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3-5 アンダーグラウンドfeat. 新人の仕事はコストコへ買い出し②

これは絡まれるんじゃないかと思ったが、クロを見た若い男は頭をかいて、笑って何故か許してくれる。それに彼女か奥さんが苦言をもらしていたようだが、やたらクロにへこへこしている事からクロが可愛いので許したというより、クロに一度ボコられたんだろうなと冬雪は確信する。あそこで虚勢を張らない方が、結果彼女か奥さんに恰好の悪いところを見せずに済んだんだろう。


…………クロが走った。

一体何だ? 冬雪の手を引いてエスカレーターに向かうと巨大なカートを受け取りそれを冬雪に握らせる。これはカート係を押し付けたのではなく、多分迷子にならないようにという意味があるんだなと苦笑してしまう。そして、クロの表情が少し険しくなり前を見ている。なんだろうと冬雪も前を見ると、家族連れ、学生グループ、その前で長身の男性と女子高生くらいの二人組がこちらを見ている。明らかに堅気じゃない。「クロさん、あれって知り合いですか?」「うん、始末屋で串カツ屋の『よる』。宋とゆかり」「やっぱり知り合いなんですね」と冬雪は『始末屋』なんて聞いた事がないと警戒する。

 しばらくクロとその『始末屋』の二人が見つめあっているが、高身長の男性、クロが宋と呼んだ方がゆかりに何か話しかけ、クロや冬雪を見る事はなかった。エスカレーターを降りると、会員カードを見せて中に入る。


 初コストコ、本来ならドキドキの空間なのに、同じ店内に『始末屋』なんて物騒な連中がいると思うと中々楽しめない。巨大な熊のぬいぐるみが出迎えてくれるのを視界に先ほどの二人を探す冬雪。

 そんな冬雪に対してクロがお使いメモを見ながら「仕事以外での衝突はしない。クロ達も『よる』もプロ」

「そうなんですか?」と冬雪が驚く。

 誇らしげにムフーとクロが頷くのでそうなんだろうとカートを押す係を買って出る。

「洗剤」日用品、エスプレッソマシン「これはBBの依頼」

「おい、なんか田舎臭いなと思ったら宮水ASSがいるやん。何しにきたん?」と『よる』のゆかりが絡んできた。

 どうするんだろうと思ったが、クロは無視して次に買う物のところへ向かう。なるほど、大人な対応だ! と思ったが、「西宮市の方が尼崎市より遥かに都会、ボスが言ってた」

 それを聞いて、ゆかりは瞳孔が開いたようにクロをにらみつけて何か武器を取り出そうとした。しかし、大きな手にゆかりの腕は捕まれる。

「ゆかりちゃん、ご法度」と背の高い男性が、クロと冬雪に会釈する。

 ウチの若い衆が申し訳ありませんでした。という感じなんだろう。それにクロは頷くと親指を上げる。ゆかりが絡んでもいない者として扱っていたクロがこの宋という人物には反応をする。すらりと身長のある韓流系俳優のようでカッコいいからではなく、恐らく実力が伴っているからなんだろう。

 冬雪はこの反応だけで、この宋という男のヤバさを理解してしまった。クロが裏稼業でどれほどの実力者なのかは分からない。だが、少なくともこの宋はクロと同等かそれ以上なんだろう。もし、現場で出会えば確実に殺される。ならば、このゆかりという少女はどうなんだろう。クロが相手にしないという時点でクロより実力は下なんだろう。しかし、それは冬雪と同等か格下という証明にもならない。今更ながら冬雪は故郷から逃げ出したい一心でとんでもないところに関わってしまったと思う。この店内には他にも同業者がいるかもしれない。

クロが巨大な冷凍ピザを何枚もカートに入れていく。カートには一体何個入っているんだという袋詰めされた大量の小さな丸いパン。手あたり次第に食べ物を入れているように見えるが、クロは依頼された物しか手にしていないようだった。なんだか、学園祭の買い出しとかはこんな感じなんだろうかと冬雪は思う。クロの見ているお使いメモは全てひらがなで書かれており、カタカナの品名と照らし合わせてカートに入れているらしい。そして青果売り場でクロの足が止まった。バナナを購入するべきか、グレープフルーツかを迷っているらしい。これはお使いメモには書いていないので、クロが自分用のおやつなんだろう。とたんに可愛く見える。

 そこに先ほどの始末屋『よる』の二人もやってきてゆかりがバナナに手を伸ばした時、そのバナナをクロが手に取った。それにゆかりがキレてクロに襲い掛かろうとしたところをやはり宋に止められる。本当にこの人たちは裏稼業の人たちなんだろうか? 何故なら、宋がゆかりの二回目の粗相の謝罪に「そこのフードコートでお昼ご一緒しませんか? ご馳走しますよ」と言われ、クロは頷く。本当にこの業界どうなってるんだと冬雪は疑問ばかりが頭を支配した。

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