9 死神転校生
5年後
隣街の噂話が聞こえてくる。
怪物が人の姿に化けて影ながら人々を守っている。そんなありきたりな噂話だ。
そしてそれは事実だったりする。
ゾニエルの脅威は去った。
キングを失ったことで種族維持ができなくなったゾニエル怪物の勢力は急速に縮小。いまや絶滅寸前にまでなっていた。
だが完全に脅威が去ったわけではない。
まだザルタスがいるのだ。
統計学上、怪物は学生を襲う傾向が高い。
こうして学生の中にまぎれやつらを待ち日々を送る。
教室に入り、新入生同士、自己紹介の時間だ。
俺の見た目は16歳のまま、肉体面は変身能力で操作して高校1年生に、キングの能力を使えば紙を生み出し、偽造文章を作り出すことも簡単だ。
他校の学生が去年3年生をしていた人に似ている子が1年生として入学しているなどと少々ひやひやする噂を聞いたりもあるが気がつかれないよううまくやっている。
誰も俺が5度目の高校1年生だとは気が付くまい。
思い出すのはここに入学する3つ前の高校だ。
きゃああああああああああああああああああああああああああああ!
女子生徒が血を流して倒れいてた。
駆け付けた女子たちが、大丈夫?と聞いていて
女子生徒は怯えながら指さした
ば、化け物が!あっちに!
ねえ・・・あれ、土門くんじゃない?
そのときの俺は怪物を目で追っており、見ようによっては無表情で窓から下を見下ろしていた。
こんな具合に事件を解決するにつれ犯行現場でたびたび目撃されることで不気味差を増し、死神呼ばわりされたりもした。
気が付かないだけで危険とは常にそばにあるものだ。
さて、自己紹介の順番が回って来た。
俺は努めて笑顔で自己紹介を済ませた。
よろしく土門くん、
後ろの男子が話しかけて来た
その男子からはぼんやりとわずかに力の流れを感じると俺も返事を返す。
よろしく公田くん。
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それから公田との関係も打ち解けて来た頃
森林マラソンをすることになった。
学校側のレクリエーションを含んだ運動の授業だ。
バスで山地に到着すると準備運動をして大勢で長距離マラソンを始める。
ほどなくして林の中にザルタス怪物とゾニエル怪物の遺体を見つけた。
損傷はない綺麗な遺体だ。腹部が膨れていた形跡がある。
妊娠しいていたのか。
まあいい。警戒しておこう。そのままコースに戻り継続して走り続ける。
公田に追いつくと
大門!
追いついたな。
他愛無い話をして走った。
熱帯とまでは言わなくとも山地のオゾン層の薄さはそれだけで灼熱の太陽を降り注がせた。
へとへとになる同級生たちが沼地に差し掛かる。
並走していた公田が言った。
何か変だ!
グシャアアアアアア!
沼の中央に小さな異形が浮いていた。
怪物、それも幼生体のようだ。
すごい!なんだ!あれ!
好奇心に突き動かされ大勢の生徒たちが沼地に入って行く。
止めないと!でもなんて言えばいいんだ?
ザバーッ!
沼の中からナマズの怪物が立ち上がる。
3、いや!4mはあるか!デカい!
白い肌に青い口紅をつけたような毒々しい唇をしている。
間違いない。さきほど見たザルタスとゾニエルの子供だろう。
混血種ザゾニエル怪物だ!
シャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!
咆哮するナマズ怪物
公田が言った
いけない!みんな!沼からあがって!
忠告むなしくナマズ怪物から電流が沼地全体に広がっていく。
うぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!
避難の間に合わなかった生徒たちが数億ボルトの電撃を受け次々、悲鳴をあげていく。
放電が沼地の外までほとばしり公田に降りかかる
手をかざし放電を受け止める。
Vストーンの電撃耐性が働き、全身に電撃が流れるが何も痛くない。
みんな沼地の中にバタバタ倒れていく
カブ!
ナマズ怪物の無制限に上下左右に広がる口で生徒たちが頭から丸のみにされていく
ゴクン、ゴク、ゴクン、ゴクン、ゴクン、ゴクン。
ゲフッ!
げっぷをしながらまるまる大きくなったおなかをなでるナマズ怪物
く・・・食われた。ああ・・・、
バタン!
あまりの恐怖に公田の顔が失神した。
しっかりしろ!公田!
そのときだった。
サワサワサワ~、葉がこすれあう音が聞こえる。強い力の気配を感じる。
ふと、公田を見る。
彼の中にはっきりとした素質を感じとる。それは始めて彼にあったときのぼんやりしたものとは違う。
怪物を前にして呼び覚まされたかのようだ。
それにこの気配、何か別に・・・なるほど。
予期せず用意されたかのようなこの状況。
試してみるか。
高位の変身をするまでもない。
全身の力を感じ取り精神を集中させる。
ぬん!
大気が震えた。
足の周りが砕け散り、沼の水が割れ。地面のかけらが浮遊すると腹に赤、青、緑、黄の光が灯る。
変・身!
体から出た4つの光がすべてを吹き飛ばすと光に包まれ中からが姿を現す
頭部が縦横縦横無尽な角のある体が赤、青、緑、黄の四色の宝石の輝く鎧へとチェンジする
ルビーサファイアエメラルドイエローダイヤジェノサイド
変身完了。準備はできた。
力の渦は沼地の中心にある大きな樹から発している。
俺は公田のを引っ張ると
ぬん!
沼の中心にあった大きな樹に投げつけた。
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無限に広がる暗闇の中をどこまでも落ちていく公田
僕は・・・死ぬのか・・・。
そのときだった!目の前に光り輝く大樹が現れ
中から光り輝く女が姿を現れた。
目覚めなさい。選ばれし子よ。
あ、あなたは・・・。
私はカムイの大樹、この山の守護者です。
あなたに大自然の力を授けましょう。怪物たちと戦ってください。
そんな、あんなやつらを相手に僕に戦えだなんて!
大丈夫、あなたを信じます。
ですからお願いです。この星を怪物たちから守ってください。
さあ、手を伸ばして
そう言った光り輝く女の両手の平に緑の光が現れる。
人の心をあたたかく堤穏やかにさせる光だ
ぼ、僕は・・・。
そのあたたかい光目がけて必死に手を伸ばそうとする。
そのとき公田は一瞬だけこう思った。
本当にこんな怪しい力もらって大丈夫なのか?
次の瞬間、公田の足元が崩れて真っ逆さまに暗黒の世界へと落ちて行く。
わ、わあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!
闇に呑まれていく公田を見下ろしてガッカリしたのか、はあ~。とため息をつく光り輝く女
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公田がどこまでも落ちていく。
素質はあるのに信じなかったからか、力そのものから拒絶されたようだ。
俺は光り輝く女の目の前まで降りていくと
その力、俺がもらう!
そう言って光をつかむ
や!
ん?離せ。
ちょ、ちょっと!だ、誰ですか!あなた!
うるさい!寄こせ!
や、嫌!離して!馬鹿!変態!
へ、変態だと!だ、黙れ!離せ!
ぬん!
きゃ!おっぱいつかんだ!変態!
ち、違う!ぬん!間違えた!ぬん!
きゃあああああああああああああああああ!
光輝く女から光を無理矢理ぶん取ると!
体が・・・熱い・・・!おおおおおおおおおおおおお!
カブターの27まわり大きくなる。
大自然の力、カムイフォームと言ったところか新たな変身を手に入れた。
シュバ!
ドロボー!
光り輝く女の罵声を無視して暗黒の世界を上昇していき、現実世界に戻ると公田が沼地の外に横たわって気絶していた。
このままにしておけばいずれ目を覚ますだろう。
ナマズ怪物は突如背後に現れた俺を見て本能的に飛び跳ねて距離を取る。
ぬん!
俺は両手に8本のビームソードを起動させると沼地をゆっくりと歩いて行く。
ナマズ怪物が頭のひげを鞭のように伸ばし俺を何度も打ち付けた。
目の前に迫るなめられかなひげの鞭を
ぬん!
左に切り裂き
ぬん!
右に切り裂き
ぬん!
左に切り裂き
ぬん!
右に切り裂き
すべて切り落としていく。
ひげがズタボロになる。
ぬん!
両腕をまっすぐ突き刺しナマズ怪物の腹にぶっ刺した。
シャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!
悲鳴をあげるナマズ怪物をそのまま上に持ち上げ
ぬん!
沼地の大樹目掛けて投げつけた。
ドカン!
グワン、と大樹がしなる。
ぬん!
俺の命令を聞き大自然の草木が勝手に動き出すとナマズ怪物目掛けて襲い掛かる。
シャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!
自然の木々に両手足を縛り上げられるナマズ怪物、俺は木々たちに口を開かせると呑み込まれた生徒を引きずり出した。
粘液でデロデロに溶けかけた生徒たちが姿を現す。
これで全員助け出した。
ぬん!
最後に木々たちで生き埋めにしてやると大爆発が巻き起こった。
あとは救急車を呼ぶだけだ。
ふと、公田を見る。
公田、適合者にこそなり損ねたが、お前はいずれカブターに並び立つ偉大な戦士なるだろう。