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4-2 アンダーグラウンドfeat. 始末屋のスタイリッシュなお仕事②

さらにゆかりは宋からしても中々に魅力的な女の子であると思える。年相応の精神年齢、誰とでも仲良くなれて、異性に勘違いをさせるキュートな顔つき。そして身体は他の同年代よりも明らかによく育っている。串カツが好きだからという理由でアルバイトに入り、成り行きで裏稼業を知り、むしろ自ら好んでこの世界にはいってきた。

 今もピストルにバヨネットをつけて、新しい玩具でも振り回すように楽しそうにしている。服装は串カツ屋の作業着であるシャツの上に黒いジャケットを羽織り、サンダルからブーツに履き替えている。休みの日には同級生の女子と梅田やなんばに遊びに行く普通の女子高生。

 いや、始末対象をひき肉にした後にファミレスでハンバーグを平然と食べれるような彼女はもう普通の女子高生とは言えないんだろう。宋と目が合うと嬉しそうに笑う彼女、宮水ASSのクロといいこの国、いや世界というべきか、歪んでいると宋は思う。そして、歪んでいないと生きずらいのが今の世界かもしれないと宋もナイフを一本忍ばせて車に乗った。


 午後二十二時。

 そろそろ時間だと宋は車を仕事現場に向かわせる。手筈通りにいけば、十五分あれば拉致に成功しその場を後に出来る。そのまま死体処理を行う別の始末屋に依頼してそれで終了。見積二時間の仕事、それが終われば串カツの夜間営業のヘルプに戻れるかなと思いながら現場に到着した。言われている人数より人が多い。

 四人のダンスをしている男達、その彼女か友達だろうか? 地べたに座り込んで酒をのんでいる。ああ面倒だ。始末対象が二人増えた。そして確かにうるさい。

 ゆかりに二人の殺害から三人に人数が増えた事を伝え、そのまま車を急加速させる。同時にゆかりは後部座席に移り変わると扉を開ける。車は女を一人、実際の始末対象の男を一人に思いっきりぶつかった。

 大声を出される前に、車から飛び出したゆかりが状況を理解できないもう一人の女の首を斬る。そして次に腰を抜かした男の頭に銃口を近づけドン。車に轢かれた二人にも仲良く一発ずつ「な、なんなんだ」ドン。

 手筈は二人を宋が捕まえるハズだったが、四人を殺害したゆかりはもう一人も蹴り飛ばして銃で絶命させる。

 結果、宋は一人を拘束。残りの死体を車に詰め込み、一旦の始末が終わる。時間にして二十二分の事だった。予想より7分、誤差の範囲だ。この地域の監視カメラの録画を停止させるのは多めに十分支払っている。上出来、車を表向きは動物霊園へと向かわせる。たまにこの動物霊園の車が走っているところを見るが、あれには動物の遺体じゃなく、人間の死体が運ばれている事を街に住む住人は知らないんだろうなとふと思う。


 死体の処理もしてしまえばいいのだが、コストを考えるとそれ専門の始末屋に依頼した方が遥かに安く済む。死体の処理は燃やすわけでも山や海に捨てに行くわけでもない。ドロドロに溶かして足元のアスファルトに早変わり。専用業者が儲かるわけだ。

 動物霊園に到着すると、どこぞのヤクザが集まっていた。同業者かと宋は思ったが、やくざの親分らしい男が動物の写真を持って号泣している事から、この動物霊園の正当な使い方をしている全うな客らしい。さすがに返り血で汚れた姿を見せるわけにはいかないと、仕事着を脱いで、動物霊園スタッフとして表向き働いている男に会釈する。

 スタッフの男は少し待てとジェスチャーする。このやくざ連中が帰るのを待てと言う事なんだろう。スタッフの男は愛想笑いをやくざに向け、謝礼を受け取っていた。


「―――悪いな串カツ屋。待たせた」

 

 そう言ってタバコを咥えるスタッフの男、名札には桑江と書かれているが、恐らく偽名なんだろう。前に見た時は海老原と書かれていた。せめてそこは統一しろよと思ったが、さっさと死体と車を引き渡して帰りたい。車の中をのぞいて桑江(仮)は死体の人数を数える。そしてまだ生きている青年と目が合う。

「死体5と、生もの1だけど、どうするの? こいつも殺そうか?」そう害虫や害獣でも処分するように言う桑江(仮)

「生きてるのは生きたまま」宋の話を遮ってゆかりが「依頼主の常連さんが、できるかぎり残酷な方法でって希望があったんよ」

「もう面倒くさいなぁ……」桑江(仮)はそう言ってタバコを吸う。

「た、たすけてくださいよ! なんなんですか!」という一人生かされ、後に生きたままアスファルトになる青年の声なんて聞こえていないように、三人は振舞い、宋とゆかりはタクシーを拾って帰って行った。

 串カツ屋の夜間営業はもう終わっているので、宋はため息をついて「ゆかりちゃん何か食べて帰る?」「えー、それってデートですかー?」「行かないなら結構ですけど」「いくいく! 鳥貴で一杯やってきましょーよ。今日偽造身分証あるんでハタチっすよハタチ!」

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