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第三章 お金に働かせろ ― 仕組みが人を自由にする

第三章 お金に働かせろ ― 仕組みが人を自由にする


宿屋を丸ごと買ってから一年。

天野令己は、もう宿の帳簿をつけることも、食材の発注をすることもなくなっていた。


夜の街を歩きながら、灯りのともる宿を見上げる。

窓の向こうで笑う客、走り回る従業員、掃除を競うマニアたち。

その光景を見て、令己は呟いた。


「俺はもう、働かなくてもいい」


だが、彼は**“働かない”**という言葉を怠けの意味では使わない。

彼にとって働かないとは、「自分の代わりに仕組みが働く状態」を指す。


お金は、放っておけば減っていく。

でも、仕組みに組み込めば、勝手に増える。


宿屋の利益は、自動で他の宿の拡張や新規開業資金に回される。

現地の管理人に報酬を分配し、従業員には業績連動のボーナス。

宿泊者が投稿するレビューは即座にAIゴーレムが分析し、改善提案が現場に届く。

魔法の世界で最先端の宿屋ネットワークシステムが出来上がっていた。


令己は“マニア経済”をさらに押し広げるため、新たなスキルを解放した。


【職業召喚:マニア職人】


呼び出されたのは、宿のために狂える変人たち。

・「寝具の硬さ調整」に命をかける布団マイスター

・「朝食に最適な照明角度」を研究する光魔導士

・「客の夢の内容から満足度を測る」睡眠術師


彼らが集まる宿は、どこも爆発的に人気になった。

令己の仕事は、もうマニアに場を与えることだけ。

金は回り、人は動き、仕組みが育つ。


「お金を働かせるとは、結局“人の情熱をつなぐこと”なんだ」


令己はそう気づく。

宿を動かすのは金ではなく、人の“好き”だ。

その“好き”を仕組みに変えれば、世界が回る。


そして彼はつぶやいた。


「俺はもう、お金で動く世界じゃなく、

好きで動く世界を作りたい」


それが、天野令己が目指す新しい経済――

マニアが主役の資本主義の始まりだった。


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