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3−2 アンダーグラウンドfeat. 尼崎串カツ『よる』は安くて美味い②

仕込みでもするように、殺しの話をする宋。そこには過剰な自信も殺しに対する嫌悪感のような物もない。こういう仕事に対する真面目な姿勢に関してゆかりは心より宋を尊敬していた。そして宋の殺しにおける戦闘能力も。


「でもパンビー殺すのってつまらなくないですかー?」

「玄人の方が嫌やろ」と赤松が、「安全に100万稼げるパンピー殺しの方がらくですよ。ゆかりちゃん、もし玄人だとゆかりちゃんを呼べません」

「えぇ? 聞き捨てならないなぁ。どういう事?」少し、眉間にしわを寄せるゆかり。「言葉通りの意味や、お前がポカしてもフォローできへんやろ」


 少し前、ヤクザから殺し屋の始末を依頼された。その殺し屋自体の戦闘能力は大した事がなかったのだが、ちょうどそこに居合わせた別の仕事を請け負っていた裏稼業の守り屋と車をぶつけた、ぶつけられたで衝突した。相手は一人、金髪の外国の女。ゆかりは瞬殺され、そこに店長の赤松がいなければ今頃土の下で冷たくなっていただろう。店長赤松の脇腹骨折と引き換えにゆかり共々生存できたわけだ。


 今にも飛びかかりそうなゆかりだったが、その時の事を思い出して「そっすね」と軽い感じで引き下がった。一応これでも始末屋としてのプライドはあるらしい。

 店内のテレビでは地元球団である阪神タイガースが、ホームである甲子園球場で、仇敵である読売ジャイアンツに完勝している様子を見て赤松は悪態をつく。

「巨人なに負けとんねん。阪神なんかいてこませや!」

「そういえば店長ってどして尼なのに阪神嫌いなんですかー? それも巨人応援してるのも不自然だし? 私と宋先輩は普通に阪神ファンですよー、この前も阪神ユニフォーム来て阪神負ける試合見に行ったし」

 

 胸ポケットからロングピースを取り出すとそれに火をつけて一服する赤松。まだ折られ脇腹に腕は本調子じゃない事に少し不自由そうに言った。


「2003年にタイガースが優勝した時、優勝パレードを大阪の御堂筋で行っておいてこっちではなんもせんかったからな。タイガースは西宮の球団、兵庫やろが? なんで兵庫でパレードせーへんねん!敵や敵! 大阪もんは敵や!」

 尼崎という土地は特殊である。兵庫県であり兵庫県でなく、大阪よりであり大阪ではない。ロシアはヨーロッパなのか、アジアなのかというくらい特殊な地域で、当然住んでいる人間も赤松同様特殊な人間が多い傾向にある。


「店長、自分は野球が好きなだけで阪神ファンというわけではないので、普通に巨人戦も見ますし、元々高校時代に野球をかじっていた程度なんですけどね。どちらかといえば高校野球が一番すきです」


 空気が悪くなってきたので、宋が間をもってこの話を終わらせようとする。阪神ファンと巨人ファンは水と油なのだ。

 テレビを変える。武庫川近くがテレビに映っており、大学生と無職の十代から二十代の少年達が行方不明になったというローカルニュース。彼らを知っている知り合いという人物は顔にモザイクと声を変え取材に答えていた。“いつか事件に巻き込まれると思ってました”と地元でも有名な悪太郎だったと語っている。

 その少年達の写真を見て、「アホやな」と赤松は一言、連中を蔑むように見てタバコの灰をトンと灰皿に落とした。

「芦屋の殺し屋にでも頼んだんですかね? それとも尼の同業者?」

「宮水ASS。西宮もんや」

「西宮って“守り屋”でしょ?」

 昼休憩ももう終わりと赤松は立ち上がって答えた「知っとるやろ? 殺人鬼飼っとんねんあそこ」

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