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第5話
事前に考えていたものとはあまりにも異なる展開に、しばらく言葉を失っていたウィリアムがようやく口を開く。
「・・・校長先生、あなたは一体何者なんですか?」
ウィリアムの不躾な質問に対しても、校長は怒る素振りすら見せる事はない。
「君が聞きたいのは私のキャリアという事で良いのかな?私はこの学校の校長に就任する前は、アメリカ陸軍の軍人をしていたんだ。陸軍には30年以上所属していたから、湾岸戦争を始めとした実戦に何度も参加している。だから戦争の実態については君よりも多少詳しいはずだ。」
「退役軍人だったのですね。」
「アメリカ陸軍で30年以上、国家に尽くしてきた者として、自分が愛国者である自覚はある。その上で話を聞いて欲しいのだが、現在の西側諸国の世論はまるでプーチン大統領さえ排除すれば平和が訪れるような幻想を振りまいているが事実は異なる」
「違うのですか?」
意外感を隠せないウィリアムの確認に対し、校長は自信に満ちた口調で断言する。
「違うね。実際にはプーチンの排除が悪夢の始まりとなる。」