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4−3 アンダーグラウンドfeat. ある串カツ屋の悩み①

「ハリマオ会の仕事は正直ありがたい」

 

 串カツ屋『よる』の店長赤松は閉店後に尋ねてきた裏稼業の知り合いにビールと串カツの盛り合わせを差し出す。

 清潔なサラリーマン風の中年男性。赤松とも長い付き合いで、常連客と店長の関係というよりは知り合いのおじさんくらいの距離感はある。豚肉と玉ねぎのはさみ揚げの串カツを一口食べて、ビールを一飲み。彼はハリマオ会の元締めから派遣されたショオと名乗っている。

 始末屋である赤松に依頼されている内容は、西宮市の大谷記念美術館で今後開かれるゴッホの贋作展、ヒマワリの絵の強奪始末依頼。邪魔をするなら関係者の拉致殺害、また邪魔をする勢力がいても同じく撃滅。派手にやれるのは、隣の芦屋、あるいはホームの尼崎まで持ち込んでという事になるかと赤松は頷く。

 閉店後だというのに、赤松はビールではなくグラスに水を入れて飲む。「美術品ですか」

 住んでいる地域的にどうしても粗暴が悪く思われがちなので、赤松はわりと品位という事には意識して振舞っているが、美術品となると知識はからっきしだ。「ゴッホのひまわりくらい見た事あるだろう。それを7枚。分からなければ全部もってきてほしい」ショオにそう言われるので、見た事あるかもしれないが、気にした事もない。しかし、破格の請負料。危険に身を投じるには相応しい。

「しかし、贋作展って元々偽物なんですよね? ヤクザ絡みですか?」

「だったら警察事案だろうな」

「まぁそうでしょうね」

「赤松、今回の相手は多分戦闘のプロだ。この店三人だろ? やれるか?」

「いや、こちらも始末屋のプロですよ」赤松は別段、頭に来たわけではないが、何をもってプロとするのかという話であれば、今回の相手が戦闘のプロなら真っ向から襲う必要はない。不意打ち暗殺、なんでもできる。「俺たちは金メダルを目指してるわけじゃありませんから、三人でやれる方法を考え、遂行するだけですよ。人が増えるとその分効率が上がる半面危険度も上がりますから。俺はもとより宋くんは筋がいいし、信用における。ゆかりの方がまだ遊び半分というところで実力も測れないけど、恐怖という感情がぶっ飛んでいて訓練でどうにかなるものじゃない才能です。ベストメンバーですよ」

「しかし、赤松。BBにやられた脇腹まだ完治してないだろう? 一人ならBB殺れたかもしれんのにな?」

「そうですね。本調子じゃないですが、問題ありません。あの時はゆかりをつれて逃げなければならなかった」

「捨て置けばいいものを」ショオがそう言うので「あの日、ゆかり目当ての団体予約あったんですよ。ゆかりがいないと客がキャンセルする」

 表稼業の串カツ屋としてもゆかりの利用価値は高いと「……甘くなったな赤松」

「フリーから管理側にまわっただけです。店もそうですよ」

 言うようになったなとショオは思う。赤松は裏稼業に関してすこぶる自分は合っていないと常々口にしている。串カツ屋一本で生きていきたいと。そんな赤松にショオは「そうか」と、

「でもさすがに宋くん任せというわけにはいかないので、ちょっとこの脇さっさと治してさっさと終わらせるようにしますよ。あとで欲しい道具のリスト送ります」

「lineで送っておいてくれ」

 そう言ってスマホを取り出すショオに若干引きながら。


「昔はショオさんガラケーでも持つの嫌がってませんでしたか?」


 電話は公衆電話で十分というのが彼の口癖だった。「時代に合わせて考え方を変えないとこの世界すぐに死ぬからな」

「違いないですね。そういえば来月頭」赤松が言おうとした事をショオは予測してから先に答え、そしてジョッキを持ち上げてお代わりを所望。「酒蔵フェスティバルだろ? もちろんいくさ。赤松達は?」


 日本酒のお祭り。酒蔵だらけの西宮で開催されるそのイベントは一年に一回の大人の楽しみ。「もちろん顔を出します」

「この店の常連もいるだろうからな。この店はビールもよくサーバーを洗ってあり美味い。串カツも悪くない。うまくても繁盛するわけじゃないんだな」

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