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DARK SIDE WOKERS  作者: 古書店ふしぎのくに
募集要項
1/70

アンダーグラウンドfeat. 面接 ※人を殺した事はありますか?

阪神間という場所を舞台に、各市の特徴的な殺し屋達の日常、始まります。


「名前は、立花冬雪(たちばなふゆき)くん、17歳ね。はじめまして、自分はこの宮水ASS(守り屋)の経営者で(さかき)です。はじめまして! 大事な事なので二回言いました。福岡からわざわざ来て頂きありがとうございます」

「宜しくお願いします」


 兵庫県西宮市。

 神戸市内や大阪市内へのベットタウンとして、全国住みたい街ランキングの上位に常に位置する街にまた一人、希望を胸に福岡県は柳川の田舎から面接にやってきた冬雪。元々通っていた高校の制服しか礼服がないのでそれを着て背筋を伸ばして就職面接中である。


 阪急夙川駅から徒歩10分の所にあるお洒落なオープンモールの中にあるMother Moon Cafe。店内の時計はちょうど十時半を刻んでいる。冬雪相手に人懐っこい様子で話しかける三十代半ばの男・榊、私服にブレザーを羽織っているカジュアルで清潔感を感じさせ、また威圧感もない。「どうして西宮に? 大阪とか、それこそ東京とかの方が稼げるし待遇もいいと思うけど?」という榊の話に「“()()()()()()()()“の舞台だったから」と言う冬雪に榊は目の色を変えて「えっ、ほんまに? 冬雪くんハルヒ好きなん? だいぶん前の作品やん? なんで知ってるん?」とテンションを上げてややフランクな言葉遣いと関西弁に変わる。冬雪は西宮市民はやたら西宮が好きだという情報を聞いていたので、軽いジョブ程度に言ってみたが効果はバツグンだった。「サブスクでアニメを見てから、原作の方にもはまりました」と返すと「あー、京アニのねー! 小説もさー文庫版とラノベ版があってさー」と仕事の話からしばらく脱線したが、ふと榊は我に返り言葉遣いも標準語に戻ると資料を見せてくれる。


「ウチの仕事はだいたいこんな感じだね」


 仕事の内容は守り屋。


 DV夫から、ストーカー犯から、割りの良い仕事では旅行の警護なんてものもある。その為、必要な物は体力、反射神経、瞬発力、そして暴漢を迎撃できる戦闘能力。「戦闘になる事なんて、仕事の中の半分くらいだから。まぁでもこの履歴書に書いてある冬雪くんの技能なら問題ないか、得意な武器は?」「銃です」「刀剣の類は?」「使えます」「体術も大丈夫そうだし、いいね。じゃあ最後に……人を殺した事は?」


 ドキリとした。榊の声のトーンは変わらないのに、その言葉は冷たく感じる。自分をよく見せるのが面接では大事であり、それに関しては嘘を言おうかと思ったが、正直に冬雪は「……あります」と静かに答えた。それに榊の反応は「そう、経験済みなら良かったよ。まぁでも人を殺すなんて物騒な状況はさらに低いから安心してね。一応、それ専門の従業員がいるから基本はその従業員が行うしね」と明るく答えられ拍子抜けした。


「ご注文お待たせ致しました。季節限定ケーキとキャラメルラテのセットです」


 お洒落なケーキに、香り高いコーヒーが運ばれてくる。榊はウェイトレスの女性に笑顔で受け取ると、「これ地元の食材で作られてるんだけど、美味しいから食べてみて」と、ケーキを一口、そしてコーヒーを一口。上品なその辺で売っている既製品スイーツの味じゃない。素直に「あっ、美味しいです」と答える冬雪にしてやったりな顔をして榊もしばらくケーキとコーヒーに舌鼓を打つ。そして、榊は冬雪に「じゃあ合格。いつから来れるかな? 引っ越しの準備とかもいるでしょ? あと学生だから編入手続きとかね」と聞かれたので、「学校は辞めます」「いやいや、高校くらいは出ておこうよ? 人生まだまだ長いんだから、大学に行きたくなるかもしれないし、それも踏まえていつから入れるかな?」


 少し考えて「来月頭、二週間後には」と冬雪は答えると榊は手を出してきた。握手をしようというので、榊の手を握り「お世話になります」と冬雪の就職が成功した。


 今住んでいる部屋の解約をして、高校にもその旨を説明して、やる事は一杯だが、遠足の前のように高揚している。今日は多分中々眠れないなと思う冬雪。今日は少し奮発して良い物を食べよう。そんな事を考えながら、福岡に戻る高速バスに乗る為、大阪へ向かう。

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