョセフは小さく笑いつつ、精霊たちへと視線を戻した。


「これほど近距離で、精霊方にお目にかかるのは初めてでございます。ネイト坊ちゃんは、いつからお知り合いに?」

「少し前から」

「そうだったのですね。いやあ、気づきませんでした」


 物珍し気に精霊を眺めているジョセフと、にこやかに微笑んでいるミラーナとエルザに対しても、ネイトは真剣に切り出した。


「みんなにお願いしたい。こうして精霊と会っていたことは、誰にも喋らないと約束して」


 突然のネイトからの要求にミラーナたちは揃ってキョトンとした顔をする。


(特に父さんには言わないで欲しい)


 一番伝えたい部分を、ネイトは言葉にしなかった。

 しかし、ミラーナはゴードンが精霊に興味を示していたのを思い出したらしく、ネイトの強い思いを敏感に察し、力強く頷いた。


「わかりました、約束しましょう。精霊と繋がっていると知れば、それを利用しようとする者もあらわれるかもしれないものね。ネイトと精霊さんたちが危険な目に遭ってしまったら大変だもの。ふたりもわかったわね?」


 エルザとジョセフも迷うことなく頷いて了承する。

 ネイトがひとまずホッとしたところで、ミラーナが話を続けた。


「カメリア教会でのこともあるし、場合によっては私の名前を出しても構わないわ」


 その瞬間、ネイトはミラーナを心強く感じてしまい、自嘲気味に笑う。

 そして、最初はネイトの発言に驚いていたドレイクとリリンナも、自分たちを思っての発言に、くすぐったそうな笑みを浮かべたのだった。




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