第13話
「いいかねウィリアム。もし合衆国を始めとした西側指導者がマスコミに扇動された『世論』に負け、ウクライナのNATO入りを認めたら、それが『終わりの始まり』になる。ウクライナの指導部以外、誰も望まない世界大戦が始まる。人類は世界大戦までもうあと一歩の瀬戸際まで来ている事を決して忘れてはいけない。」
「一体何が起こるのでしょうか?」
「NATOの加盟国は30ヵ国を超えている。もし戦争となればロシアは30対1の戦いを強いられる事になる。いくらロシアでも通常戦力だけでNATOとの戦いに勝利する事は極めて困難だ。」
「ではロシアは敗北するとお考えですか?」
「いや、ロシアには核ミサイルという切り札がある。6000発を超える核ミサイルが無傷で温存されているのだ。」
「!」
「予想されるシナリオは複数あるが、例えばポーランドにあるNATO軍の物資補給拠点を標的にして、ロシア軍が戦術核ミサイルを撃ち込んだとする。」
「・・・・・・」
「ロシアとすれば、これはあくまで警告に過ぎない。ロシアは核兵器の使用をためらわないという意思が相手に伝われば十分だ。そのため極めて威力が小さく、通常兵器と大差ない程度の核ミサイルが選ばれるだろう。」
「NATOへの牽制が主目的であり、ロシアは核戦争を望んではいないという事ですね。」
「だがこれに対し、ロシア側のサインを見誤ったNATO軍が核ミサイルによる反撃に踏み切った場合、一気に深刻な事態になるだろう。」
「ロシアとNATOが核ミサイルを互いに打ち合う状況になってしまいます。」
「そうだ。だがそれで終わりではない。」
「?」
「ロシアとNATOが核ミサイルを打ち合う状況で、『ロシアによる核の先制使用』を大義名分にアメリカが参戦し、ロシア本土の主要都市にICBMによる攻撃を仕掛けた場合はどうなる?」
「・・・それはロシアも当然アメリカの主要都市に対してICBMによる報復攻撃を行うのではないでしょうか。」
「その状況を一言で表現すれば?」
「全面核戦争・・・」
校長はウィリアムの言葉に黙って頷いた。




