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第9話

「先程言った通り、ウクライナは独力でロシアに勝利する事は出来ない。だからウクライナの指導部はNATO軍を始めとした外国の軍隊が介入する事を明らかに望んでいる。彼らは戦争を拡大させたいのだ。」


「いくら戦争に勝つためとは言え、自国の一般市民を虐殺するなんて、一体どんな政府なんですか!?」


「私もそうでない事を望んではいる。ただウクライナの指導部はロシアとの戦争に勝てさえすれば、世界戦争になろうが構わないと思っている事は間違いないだろう。そう考えると()()話に一定の信憑性(しんぴょうせい)がある事は否定できない。」


「・・・・・・」


「もしあのような残虐(ざんぎゃく)行為がロシア軍の手によるものではなく、ウクライナの自作自演であるとするならば、ロシア軍が戦争犯罪を働いているという西側諸国の主張は根底から(くつがえ)る事になる。ウクライナの指導部が本当に『禁断の扉』を開けたのか、真実はもう少し時間が経ってみないと分からない。ただ『カティンの森事件』のように、いずれは真相が明らかになるだろう。」


「・・・一体何が正義なのか分からなくなってきました。」


「それは君が『マスコミの呪縛(じゅばく)』から解放されつつあるという(きざ)しだよ。」


ウィリアムが黙って(うなず)くのを見届けた校長は、さらに話を続ける。


「一方で私はロシア軍のキエフ制圧(せいあつ)がなかなか進まない事に不自然さを感じている。」


「ウクライナ軍が善戦しているせいではないのですか?」


「それもあるだろう。だがキエフはロシア軍にとって最大の戦略目標だ。ロシア軍が本気を出せば()()()()数日で陥落(かんらく)するはずなのに、現実にはそうなっていない。キエフには今も一般市民が多数残っている。この状態でロシア軍がキエフを強攻すれば一般市民も多数犠牲になる。だからロシア軍は一般市民が脱出する時間的余裕を与えるために、わざと攻撃を手控えている気がしてならないんだ。」


「それが本当であれば、プーチン大統領はウクライナの指導者なんかより、よほどまともな指導者に思えてきました。少なくとも彼はマスコミが決めつけるような極悪人の独裁者なんかじゃない。」


「プーチン大統領は強力で有能な指導者だ。そうでなければ20年以上もロシアのような大国を(ひき)いる事など出来ない。どれほど嘘の上手な指導者であっても、多数の人間を長期間だまし続けるのは不可能なんだ。現在でもロシア国民の大多数がプーチンを支持している。これはプーチンが武力や弾圧ではなく国民の支持を背景にして権力を掌握(しょうあく)している事を意味している。この体制は強い。今回の軍事作戦にしてもプーチンがロシアの国益を守り、ロシア国民の生命・財産を守るために起こした行動である事を、国民は理解しているのだ。」

【カティンの森事件】


第二次世界大戦中にソビエト連邦のスモレンスク付近の森で、ポーランド軍将校を中心とした2万人以上のポーランド人が虐殺された事件


独ソ戦の際に現地に侵攻したドイツ軍が多数のポーランド人の遺体が埋められているのを発見した事により事件が公になった。


ナチス・ドイツの宣伝相ゲッベルスはこれをソビエトによる残虐行為として世界に喧伝したが、告発されたソビエト側は、逆にドイツ軍による虐殺を主張した。


第二次世界大戦後もソビエト政府は一貫してドイツ軍による虐殺を主張し続けたが、東西冷戦終結後の1992年にソビエト連邦政府の機密文書が公開され、ソビエト内務人民委員部の長官であったラヴレンチー・ベリヤの発案で、スターリン書記長の承認の下、ソビエト共産党政治局の命令による虐殺であった事が証明された。

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