第十二話 はじめて③
「いらっしゃいませ、今日はどうしました?」
俺が冒険者ギルドと呼ばれるところに入ると、そこにはいくつものカウンターが並んでいた。
それぞれの列には何人かの冒険者が並んでいるようだ。
その並び方にも特徴がある。
右から二番目の列が一番長い。
そして一番左の列が一番短い。
なんで短い方の列に並ばないのだろう。
俺がそう思った時、冒険者たちの話し声が聞こえてきた。
「やっぱり時代はミーシャちゃんだよな」
「それそれ」
「それに引き換え、他の受付は、雑魚だな」
「それそれ」
なるほど。だいたいわかった。どうやら受付嬢たちにも人気のある無しがあるようだ。
そりゃそうか。
見た感じ、受付嬢はアイドル的なポジションだ。
日本でも総選挙があるように、ここでも順位はついてしまうのだろう。
俺はそういうのはどうでもいいから一番短い列に並んだ。
人気がない受付嬢と言えど、アイドルの端くれである。
顔はかなり整っているし、笑顔も絶やしていない。
その奥には明らかに疲れが溜まっているが。
ま、俺には関係ないけどな。
そう思いながら俺は自分の番を待った。
数分で時間はきた。
「次の方〜」
呼ばれる。
「あれ、はじめて見る顔じゃないですか?」
すごいな。
「覚えているのか}
俺はシンプルに気になったので聞いてみる。
「そうですよ。まあ、私のところに来る冒険者さんなんて、数が限られていますけどねえ」
どうやら地雷だったようだ。
「それは大変だな」
俺は華麗にかわす。
「それより今日はどのような用事で来られたんですか?」
「冒険者登録をしに来た」
「新規ですか。それはいいですね。お名前は?」
「・・・イナリだ」
「イナリさんですね」
受付嬢はゴソゴソと何かをいじる。
「はい、できました」
そういって渡してきたのは、一枚の木の板だった。
「これで冒険者として登録ができましたよ〜」
「これでか? こんなに簡単でいいのか?」
「はい、大丈夫です」
「顔写真とかは?」
「いりません。というか冒険者のシステムについて知らないのですか」
残念ながら、説明してくれた人が雑だったんでな。
俺は心のなかでさっき会ったおっさんを恨む。
「詳しくはないな」
「そうですか。では説明しますね」
■
受付嬢の話をまとめると、
1、ランクはS〜Fまであり、条件をクリアするとランクが上がる。条件に関しては、ランクが上がるごとに明らかになっていく。
2,今のイナリのランクがウッド。これはどのランクにも所属していないということで、依頼をいくつかクリアするとFに上がるらしい。
3、冒険者はこの世界共通で、こちらでのFランクはどこでもFランクとしてみなされる。ただしウッドのみ、違う。ウッドは登録したところでのみ有効で、俺だったらアポロンの冒険者ギルドでFまであげないと、やり直し。
らしい。
他には自己責任だ、とかは言われたが、そこはもうわかっていることなのでいいだろう。
「さて、ウッドになったイナリさんにはFランクになる条件を告げます。それは・・・依頼を五個達成する、ということです」
「依頼を五個? そんな楽なことでいいのか?」
「はい。ちなみに最短記録は一日なので、それを抜けるように頑張ってください」
こうして俺の冒険者生活が始まったのだった。