オール
「はあ。」
上層階では。
遅くまで働いている社員と。
そのまま仮眠をとっている社員と。
早々と出勤した社員が入り交じって居た。
「大変だな、、」
トイレ掃除を兼ねて。
御札を貼る。
「おばちゃんに。
何か、渡さないとだな、、」
清掃員は、おばちゃんと俺だけだ。
俺が休めば、おばちゃんの仕事が増える。
開いている窓から下からの食べ物臭がする。
ぐう、、
自然と腹が鳴る。
9階のトイレを掃除しようとしたら。
目の前を小さな女の子が走って行く。
「あれ、、
間違って入って来ちゃったのかな?」
トイレの入り口の扉をノックする。
コンコンコン
「すいません。
清掃に入ります。」
中には、誰も居なかった。
個室をひとつひとつ開けて行く。
ギィ、、
「居ない、、」
ギィ、、。
残りの数が少なくなる程。
心臓は脈打つ様に早くなる。
ドクン、ドクン、、
ギィ、、
ギィ、、
次が最後だ。
唾を飲み込み。
扉に手を掛けると。
「うふふふふ。」
女の子の笑い声がした。
背後で明らかに出ていった少女を。
俺は追った。
チン、、
数字は2階を示していたが。
異様な音と共に。
エレベーターは、開いた。
あるはずのないエレベーターからは。
頭に布を被った老婆が降りてきた。
顔は、しわくちゃで。
生きている色では無かった。
灰色の。
まるで、特殊メイクでもしているかの様に。
老婆「ウワァァアア!!」
歩いて居ないのに。
老婆は俺に向かってくる。
咄嗟に掃除用具を投げるも。
老婆の方が早く俺を通り抜けた。
通り抜けられる瞬間は、気持ち悪い感覚がした。
寒気に似た、とにかく気持ち悪い感じのを。
「まじかよ、、」
老婆はゆっくり振り返ると。
呻き声を上げながら俺を睨む。
「勘弁してくれよ、、」
近くのオフィスに入り。
誰かの椅子を持ち。投げる。
「きゃああ、、」
女性の甲高い声。
「逃げて!!!」
俺は、老婆の相手をする。
「御札御札、、」
胸ポケットに入れた紙は、
全てが茶色く染まっていた。
「あチッ、、」
御札は凄まじく熱かった。
それを見て老婆はニヤリと笑った。
「チキショー!!」
頭が回らない俺は、老婆へと。
直接掴みががっていた。
掴める!!
そう確信すると。
老婆を力一杯。引っ張る。
老婆「ウゥウウウウ!」
変な臭いと。
気持ち悪い声と見た目。
眠さがピークを越え。
俺は頭がおかしくなっていたんだと思う。
「おりゃあああ!!!」
取っ組み合いの末。
ビリビリビリッ!!
何かの破ける様な音と共に。
老婆の悲鳴が聞こえると。
手には、気持ち悪い人形があった。
「うえ、、」
ボト、、
鈍い音を立てながら。
それは、地面に落ちた。
我に返ると、焦げ臭い臭いと。
窓に這うようにして黒い煙が上がっていた。
「火事だあ!!!
火事だ!!」
枯れた喉で一生懸命避難を促す。
「火事です!!」
フロアを周り、自分も避難する。
階段は下から上がってくる白い煙で、
何も見えない。
自分が何処の階に居るのか。
今が何回なのか。
必死に手摺を掴みながら歩く。
女性の声「きゃあっ。」
「大丈夫ですか??」
手探りに手を伸ばし、
腕を引っ張る。
男性の声「何処へ行けば良い!!」
男性の声「上は駄目だ!」
その時。
少女の笑い声と。
少女の姿が煙の中を通った。
其処に手をやると。
ノブがあった。
力一杯引き。
大きな扉を開けると、
そこは、4階だった。
「こっちです!!」
扉を開けて誘導する。
「ここから外に出られます!!」
何人かは下へ行ってしまった様だ。
煙と視界と喉をやられながら。
「火事です!!
今すぐ避難して下さい!!」
と、避難を促す。
お客さんも入り。
何も知らない様な顔で。
店員達は普通に営業をしていた。
やっと外に出れて、ビルを見ると。
3階は、燃え尽き。
5階は激しく燃えていた。
4階だけ。何故か火が回るのが遅かった。
あの時。
少女が場所を教えてくれなければ。
今頃俺は、丸焦げになっていただろう、、
老婆は倒せたのか。
少女は、何だったのか。
燃えるビルを見ながら。
俺はただ立ち尽くしていた。