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no.7

「はぁ、恥ずかしい〜っ 」

 アタシは自分の部屋のベッドに突っ伏した。

 いくらなんでも、初対面の人に『処女』はないよね……

 

 あの後、めちゃめちゃテンパってるアタシに篤武さんは「そんなに気にしないでいいよ」と優しく微笑んでくれた。

 でも、その微笑が、かえってアタシを焦らせる結果となって……

「どうやって帰ってきたんだっけ? 」

 アタシの記憶はどこかに吹っ飛んでしまったみたい。


 ふぅっとため息をついて、アタシはピンクの財布をきゅっと抱きしめた。

 



 朝になり、アタシは制服に着替える。

 灰色のブレザーに、紅色のリボンを付け、黒のハイソックスを履いた。

 鏡でスカートの長さをチェック、あんまり短すぎても長すぎてもいけない。

 なぜかというと実はアタシ、ミッション系のいわゆる『お嬢様学校』と言われるところに通っているのだ。

 帰りはもう少しスカートを短くするけど、行きはまずい。

 生徒指導の先生に会ってしまうと、面倒くさいことにいちいち「反省文」を書かせるからだ。


 電車に乗って、いつもの駅に着くのを待つ。

 アタシの家からは5駅。

 いつもなら音楽を聴いたり、立ったままうたたねをしているアタシだけど、今日は違う。

 篤武さんが居るような気がして、居たら良いなと思ったりして、きょろきょろと周囲を見渡した。

 そのせいでアタシはいつもの場所とは違うところにうっかり来てしまい、つり革につかまる――と言うかぶら下がる? といったカタチで電車に揺られる羽目になった。

 背丈の低いアタシはいつもドア近くの棒のところに捕まることにしてる。

 いつもと違う場所だからなのか? 

 その後、アタシはまた最悪な目にあった。



 不意に、不意にアタシのおしりの辺りに何かが当たる。

――かばんかな? ――

 そう思ったけど、何かが違う気がする。


 それは徐々にアタシのおしりの辺りを円を描くように触り始めた。


 やだ! 痴漢?!


 トモダチがよく痴漢にあったとかっていう話は聞いてた。

 手を掴んで「この人痴漢です! 」って叫ぶといいってアドバイスも貰ってた。


 でも。


 アタシ、そんなこと出来そうに無い。

 実際今のアタシは息をするのがやっとなのだ。


――どうしよう――


 怖い。 怖い。 こわい!!


 アタシはぎゅっと目を瞑った。

 そんなことしても、痴漢から逃げれないのは分かってるんだけど、それでも少しでもその行為から逃れたかった。


「なにしてるんだ! 」


 少し離れたところから、声が聞こえた。

 アタシのおしりの辺りの手は、その声を聞いて離れていった。

 その時少し間の抜けた声で『藤波ふじなみ駅〜、藤波駅〜」と言うアナウンスが流れる。

 ぷしゅーっと言う音と共に電車のドアが開き、アタシの後ろにいたサラリーマン風の男が慌てて出て行った。

 あっけにとられているアタシに、さっき声を掛けてくれた人が「大丈夫? 」と声を掛けてくれ、

 アタシは涙目になりながら、その人の声のするほうを振り向いた。

「ありがとうございました。 たすかりま――

あ、篤武さん?! 」

 お礼を言いかけて、アタシは吃驚した。


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