no.19
――ねむい――
昨日、一時くらいまで粘ってみたんだけど、結局電話は繋がらなかった。
それから「さすがにもう遅いから……」とか
「でもやっぱり電話くるかも? 」とか、
「メールがセンターにあるかも? 」なんて思ってなかなか寝ることができず、
寝たのは(というか、記憶が無くなったのは……と言った方が正しいかも? )は大体四時過ぎ。
ガッコウがあるから六時三十分には起きないといけない。
なんとか無理やり起きたんだけど、そのせいでアタシは寝不足なのだ。
「めちゃねむい〜」
退屈な授業が終わったので、アタシは机に突っ伏した。
せめて少しで良いから、寝たい。
眠いんですよ、マジで。ホント。
でも、そういうときに限って、なにか邪魔が入るもの。
「咲、電話。どうなったの? 」
ぺしっとアタシの頭を叩く邪魔者が現れた。
その邪魔者。ベストオブ邪魔クイーンは昨日アタシがかなり感謝しまくったチアキだ。
「電話でなかった。そのせいでアタシ寝不足なの。
あと、五分でいいから、寝させて〜〜〜」
アタシは机に突っ伏したまま、ふにゃふにゃとしゃべる。
そしてアタシはまどろみの中に意識を投じる。
なんか遠くのほうでチアキの声が聞こえるけど、それは無視。ムシ。
だって何言ってるかわかんないんだもん。
ふにゃふにゃの脳みそには、きっと何を言っても異国の言葉に感じてしまう機能があるに違いない。
アタシはチアキの声を子守唄に、眠りについた。
「こら! もう授業ははじまってるぞ! 」
急にアタシは誰かに肩を掴まれて、怒鳴られた。
「きゃっ! 」
アタシはびっくりしてその手を振り払らおうとしたけど、寝ぼけていたからか、変にバランスを崩してしまい、
肩を掴んでいた人物の方に勢い良く――まるでタックルみたいに――突進して行った。
がちゃがちゃっと机やいすが音を出して倒れ、アタシはその人物の胸に飛び込んだ感じになってしまった。
その人物とは、アタシのクラスの担任。
国語の佐藤。
一応ルックスはそこそこで、生徒の間では人気がある。
「こら、伊藤!
ねぼけるのはいいけど、大概にしろよ」
「す、すみません……でした」
アタシは恥ずかしいやら、びっくりしたやらで、顔を真っ赤にしていた。
佐藤センセはアタシが反省しているのをみて、ぽんぽんっと頭を軽く撫で、机やいすを元に戻してくれた。
あ――
刺すような視線を感じて、ふと目をやると、倉沢 綾実がアタシのことを睨んでいる。
別にそんなつもり、全然なかったんだけど……
アタシは小さくため息をついた。