第3話(AH1-3)
入社2年目社員は健康診断だった。
医師面談で、
医師:「ステータス・ウィンドウ・オープンと言ってみてください」
そういえばそんなこと言われたよな。意味不明だったけど。
俺:「ステータス・ウィンドウ・オープン」
“ブオォーン”という低い音とともに、半透明のディスプレイが空中に浮かび上がった。
なんだ、なんだ、前回は何も起こらなかったけど、、、これって何?
無言ですごく驚いた顔をしていると、
医師:「見えるんですね、ステータス・ウィンドウが」
俺:「えっと、、、この半透明の空中に浮いているディスプレイのことですか?」
医師:「そう、それです」
すごく落ち着いた口調だな。
この人にはみえていないようだけど、これが何かを知っているんだな。
医師:「詳しい話が別途あるので、このまま事務所には戻らず、隣の控室でお待ちください」
控室にはシュウがいた。
幼馴染で保育園、小学校、中学校、高校まではずっと同じ、大学と大学院は違ったけど、家は近所なのでそれまでと変わりなくつるんでいた。そして、同じ会社に入社した。
この会社は子供のころから2人にとって憧れの会社だ。
というよりも、世界中のエンジニアが憧れる会社だ。
入社が決まった時の喜びは忘れられない。
というか、いまは俺たちは入社2年目の若手社員であり、自分たちの可能性を熱く語り合っている日々を過ごしているのに、今日はボーっとしているんだから、シュウから大丈夫かといわれるのも致しかたないか。
主要事業はオーディオ&ビジュアル(セット、デバイス)、エンターテインメント(音楽、映画、イベント会場、遊園地)、ゲーム、ネットワーク
であり、常に新しい文化創出の先頭を走っている世界的大企業だ。
シュウの横に座った。
シュウ:「ステータス・ウィンドウみえたの?」
俺:「みえた。緑枠、緑文字の半透明のアレだろ」
シュウ:「そう、それそれ」
俺:「RPGでよくみるアレっぽいよな」
シュウ:「それっぽいけど、どういうことなんだろうね。いままで見たことないよね。そもそも ステータス・ウィンドウ・オープン わっと! なんていったこともないけどね」
どうやら、シュウの前で“ブオォーン”とステータス・ウィンドウが開いたようだ。
他人には見えないんだな。
控室には俺たち含めて7人いた。
俺たちの事業部からは俺とシュウの2人。
残りの5人で一人だけ知っている女性がいた。
といっても、俺が知っているだけで、相手は俺のことを知らないと思うけど。
彼女は同期入社で一番の美人。
美人オーラがすごすぎて誰も話しかけられない。
俺も自分にもう少し自信があれば話しかけてみたいが、そんな自信はない。
社長直属の秘書課の大江カオリさんだ。
秘書課というのがまた高嶺の花要因となり、より一層に話しかけにくい。
大江さんがこちらを見ているような気がするが気のせいだろう。
俺もちらちらと見ようとするが、目が合いそうで遠慮してしまう。
切れ長のぱっちりとした目、筋の通った小鼻、小さくて美しい唇、小顔に漆黒のストレート髪。もっとじっくりと見たいが無理~と心の中で叫んでしまう。
シュウがこちらを見て小声で(心の声が顔から漏れてるぞ)と面白そうに言ってくる。