no.20
「災難だったね」
現国の授業が終わって、チアキが声を掛けてきた。
「ほんと、最悪。
チアキも起こしてくれればよかったのにぃ〜!」
アタシはぷうっとほほを膨らませる。
「起こしたよ? 何度も。
なのに咲がおきないんだもん」
チアキはアタシの顔を見て、またけらけらと笑い出した。
あの後、佐藤センセは普通に、何事もなかったように授業をしていた。
けど、あのすごい目で睨んでいた綾実は、授業の最初から終わりまで、ずーーーっとアタシのことを刺すような目で見ていて、
アタシはちくちくする視線を気にしながら授業を受ける羽目になったのだ。
「綾実って、そんなに佐藤のこと好きだったっけ?
アタシなんか生きた心地しなかったんだけどー」
「なんか最近かなり佐藤にはまってるらしいよ。
私も聞いた話なんだけど、定期入れに写真をいれてるとか聞いたし」
「それほんと?
なんかやだなぁ。
アタシ佐藤には興味ないのにー。
だってアタシカレシいるんだし」
篤武さんのことを思い出して、アタシは顔をほころばせた。
すると、チアキが少し真剣な声でアタシにこう言った。
「そうそう。
電話の話しなんだけど、どうなってんの? 」
アタシもチアキにつられて、真剣に答える。
「なんかね、電話、繋がらないの。
電波が届かないところにいるのかも。
ちゃんと出張先を聞いておけばよかったなぁ」
「いつ帰ってくるかも、わからないんだよね? 」
「うん……」
アタシたちはそれっきり口をつぐんしまった。
篤武さんがいないと、どうしようもないのだ。
とりあえず、こまめにメールや電話をして、篤武さんが気づいてくれるのを地味に待つしかない。
それから3日後。
まだ、篤武さんと話ができないまま、
アタシは家に帰る途中の駅で、知らない女の人に呼び止められた。