表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/70

3-4 アンダーグラウンドfeat. 新人の仕事はコストコへ買い出し①

 研修期間中とは一体なんなんだろうか?

 冬雪は現在軽自動車の助手席に揺られている。運転手は年上なのか、年下なのか、不明だが車の運転をしているので自分より年上らしいクロ。本日の彼女はつなぎを着ている。つなぎファッションというわけでなく、車の整備を榊より命じられていたらしい。仕事で呼び出された冬雪が事務所に到着すると、買い出しをするようにと指示がなされていたのでクロが車の整備が終えるのを待って今に至る。

 どこに向かうのかと聞いたが、車の運転に集中しているクロは無視しているのかしばらく無言で運転を続け、思い出したかのように「コストコに行く。お昼ご飯もそこで食べるようにボスに言われている」とクロは語った。そして左右のミラーに後方確認。恐らく運転する事に慣れていない為、会話も控えめなんだろう。「コストコってテレビとかでやってる大きな海外のスーパーでしたっけ?」と話しかけたが、クロは43号線から高速道路に乗るらしく、やはり無言を決め込んでいる。段々冬雪は不安になってきた。

 クロは運転に慣れていないどころか、本当に車の免許書を持っているのだろうか? いや、多分警察に止められた際の偽造免許書とかは持ってるんだろうが、そういう事じゃない。まともに車の運転を誰かに学んだ事があるのか? というか偽造免許書だったら年齢なんか適当だろうし、年下かもしれない。年下の女の子に車の運転をしてもらうってどうなの? とか思うが、冬雪もまた免許を取得できる年齢ではない。「高速道路から降りる。反動に注意して」と言われ、出口で急速に速度を落としてドリフトばりに出口から出るクロの運転。間違いない。彼女は運転をまともに誰にも教わっていない。事故を起こさないのは異様に周囲を把握できる彼女の目によるところなのだろうが、こんな運転警察の前で起こしたら一発で危険運転として止められてしまう。

 

 高速を降りると、道なりに走るらしく交通量も多い。速度もそれらの流れに合わせて走っているが車間距離の取り方に問題がありそうだった。相当広く車間距離を開けているので、後ろの車がどんどん車線を変えて冬雪たちが乗る車の前に入る。山手幹線を走りそこから国道43号線、そして高速、現在再び山手幹線に戻ってきた。

 山手幹線は神戸市の長田区から西宮市、芦屋市、尼崎を結ぶ30キロ程の都市計画道路であり、高速を使わずともここに至れたのだろうが、クロは時間の短縮を選んだのだろう。

 運転に集中しているこのクロを襲えばクロを倒す事は可能だろうかと最低な事を考えたが、多分この状況でも自分はクロにねじ伏せられるんじゃないかとふと思ってしまった。よく考えるとクロの事は全然知らない。自分より先に宮水ASSに入った先輩であり、恐ろしく強いという事。実に十年以上自分が来る日も来る日も鍛え上げられた武術が何の役にも立たなかった事はちょっとした自信喪失と共に、こんな物を後生大事に秘伝の技として継承していた自分の家の連中を少しあざ笑えた。

 

 伊丹市を越え、尼崎市に入り、視界の先に大きな建物が見えた。それは小洒落た形状ではなく、言うなれば大型倉庫。冬雪もテレビ等で見た事はあるそこに少しばかりテンションが上がる。西宮市からだと車で行ける近場にコストコが5つあり、その中でも一番近い尼崎倉庫に向かっているわけだが、これだけでも西宮市に住んで良かったと思った。これを榊に言っていれば月給が1万円は上がったであろう事を冬雪は知らない。コストコの駐車場に入りクロのスリリングなドライブも終わりが見えてきた。だが……空いている駐車場がない……目の前が大阪だけあり、大阪ナンバーと尼崎ナンバー、神戸ナンバーの群雄割拠だった。


 そこで、冬雪は一つ学ぶ事になる。大阪ナンバーは思ったよりも丁寧で、なにわナンバーと和泉ナンバー、尼崎ナンバーのアグレッシブな運転マナー、今後仕事で免許を取る事もあるだろうし、気を付けようと心から思った。クロは駐車スペースがないと知ると屋上駐車場に向かう。入口から離れたところに一つ空いているところを見つけ、クロがそこに駐車しようとすると、侵入方向を無視した黒いバンがそこに頭から入れようとするので、クロはべた踏みし、スライドさせて無理やり駐車させる。若いカップルがそれを見て降りてくるが、クロは何故かそのドライバーの男に親指を上げる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ